人がよくて内緒事が苦手 さらば大ちゃん 担当記者が見た大関・朝潮

2023年11月04日 04:44

相撲

人がよくて内緒事が苦手 さらば大ちゃん 担当記者が見た大関・朝潮
1982年、稽古場で陽気な朝潮(中) Photo By スポニチ
 【元大関・朝潮の長岡末弘さん死去 】 手元に大ちゃんの本名・長岡末弘の印が入った九州場所の番付表がある。昨日、自宅に届いたばかりだった。律義な男だから、退職した後も番付表を自分で手に入れ、親しい人に送り続けていた。
 最後に会ったのは今年2月。人工股関節の手術を受け、車椅子が必需品になっていた。「自分の足で歩けるように」とリハビリを続けていた。随分痩せた印象で小さく見えた。でも今場所も番付表が届いたので勝手に元気そうだなと思い込んでいた。

 私が相撲担当になったばかりの頃、銀座のクラブに誘われた。「銀座は午後9時前に店に入るとバカにされるからな」と言われ、2人で資生堂パーラーで2時間つぶした。男2人で気恥ずかしかったが、資生堂パーラーは近大時代に上京した時に詰め襟姿でよく行っていたらしい。「俺の思い出の場所」と言っていた。

 83年春場所後に大関に昇進。だが13日目に足の肉離れで休場のピンチに。当時の春日野理事長(元横綱・栃錦)に見解を取材に行くと「最後まで取る気概が大切」と言われ、その言葉を伝えると千秋楽まで完走し、無事昇進した。

 現役引退は89年春場所。その時は事前に引退を教えてもらっていた。ただ初日から4連敗して部屋に戻ると記者に囲まれ、優しい性格が災いし「明日相撲を取ってやめる」とポロッと言ってしまった。それが協会幹部に伝わり「やめるつもりなら土俵に上がるな」と言われそのまま引退となってしまった。

 人が良くて内緒事が苦手。だから誰からも愛された。67歳は若い。もう会えないと思うと寂しくて仕方がない。(スポニチOB、相撲記者クラブ会友・龍川 裕)

この記事のフォト

おすすめテーマ

2023年11月04日のニュース

特集

スポーツのランキング

【楽天】オススメアイテム