【ウォームアップ】ランニングの効果を高める準備運動9つ
2023年10月12日 09:00
ここでは、私が指導する高校クロスカントリー走部で行うウォームアップ(ウォーミングアップ)を紹介します。
かかる時間は約30分ほど。入部したばかりの新入生のなかには、これだけでへとへとになったり、これで練習が終わりだと勘違いしてしまう子も少なくありません。
しかし、このウォームアップによってスタートからトップに近いスピードに上げることもできますし、インターバル走も1本目から全力で取り組むことができるのです。
また、毎回決まったルーティンを行うことで、「さあ、これから走るぞ!」と気持ちを切り換えさせる心理的なスイッチ効果も、ウォームアップの大きな要素です。
スロージョグまたは早歩き(約10分)
まずは、ゆっくりしたペースでジョグします。高校生ランナーたちには400mの陸上トラックを3周させていますが、一般の人はそれより短い距離でかまいません。最初の半分くらいは歩いてもよいでしょう。
ここでの目的は、ゆるやかに心拍数と体温を上げること。そのため、距離やスピードは問題ではありません。それより大切なのは、約10分間という時間をかけて、心拍数を最大心拍数の50~60%程度まで上げることです。
そうして、少しずつ体と心を走るモードに切り換えていきます。
60~80%の短距離走リピート(100mを6本)
次に約100mをややスピードを上げて走ります。全速力の60~80%くらいの速さをイメージしてください。全部で6本走りますが、それぞれの間に1~2分の休息を挟みます。
タイムを競うわけではありませんので、スタートはゆっくり入り、中間地点までに徐々にスピードを上げましょう。
体が完全に温まっていないときに急加速をすると、ハムストリングスを痛めることがよくありますので注意してください。
この時点で、心拍数は70~85%程度まで上がってくるはず。これ以降はその心拍数と体温を保ちながら、残りのウォームアップをこなして体をさらにほぐしていきます。
次は、距離を約30~50mに短くしたランニングドリルを行います。
ランニングドリル(30~50m、7種類)
ここでの目的は、本番のランで使う筋肉とその拮抗筋肉に刺激を与え、関節の可動域を広げておくこと。いわゆる「アクティブ・ストレッチ」を同じ効果を狙っています。
ハイ・ニー・スキップ
膝を高く上げ、ジャンプするようなイメージでスキップします。
バック・ペダル
後ろ向きに走ります。
ジャンピング・ジャックス
両手を大きく上げると同時に、ジャンプして両足を大きく外に開きます。
次に、両手を下げながら足も閉じるという動作を行いながら真横に移動。片道を走り終えたら、体の向きを変えて逆方向に走ります。
カリオカ
上半身を正面にして腰から下だけを動かし、両足をクロスステップしながら真横に移動。これも片道を走り終えたら、体の向きを変えて逆方向に走ります。
ハイ・ニー・ラン
膝を高く上げて走ります。
バット・キック
かかとでお尻を蹴るようにして走ります。
クイック・プル(左右)
ゆっくりジョグしながら、数歩ごとに右足のみを2回続けて素早く引き上げます。左足でも同じ動作を行いましょう。
市民マラソンにはウォームアップは必要ない?
マラソン指南書などには、「市民マラソンにはウォームアップは必要ありません」という記載がよくあります。
これはフルマラソンの前半はゆっくり走るためそれがウォームアップになる、あえてスタート前に体力を消耗させることはないといった理由からくるものが多いでしょう。
最初から最後までゆっくり走るジョギングなら、ウォームアップは必要ないと発言する指導者も少なくありません。
しかし、ジョギングより速いペースで走るとなると、話は別です。
短・中距離のインターバル走の練習や、5kmレース、あるいはサッカーや運動会かけっこなど。どのような理由であれ、ある程度のスピードで走る予定がある場合は、しっかりウォームアップを行いましょう。
そうしないと十分なパフォーマンスが発揮できないだけでなく、怪我のリスクまで高まります。
私が指導する高校クロスカントリー走部のレース距離は3マイル(4.8km)。長距離走にカテゴリー分けされますが、その走るペースはジョギングよりはずっと速いものです。
したがって、私たちは毎日の練習やレース前には、いつも決まったルーティンで入念なウォームアップを行っています。
30分のウォームアップがもたらすメリット
ここでご紹介したウォームアップをすべて行うと、大体30分ほどかかります。
このウォームアップを済ませて数分だけ休んだ後、その日の本番メニューに入るのがクロスカントリー走部の日常です。これによってスタートからトップに近いスピードに上げることもできますし、インターバル走も1本目から全力で取り組むことができるのです。
また、毎回決まったルーティンを行うことで、「さあ、これから走るぞ!」と気持ちを切り換えさせる心理的なスイッチ効果も、ウォームアップの大きな要素です。
もちろん、皆さんがこれとまったく同じことをする必要はありません。しかし、負荷や時間を決める大体の目安にはなるでしょう。
目的に応じて、自分なりのウォームアップを組み立ててみてはいかがでしょうか。
[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
【公式Facebook】
<Text & Photo:角谷剛>
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