ローテーターカフ(回旋筋腱板)のトレーニング&ストレッチ【プロ監修】
2023年09月21日 09:00
肩まわりの小さな筋肉、そして肩関節の動きに関わる重要な筋肉である「ローテーターカフ(回旋筋腱板)」。腕を使う球技やラケットスポーツなどにおいて、とても重要な筋肉です。
ここではローテーターカフの役割と効果的なケア方法、そしてストレッチについて解説します。
ローテーターカフ(回旋筋腱板)とは
ローテーターカフは、肩甲骨と腕の骨である上腕骨をつないでいる筋肉の総称です。「回旋筋腱板(かいせんきんけんばん)」とも呼ばれます。
ローテーターカフの筋肉は以下の4つに分類されます。
- 棘上筋(きょくじょうきん)
- 棘下筋(きょくかきん)
- 肩甲下筋(けんこうかきん)
- 小円筋(しょうえんきん)
深層にあるため、肩のインナーマッスルとして紹介されることが多い筋肉となります。この筋肉は細く弱いですが、スポーツ動作はもちろん、日常生活でも大きな役割を果たしています。
ローテーターカフはどんな働きをする?
ローテーターカフにはどのような役割があるのでしょうか。
肩甲骨と上腕骨をつないでいる関節「肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)」の形状は球関節に分類され、さまざまな方向に動くことができます。そのため、腕を自由自在に動かすことができるのです。
さまざまな方向に動く一方、問題点もあります。それは、安定性が悪く関節が外れやすいこと。おそらく「脱臼」と聞くと、肩の関節が抜けたというイメージが多いかと思います。
ローテーターカフは、そんな安定性の悪い肩甲上腕関節をスムーズに動くよう安定させる役割を持ちます。
ローテーターカフが弱いとどんなデメリットがある?
ローテーターカフを鍛えないと、ケガのリスクが高まる
ローテーターカフも筋肉ですから、鍛えなければ衰えます。ローテーターカフが弱くなれば、その分だけ肩関節の安定性が悪くなるということです。
日常生活程度であれば心配はありませんが、スポーツ競技となれば話は別。ケガのリスクが高くなり、パフォーマンスの低下をもたらします。
また、日常生活においてもローテーターカフの筋力低下はデメリットがあります。肩の動きが悪くなり、肩こりのような痛みの原因に繋がります。
そのため、ローテーターカフのトレーニングは欠かすことなく取り組んだほうがよいでしょう。ここからは、ローテーターカフの筋トレをくわしく解説します。
ローテーターカフを鍛えるトレーニング
棘上筋(きょくじょうきん)を鍛える筋トレ
- 足を肩幅に広げて立ち、両手に逆手でダンベルを持つ
- 肘を曲げず、ダンベルをやや前横へ、肩の高さくらいまで持ち上げる
- ゆっくりと元の姿勢に戻る
ポイントはダンベルを持ち上げる角度。肩甲骨の延長線上にダンベルを持ち上げるのが効果的です。
ワンポイントアドバイス
肩甲骨はハの字になっているので、少し前側(30度~45度くらい)に持ち上げるようにしましょう。
棘下筋(きょくかきん)を鍛える筋トレ
- 横向きに寝そべり、股関節と膝を曲げる
- 上の腕でダンベルを持ち、90度に曲げて力を抜く
- 肘を動かさないように天井方向へ持ち上げる
ワンポイントアドバイス
棘下筋は、肩を外側に捻る働きを持つ筋肉です。動作中に肘が動いてしまったり、上体が後ろに傾かないように気をつけましょう。
肩甲下筋のエクササイズ
- 横向きに寝そべり、股関節と膝を曲げる
- 下の腕を90度に曲げ、ダンベルを持つ
- 肘を動かさないようにダンベルを天井方向へ持ち上げる
ワンポイントアドバイス
棘下筋のエクササイズとは逆に、今度は下の手でダンベルを持ちます。
肩甲下筋は肩関節を内側に捻る働きを持っています。そのため、棘下筋と逆の動きを行うことで鍛えることが可能です。
棘下筋のトレーニングと同じように、肘を動かさないようにしましょう。
ローテーターカフを鍛えるときのポイント
トレーニングは低負荷で行う
ローテーターカフは、先ほどご紹介したように小さい筋肉です。高負荷で行うとローテーターカフではなくその表層にある筋肉を使ってしまい、刺激が少なくなります。
そのため、負荷は軽く(1~3kg程度)して、筋肉を意識しながら行うことがポイントです。
さまざまなエクササイズを行う
ローテーターカフは4つの筋肉です。そのため、エクササイズ方法もそれぞれ違うものになります。個別エクササイズを行い、まんべんなく筋肉を刺激するようにしましょう。
ここからは、ローテーターカフのストレッチです。
「ローテーターカフ(回旋筋腱板)」をほぐすストレッチ
1)外転ストレッチ
ヒジを頭の後ろに通し、逆の腕で引っ張るようにして伸ばします。
2)内転ストレッチ
背中側から反対側の腕で引っ張ります。肩を下げて行いましょう。
3)外旋ストレッチその1
反対側の手でヒジを押さえ、顔で手首を押すようにして伸ばします。
4)外旋ストレッチその2
ヒジを肩の高さにし、柱を使って前腕を後ろへ反らします。
5)内旋ストレッチその1
脇腹で手首を止め、ヒジを閉じるようにして伸ばします。壁を使ってヒジをコントロールするとさらに有効です。
6)内旋ストレッチその2
ヒジを肩の高さにし、柱を使って前腕を後ろへ逸らします。肩が上がらないように気をつけましょう。
著者プロフィール
和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。スポーツ系専門学校での講師や健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師経験も多数。そのほか、テレビや雑誌でも出演・トレーニング監修を行う。日本トレーニング指導者協会JATI-ATI。
【HP】
赤堀達也(あかほり・たつや)
1975年・静岡県出身。奇抜な理論ながらも論理的な指導で小学校・中学校・大学でバスケのヘッドコーチを行い、体力テストが市内最低水準校で県大会優勝した。最高戦績は全国準優勝で小学校・大学で全国大会に導く。2019年度より旭川大学短期大学部准教授として、この理論を応用した幼児体育・健康の研究を行い、全年代一貫指導で北海道の子どもの体力向上を図る活動に取り組む。またパーソナルストレッチ・スポーツスタッキング・部活動改革にも取り組む。
[HP] https://mt-a.jimdo.com
<Text:和田拓巳>
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