【世界のアスリート】ヒジャブ着用剣士 世界のムスリムに勇気
2016年08月10日 12:05
五輪
それがフェンシング。ムハマドは13歳から競技を始め、すぐに才能を発揮した。頭脳も優秀で、学業の難関校として知られるデューク大では2つの学位を取得した才女。そして10年に米国の代表チームに選出された。
リオデジャネイロは初五輪。8日のサーブルでは2回戦で敗れたものの、彼女には「ヒジャブを着用した米国最初の五輪代表」という歴史的な肩書がついた。「自分のためではないんです。同じ立場にいる世界中の人たちとその社会に何か変化があればいいと思ったからこそ、私はここにいます」。メダルは獲れなかったが、彼女が握った剣は何か特別なものを観衆に感じさせた。
米国では一連のテロでイスラム社会に対する風当たりは強い。しかしその一方で、純粋な汗を流す清廉なアスリートもいる。「私の存在を知って、後に続いてくれる人が出てくればいいなと思います」。すでにムスリム用のアパレルメーカーを立ち上げ、スポーツ親善大使としても世界中を回っている。汗を吸い込んだムハマドのヒジャブ。勝利よりも大切なものが彼女を包んでいた。
◆イブティハージ・ムハマド 1985年12月4日、ニュージャージー出身の30歳。デューク大ではスポーツではなく学業の奨学金を得て卒業。フェンシングではオールアメリカに3度選出された。14年世界選手権では米国の団体優勝に貢献。1メートル70、66キロ。