【新弟子検査】ウクライナ出身のダニーロ「家族のために頑張りたい。助けたい」戦禍の母国へ活躍届ける

2023年07月03日 15:50

相撲

【新弟子検査】ウクライナ出身のダニーロ「家族のために頑張りたい。助けたい」戦禍の母国へ活躍届ける
新弟子検査を終え、報道陣の取材に応じるダニーロ・ヤブグシシン(撮影・前川 晋作) Photo By スポニチ
 大相撲名古屋場所(9日初日、愛知・ドルフィンズアリーナ)の新弟子検査が3日、名古屋市中区の中日病院で行われた。
 今回の受検者は、ウクライナ出身のダニーロ・ヤブグシシン(19=安治川部屋)ただ一人。1メートル81、125キロで体格基準(身長1メートル67、体重67キロ以上)をクリアした。内臓検査の結果に問題がなければ名古屋場所初日に合格が発表され、興行ビザ取得後の秋場所で初土俵を踏む。

 昨年2月から母国ウクライナはロシアによる軍事侵攻を受け、練習拠点や安全に生活できる環境を失った。ダニーロは、世界選手権(19年10月、大阪開催)の時に知り合った山中新大さん(当時・関大相撲部)を頼って日本へ避難。昨年4月から山中さんの実家で一緒に暮らし、関大相撲部などで稽古に励んだ。12月、元関脇・安美錦が興した安治川部屋に入門。半年間の研修生活を経て新弟子検査受検に至った。

 現在、両親は仕事の関係でドイツで暮らし、兄・ニキタさん(21)は1人母国に残っている。離れて暮らす家族とは日々連絡を取り合っており「家族のために頑張りたい。助けたい」と切実な思いを口にした。

 19年の世界ジュニア選手権中量級(100キロ未満)で当時15歳ながら3位に入賞した実績のとおり、この日測定した握力は70キロ、背筋力は216キロと既に力士として十分なパワーを持つ。来日時に100キロなかった体重は1年3カ月で125キロまで増えた。得意の形は「左前ミツを取って頭をつける相撲」。現役では幕内・若隆景(28=荒汐部屋)の相撲に憧れ「親方みたいになりたい」と、師匠・安治川親方のような食い下がる相撲を目標に掲げた。

 来日してから日本語学校に通い、現在は「漢字とかも少しずつ勉強している」という。日本語の習得は早く、この日は報道陣からの質問に対してほとんど詰まることなく流暢な日本語で対応していた。

 新弟子検査合格が正式に発表されれば、今場所新十両の獅司(26=雷部屋)に続く2人目のウクライナ出身力士誕生となる。心強い同郷の先輩には6月に一度会ってあいさつし「“頑張って”と言われた」という。

 また、ウクライナ代表で昨年のワールドゲームズに出場した男子軽量級銅メダリストのスビャトスラブ・セミクラス(25)と女子無差別級金メダリストのイワンナ・ベレゾフスカ(32)が今年5月に来日し、九州情報大に留学。セミクラスは6月の西日本学生選手権で個人戦16強、ベレゾフスカは6月の全国女子学生選手権無差別級優勝の実績を残した。もともとアマチュア相撲の強豪国だったウクライナから、現在は日本で活躍する選手、力士が増えている。大相撲の世界に一歩を踏み出したダニーロは「大相撲でもアマチュアでも、みんなで頑張りたい」と力を込め、戦禍に苦しむ母国へ活躍を届けることを誓った。


 ◇ダニーロ・ヤブグシシン 2004年(平16)3月23日生まれ、ウクライナ・ビンニツァ出身の19歳。幼少期から相撲、柔道、レスリングに取り組む。19年世界ジュニア相撲選手権大会中量級(100キロ未満)3位。21年欧州相撲選手権100キロ未満級優勝。22年4月に来日し、関大相撲部で稽古。22年12月、安治川部屋に入門。1メートル81、125キロ。

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