ボクシングがなければ…塀の中で学んだリアル“あしたのジョー”
2016年08月10日 12:40
五輪
「刑務所で善悪の基準を学んだ。いろいろなことを教えてくれたが、自分はこれが一番得意だった」。塀の中で覚えたボクシング。教官は目を見張った。あまりにも早く上達し、あまりにも強かったからだ。そしてアマチュアのボクサーとなることを条件に恩赦が出て、2年半で社会に復帰した。
08年北京五輪のライトフライ級にタイ代表として出場しベスト8。32歳でプロに転向し、34歳でIBF世界フライ級王者となった。3階級制覇を達成している現WBA世界フライ級王者の井岡一翔(27)にも唯一の土をつけた。今年の5月に6度目の防衛に失敗したが、プロの参加が認められたリオデジャネイロ五輪には実質6階級上のライト級に出場。7日の初戦には判定で勝利を収めた。9日の3回戦ではフランス選手に3回TKOで敗れたものの、11キロも増量した状態を考えれば妥当な結果だったかもしれない。
妻と子供がいる。「刑務所で覚えたことがボクシング以外にもある。それが家族の大切さ。何をしなければいけないのかが分かった」。選手村から毎日、電話をしていたアムナット。メダルはなかったが、タイからやってきた“矢吹丈”はもうあしたを探して迷うことはないだろう。
◆アムナット・ルエンロン 1979年12月18日、バンコク南東部チョンブリー県出身の36歳。プロでの戦績は18戦17勝(5KO)1敗。14年1月のIBF世界フライ級王座決定戦に勝ってタイトルを奪取。今年5月に王座を失った。1メートル64、リーチは1メートル77。