8年後に語られたアテネ五輪体操団体総合金メダル「団結」秘話
2016年08月10日 12:30
五輪
その体操で団体総合をどう戦うか。かつて、五輪・世界選手権で10連覇の黄金時代を築き上げた選手たちは、ひたすら個人に徹したという。「チームに迷惑をかけない」との思いを持つ、自立した個人の集団だった。
その黄金期から28年後のアテネ五輪で復活優勝を果たしたチームは、単なる個の集約ではなく、「団結」の力を持っていたという。ある事件でチームに一体感が生まれたことが、原動力だった。
チームの主将を務めた米田功氏は、代表最終選考会終了直後の場内インタビューで「金メダルを獲ります」と話して周囲を驚かせたが、その後もことあるごとにチームメートに「金メダル」の話題を持ちかけ、意識の浸透を図った。
ただ、チームは団結には至っていなかった。五輪前の国内合宿最終日。事件は起こる。チーム最年少の21歳、中野大輔氏は、右手首の謎の痛みを隠していた。九州共立大所属。急成長した天才肌の若者は、東京の大学、実業団のつながりと、面識がある他の5人とは、異質の存在だった。
絶不調だった中野氏に加納監督は合宿最終日、翌日の一時帰宅前の通し練習を命じる。飛行機の予約の関係で、開始は早朝6時。たった1人で練習を行うはずだった。だが、体育館には、米田氏の声掛けに静かに応じた先輩5人が現れる。「大輔を1人にしない」。黙々と行われた通し練習後、中野氏は涙を流し、6人はチームとして一つになったと言う。
「やるべきことはやった感じですかね。大輔に伝えたいことも全部、伝えられた。チームがまとまったと感じた」
米田氏がそう明かしたのは4年前。他の5人も同様の印象を持っていた秘められた事実は、アテネ五輪から8年後に、初めて明かされた。チームとしてまとまっていた印象があるリオデジャネイロ五輪の男子団体総合の代表チーム。極上のエピソードが語られるのを、期待して待ちたい。(鈴木 誠治)