「プロテインは運動後すぐ飲む」はもう古い!元ボディビルダーの大学教授が解説

2024年01月30日 09:00

「プロテインは運動後すぐ飲む」はもう古い!元ボディビルダーの大学教授が解説
「運動後〇分以内にプロテインを飲むのが効果的」という説が一般化していますが、近年、ゴールデンタイムに飲まなくても問題ないという説も聞くようになりました。 とはいえ、ゴールデンタイムに飲むことを推奨するトレーナーやサイトも […]

「運動後〇分以内にプロテインを飲むのが効果的」という説が一般化していますが、近年、ゴールデンタイムに飲まなくても問題ないという説も聞くようになりました。

とはいえ、ゴールデンタイムに飲むことを推奨するトレーナーやサイトも多く、どちらが本当なのか混乱する声があります。本当のところはどうなのか? 元ボディビルダーで東京医療保健大学医療保健学部医療栄養学科教授・御堂直樹先生にお話を伺いました。

ゴールデンタイムにフォーカスしつつ、プロテインを飲むタイミングをいろいろな角度から見ていきます。

第1章 プロテインの「ゴールデンタイム」神話はホント?

「運動後、30分以内にプロテインを飲む」、いわゆるゴールデンタイム神話というものがあります。このゴールデンタイム、やはり意識したほうが筋肉を作るうえではよいのでしょうか。

ゴールデンタイムにこだわる必要はない!

「ゴールデンタイムにこだわる必要はないと思います。複数の研究結果を分析・統合した信頼性の高い研究において、ゴールデンタイムに否定的な結果が得られています。」(御堂先生)

ゴールデンタイムにこだわる必要はないと語る、その理由とは。

「プロテインの摂取タイミングに関する研究としては、1回の摂取で筋たんぱく質の合成量を評価した研究と、継続的な摂取により筋量や筋力の変化を評価した研究があります。人の身体は、外部からの刺激に適応し、反応が変わっていきます。つまり、短期間での変化が必ずしも中長期的な変化につながるわけではないのです。従って、中長期的な研究結果があるのであれば、そちらのほうをより重視すべきです。プロテインの摂取タイミングについて判断する場合も、中長期的な変化を表す筋量や筋力の変化を調べた研究結果のほうが重要です。そこで、ここでは筋量や筋力の変化を調べた結果を中心に説明します。」(御堂先生)

中長期的な変化にフォーカスして行われた研究の内容とは。

「最近の研究において、プロテインをサプリメントとして摂取した場合、摂取するタイミングと関係なく、筋量の増加が認められることが報告されました1)。この研究は、もっとも信頼性が高い研究とされる複数の研究結果を分析・統合したシステマティックレビューです。研究では、若年者、高齢者に関係なく、レジスタンス運動の直後とそれとは関係のない時間帯のプロテインの摂取において、筋量や筋力の増加に差が見られませんでした 1)。つまり、プロテインの摂取タイミングよりも、1日のたんぱく質摂取量のほうが重要であり、ゴールデンタイムの存在は怪しいということになります。」(御堂先生)

いつ飲んでも、筋量や筋力の増加に差は見られなかった。重要なのは飲むタイミングではなく、たんぱく質をきちんと摂取することにありそうですね。

「筋肉中のたんぱく質の合成速度は、レジスタンス運動直後のみ増加するのではなく、運動後24~48時間持続することが報告されています 2)。このことからも、ゴールデンタイムといったスポット的なタイミングではなく、1日を通じたたんぱく質摂取のほうがより重要と考えられます。ただし、ゴールデンタイムの存在が怪しいとしても、レジスタンス運動直後にプロテインを摂取することに、とくに問題はないと考えられます。」(御堂先生)

筋トレ直後にプロテインを飲んでも、もちろん問題はありません。ですが、急いでプロテインを作ったり、筋トレ直後に飲めるよう無理にセッティングする必要はなさそうです。

ゴールデンタイム神話はなぜ生まれた?

ゴールデンタイムのプロテイン摂取は必須ではない。では、なぜゴールデンタイムに飲むのがよいという定説が生まれたのでしょうか。

「初期の研究において、それを示唆する結果が得られたためだと思います。これを広めたのはサプリメントメーカーだと思いますが、特定の使用法を提案するほうがプロテインの必要性を強調しやすかったのでしょう。」(御堂先生)

サプリメントメーカーが引用した初期研究とは、どんな内容だったのでしょうか。

「多くのサプリメントメーカーが引用しているのは、2001年に報告されたEsmarck Bらの研究結果 3)です。たしかにこの研究では、レジスタンス運動の2時間後よりも直後にプロテイン(実際には10gたんぱく質、7g炭水化物、3g脂質)を摂取したほうが、12週間後の筋量や筋力が増加しました。しかし、この研究は、レジスタンス運動未経験の高齢者(74±1歳)を対象とした研究であり、被験者数も各群6~7名と少ないことから、限定された条件で偶然そのような結果が得られた可能性があります。とくに高齢者では、必要なたんぱく質摂取量が若年および中年者に比べて多いとされており 4)、たんぱく質に対する反応が若年者とは異なると考えられます。従って、この結果を一般化するには厳しいものがあると思います。一方、自転車こぎ運動直後のたんぱく質摂取(実際には10gたんぱく質、8g炭水化物、3g脂質)は、3時間後の摂取よりも体たんぱく質の合成を高めたとする報告があり、これも引用されることがあります 5)。しかし、この研究は、本来の目的である筋量や筋力を指標とした研究ではないこと、運動が有酸素運動であることなどの点で、やはり一般化するには無理があると考えられます。」(御堂先生)

第2章 プロテインを飲むタイミングとおすすめの種類

筋トレ後、急いでプロテインを飲む必要はとくにないということが分かりました。それよりもしっかりとたんぱく質を摂取することのほうが大切。では、どのようなプロテインを、どれくらい摂るとよいのでしょうか。目的別と時間帯別で見ていきます。

まずは目的別から。

ダイエット中の人は「食事の最初にソイプロテイン」

「朝・昼・夕の食事と同じタイミングで、食事の最初に摂取することをおすすめします。プロテインの種類としては、一般に利用されるホエイ、カゼインおよびソイプロテインのどれでもよいのですが、強いていえば、ソイプロテインになると思います。」(御堂先生)

食事の前にプロテイン。カロリーオーバーせずたんぱく質の割合を増やすコツは、1日のエネルギー摂取量を調整する必要があります。

「通常の食事として推奨されるのは、エネルギー摂取量に対し、たんぱく質は13~20%ですが 4)、ダイエットには30%程度がよいとされています 6)。たんぱく質を30%程度まで増やすのは困難なので、現実的には、少しでも増やそうと意識することだと思います。1日の合計のエネルギー摂取量を減らすことが前提になりますが、炭水化物や脂質の摂取量を減らしたうえでプロテインを摂取すれば、たんぱく質の割合を増やすことができます。」(御堂先生)

ダイエット中、食事の回数や量を控える人が後を絶ちません。やはり食事の回数は1日3回がベストでしょうか。

「ダイエットに効果的な食事の頻度は5~6回という説もありますが、複数の研究結果を総合すると、1日2~3回がよいと考えられています 7)。朝食欠食も肥満につながることが報告されているため、現実的に考えると、まずは朝・昼・夕の3食で必要な栄養素を摂ることを前提にすべきです。また、筋たんぱく質の合成を指標に調べた研究 8, 9) から、一度に効率的に吸収できるたんぱく質の量は、体重にもよりますが、20~30g程度と言われています。そのため、特定の食事に偏ってたんぱく質を摂取することがないように、朝・昼・夕の食事でたんぱく質の摂取が少ないときに、不足分をプロテインで補うのがよいでしょう。」(御堂先生)

朝・昼・夕の3食、バランスよく食べつつ、たんぱく質が足りないときにはプロテインで補う。その際は食事の前に飲むのがおすすめということです。しかも、たんぱく質にはダイエットの大敵である空腹感をまぎらわせる効果も期待できるのだとか。

「食事の量を減らすと空腹感が増しますが、それに耐えられない方もいると思います。たんぱく質は他の栄養素に比べ、満腹感を高めることが報告されています 6)。そのため、食事と同時に摂取する場合は、プロテインを最初に摂取することをおすすめします。また、同様の理由で、どうしても空腹感に耐えられない場合、プロテインを間食として摂取してもよいと思います。この場合、1日1回程度の摂取に留め、できるだけ早い時間帯に摂取するほうがよいでしょう。」(御堂先生)

間食にプロテインはよく聞く話です。その際、どの種類のプロテインでもよいのでしょうか。

「ダイエット時のプロテインとしては、一般にソイプロテインのほうが、ホエイやカゼインよりもよいと言われています。これは、ソイプロテインに、血中コレステロールや血中中性脂肪の低下、体脂肪率の上昇抑制などが認められているためです 11)。しかし、信頼性の高いシステマティックレビューでは、対象者により体重変化への影響が異なるとされ、明確な結論は出ていません 12)。そのような状況ですが、ダイエットによい可能性があることを完全には否定できないため、ソイプロテインを選択すればよいと思います。」(御堂先生)

ソイプロテインとダイエットの関係性に、今後も期待が高まりますね。

「補足ですが、単に食事制限だけでダイエットを行うと、いくらたんぱく質の摂取量を増やしたとしても、筋肉の減少を完全に止めることはできません。筋肉を失うと、ボディラインを維持できなくなるだけでなく、代謝が低下し、痩せにくい体質になってしまいます。そこで重要なのが、レジスタンス運動です。ダイエット時にレジスタンス運動を行うことにより、筋量を維持できることが報告されています 13)。また、レジスタンス運動を実施している成人では、間食としてではなく、食事と同時にプロテインを摂取した場合に体脂肪が減少する可能性が高いことが報告されています 14)。そのため、レジスタンス運動を実施するときも、食事と同時にプロテインを摂取することをおすすめします。」(御堂先生)

筋肉量を増やすために運動をしている人は「1日1回程度のプロテイン」

続いて、筋肉をつけるために筋トレをしている人向けの、プロテインの飲み方です。

「朝・昼・夕の食事で均等にたんぱく質が摂取できるように、不足する食事があればプロテインで補います。その上で間食として、1回程度プロテインを摂取すればよいと思います。プロテインの種類としては、一般に利用されるホエイ、カゼインおよびソイプロテインのどれでもよいと思います。」(御堂先生)

ダイエット目的のときと同様、基本は朝・昼・夕の食事でたんぱく質を摂るように意識しつつ、足りないときにプロテインを飲む。さらに、間食として1杯飲むのがよいそう。

「先に述べたように、たんぱく質は一度に効率的に吸収できる量が20~30g程度と言われています。そのため、1日の中で摂取の時間帯を分散させたほうがよいでしょう。現実的に考えると、まずは朝・昼・夕の食事で均等にたんぱく質を摂取できるように、必要に応じてプロテインを追加します。これに加え、間食としてプロテインを摂取すればよいと思います。1日の摂取量は1.6g/kg体重/日たんぱく質を目安にします。この数値は、レジスタンス運動実施者のたんぱく質必要量に関するシステマティックレビュー 5)の数値を元にしています。」(御堂先生)

間食はいつ摂るのがおすすめでしょうか?

「間食での摂取のタイミングとしては、食事間の時間が長いときに、その間で摂取すればよいと思います。先にゴールデンタイムの存在を否定しましたが、筋トレ後の摂取に問題があるわけではないので、このタイミングでも構いません。また、一般に効果的と言われている就寝30分前のタイミングでもよいと思います。ちなみに、このように言われているのは、就寝30分前のプロテイン(吸収の遅いカゼイン)摂取により、就寝中の筋たんぱく質の合成が高まることや、筋量を増加させる可能性があるという複数の研究結果があるためです 15)。とくに悪いタイミングではないと思いますが、これらの研究結果は、単にたんぱく質の摂取量が増えたために起きたとも考えられますので、こだわり過ぎる必要はないと思います。」(御堂先生)

昼食から夕食の間が長いとき、3時のおやつにプロテインを飲むのも良さそうですね。プロテインの種類はとくにこだわらなくてもよいのでしょうか?

「プロテインの種類をホエイ、カゼインおよびソイプロテインのどれでもよいとしたことにも根拠があります。筋肥大や筋力増強を目的とした場合、プロテインの種類による違いは認められないという複数の研究結果があるのです 16,17)。ところが、一般に筋肉をつけたいときは吸収の早いホエイがよく、筋肉を維持しつつ減量したいときはソイプロテインがよいと言われています。」(御堂先生)

はい、とてもよく聞く話です。

「たしかにホエイの吸収速度は速いのですが 18)、体内でのたんぱく質の合成速度には限界があるため、過剰なたんぱく質はエネルギー供給源となるATPの合成や体脂肪への変換など別の形で消費されることになります。つまり、早い吸収が必ずしもメリットにならないのです。また、食事と一緒に摂取する場合、他の成分の影響でホエイ単独の吸収速度よりも遅くなると考えられ、プロテインの種類による吸収速度の差がなくなる可能性もあります。」(御堂先生)

プロテインを飲み過ぎると体脂肪になるという話もよく聞きます。やはり過剰な摂取は吸収しきれないだけでなく、体脂肪増加の要因にもつながると御堂先生は語ります。

「ここで注意していただきたいことは、必要以上のプロテイン摂取は体脂肪の蓄積につながるということです。運動強度や代謝の状態は各個人で異なるため、実際に必要なたんぱく質の量も各個人で異なります。自身の身体の変化を客観的に見ることで、付加的なたんぱく質の必要量を判断していただければと思います。」(御堂先生)

必要なたんぱく質量は個人によって異なる。ですが、筋トレをするときは〇gくらいのたんぱく質量を摂る……などの基準を見たことがあります。

「一般にレジスタンス運動を実施するときのたんぱく質必要量は、2~3g/kg体重/日と言われてきましたが、なぜでしょうか? 前述の1.6g/kg体重/日の『1.6』を整数で四捨五入すれば『2』になりますが、切り上げ過ぎている気がします。最近では、サプリメントメーカーも根拠を重視しているのか、『3』という数値をあまり見かけなくなりました。私は、この数値は海外のプロボディビルダーの経験値によるものであったと推測しています。」(御堂先生)

「彼らは、アナボリックステロイドや成長ホルモンといった筋肉増強剤を使用していることが多く、その場合の必要量が3g/kg体重/日、あるいはそれ以上だったのでしょう。また、筋肉増強剤を使用しないナチュラルボディビルダーがコンテスト準備期(きびしい食事制限と長時間の運動により体脂肪を極限まで減らす時期)において、筋量を維持するために、除脂肪体重あたりで2.3~3.1g/kg(仮に体脂肪率10まで減量が進んだ時点では体重あたり2.12.8g/kg)のたんぱく質が必要であったという報告もあります 19)。しかし、身体を酷使し、1gでも多くの筋量を増やすことに極端にこだわり、競技としてボディビルを行うアスリートの数値をそのまま受け入れるべきではないと思います。」(御堂先生)

たしかに、一般人とは大きくかけ離れたプロボディビルダーを基準に飲んでいたら、それだけですごいカロリーになりそうです。自分の体重や活動量に合ったたんぱく質量を見つけ、かつカロリーオーバーにならないよう食事量や内容を調整する必要がありそうですね。

では、普段の食事で必要量のたんぱく質が摂取できないことが多く、食事摂取基準の数値を目標にプロテインを飲む場合は、どんな飲み方が適しているでしょうか。

たんぱく質補給を目的に飲んでいる人は「不足分を食事や間食時に摂る」

「朝・昼・夕の食事で均等にたんぱく質が摂取できるように、不足する食事があればプロテインで補います。プロテインの種類としては、一般に利用されるホエイ、カゼインおよびソイプロテインのどれでもよいと思います。基本は、普段の食事からたんぱく質を摂取すべきですが、それでも不足する場合にプロテインを追加することになります。」(御堂先生)

やはり基本は食事からたんぱく質を摂取するよう意識したいとのことですが、どうしても不足する場合は、以下の内容を目安に摂取します。

「仮に1日のたんぱく質として、18~64歳の推奨量である男性65g/日、女性50g/日7)を摂取したい場合、これを三等分すると、それぞれ約22g、約17gになります。この量は一度に効率的に吸収できる量に近いので、これを満たすことを目標に、プロテインを追加するのがよいでしょう。食事中のタイミングとしては、食前でも食後でも摂取しやすいタイミングでよいと思います。もし、食事と同時に摂取できないのであれば、間食として摂取しても問題ありません。」(御堂先生)

たんぱく質不足を補う場合、おすすめのプロテインの種類はありますか?

「プロテインの種類としては、必須アミノ酸をバランスよく含み、大部分が消化吸収されるものであれば問題ありません。通常使用されるホエイ、カゼインおよびソイプロテインは、いずれもたんぱく質の栄養価を示す指標のDIASS※が比較的高いため 20)、違いを気にする必要はないと思います。」(御堂先生)

※DIAAS(消化性必須アミノ酸スコア):現在推奨されているたんぱく質の栄養価を表す指標。食品中のアミノ酸含有量とそれぞれのアミノ酸の小腸までの消化吸収率から割り出した数値。1が必須アミノ酸の必要量を満たす値であるが、それ以上の過剰量を表す数値もとる。

体を大きくしたい人、太りたい人

体を大きくしたい、むしろ太りたいという人もいるかと思います。そういった方がプロテインを活用する場合のポイントを教えてください。

「筋肉も体脂肪もつけたい場合、プロテインについては『筋肉量を増やすために運動をしている人』と同じです。これに加え、エネルギー摂取量を増やす必要があるため、より多い分量を食べること、食事の頻度を増やすこと、および高カロリーの食品を選ぶことが必要です 21)。単に体脂肪をつけたい場合、プロテインは不要です。上記と同様の方法で、エネルギー摂取量を増やせばよいと思います。」(御堂先生)

プロテインのなかには、ハードゲイナー向けに糖質を多く含むウエイトゲインプロテインなどがありますが、こういったアイテムはどうでしょうか。

「プロテインには体重増量用として炭水化物を含むものがありますが、私は使わなくてもよいと考えています。食事と同時に摂取する場合、炭水化物は他の食品から摂取できるためです。たんぱく質を炭水化物と同時に摂取することにより、インスリンが分泌され、骨格筋へのアミノ酸の取り込みが促進されます 22)。そのため、理屈上は、これを期待して炭水化物を含むプロテインを選択すべきと考えることができます。たしかに、短時間の筋たんぱく質の合成速度を調べた研究では、炭水化物との同時摂取の効果が認められたとする研究結果があります 22)。しかし、それとは逆の研究結果 23)があることや、たとえばHulmi JJらの報告  24)のように筋力や筋量を指標とした研究で効果が認められなかったことから、炭水化物の同時摂取は不要であると考えています。」(御堂先生)

朝、昼、間食、寝る前……飲む時間帯はいつでもいい?

目的別で見たおすすめの摂取タイミングと種類を聞いてきました。ここからは、時間帯という視点からプロテインの飲み方を見ていきます。

「先述のとおり、基本は、朝・昼・夕の食事で均等にたんぱく質が摂取できるように、不足する食事があればプロテインで補うという考え方がよいと思います。間食として摂取すべきかどうかは目的により異なります。プロテインの種類としては、これも目的別のところで説明しましたが、基本的には、一般に利用されるホエイ、カゼインおよびソイプロテインのどれでもよいと思います。」(御堂先生)

時間帯で見た場合、朝食時にプロテインをとり入れるのもよいそうです。

「たんぱく質が不足しがちな朝食時にプロテインを摂取するという考え方もできます。朝・昼・夕の食事からのたんぱく質摂取量は、30~64歳の日本人男性でそれぞれ平均15.2、22.9、35.9g、同年代の女性でそれぞれ14.1、18.4、24.9gと報告されており、とくに朝食でのたんぱく質の摂取量が少ないことが分かります  25)。多くの方が朝食を軽く済ませていると思いますので、この数値は実感とも合うのではないでしょうか。先に述べたように、たんぱく質は一度に効率的に吸収できる量が20~30g程度と言われています。そのため、ひとつの方法として、軽めの朝食を摂っている人は、朝食時にプロテインを摂取すると決めてしまうのもよいと思います。」(御堂先生)

朝は食欲が湧かない、ガッツリ食べたくないという人も多そうですので、そういうときにプロテインをとり入れると丁度よさそうですね。ちなみに、朝起きていきなりプロテインを飲んでも大丈夫でしょうか?

「飲んでも問題ないと考えています。英語の朝食“breakfast”は、“夜間の断食期間を破る”という意味です。就寝時は長時間絶食状態になっているため、栄養素が不足しています。また、先に述べたように、一般に朝食におけるたんぱく質の摂取量は少ない傾向にあります。そのため、むしろ積極的に早い時間帯に摂取すればよいと思います。」(御堂先生)

朝、筋トレに励む人もいます。筋トレ前や最中に飲んだほうがよいなどはありますか?

「レジスタンス運動の直前や運動中にプロテインを飲む必要はないと考えています。レジスタンス運動の直前と直後のプロテイン摂取について、効果の違いを調べた研究がいくつかありますが、統合した解析結果からは、効果の違いは認められませんでした 1)。」(御堂先生)

最初のゴールデンタイム神話でも言われた内容ですね。

「運動中は、運動に適した状態に身体が変化しており、消化吸収しにくい状態になっていると考えられます。これらの研究に使用されていたのは吸収の早いホエイだからかもしれませんが、運動前の摂取で胃腸の調子が悪くなったという報告は見られません。そのため、運動前の摂取に問題があるわけではなさそうですが、やはり胃腸に負担のかかるリスクはあると思います。レジスタンス運動中のプロテイン摂取に関しては、そもそも不要と考えられているのか、あまり研究を見かけませんが、同様の理由で不要であると考えています。」(御堂先生)

運動中の水分補給としてプロテインを飲む人も見かけますが、胃腸のためにも避けたほうがよさそうです。

1)             Wirth J et al., J Nutr, 150, 1443-1460, 2020.
2)             Phillips SM et al. Am J Physiol, 273 (1 Pt 1), E99-107, 1997.
3)             Esmarck B et al., J Physiol, 535, 301-311, 2001.
4)             厚生労働省, 「日本人の食事摂取基準」(2020年版), https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
5)             Levenhagen DK et al., Am J Physiol Endocrinol Metab, 280, E982-93, 2001.
6)             Abete I et al., Nutrition Reviews, 68, 214-231, 2010.
7)             Paoli A et al., Nutrients, 11, 719, 2019.
8)             Moore DR et al., J Gerontol A Biol Sci Med Sci, 70, 57-62, 2015.
9)             Mamerow MM et al., J Nutr, 144, 876-880, 2014.
10)           Morton RW et al. Br J Sports Med 52, 376–384, 2018.
11)           医薬基盤・健康・栄養研究所, 「健康食品」の安全性・有効性情報, ダイズ, https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail84.html
12)           Akhlaghi M et al., Adv Nutr, 8, 705-717, 2017.
13)           Dudgeon WD, J Strength Cond Res, 31,1353-1361, 2017.
14)           Hudson JL et al. Nutr Rev, 76, 461-468, 2018.
15)           Reis CEG et al., J Sci Med Sport, 24, 177-182, 2021.
16)           Candow DG et al. Int J Sport Nutr Exerc Metab, 16, 233-244, 2006.
17)           Denysschen CA, J Int Soc Sports Nutr, 6, 8, 2009.
18)           Boirie Y et al. Proc Natl Acad Sci USA 94, 14930-14935, 1997.
19)           Helms ER et al., J Int Soc Sports Nutr, 11, 20, 2014.
20)           Rutherfurd SM et al., J Nutr, 145, 372-379, 2015.
21)           篠田邦彦 監修, NSCA決定版 ストレングストレーニング&コンディショニング 第4版, (有)ブックハウスHD, 2016.
22)           寺田新, スポーツ栄養学, 東京大学出版会, 2017.
23)           Staples AW et al., Med Sci Sports Exerc, 43, 1154-1161, 2010.
24)           Hulmi JJ et al., J Int Soc Sports Nutr., 12, 48.
25)         Ishikawa-Takata K et al., Geriatr Gerontol Int, 18, 723–731, 2018.

監修・執筆者プロフィール

御堂直樹(みどう・なおき)


東京医療保健大学教授。1965年生まれ。筑波大学第二学群生物学類卒業。東北大学博士 (農学)、CSCS※。明治製菓(株)〔現 MeijiSeikaファルマ(株)〕、(株)東洋新薬、クノール食品(株)〔現 味の素食品(株)〕にて研究、商品開発、品質保証などに従事した後、2021年から現職。専門は食品学、食品加工学、食品機能学。競技として、アメリカンフットボール、ボディビルディングを経験。ボディビルディングでは、2002年日本社会人大会優勝。

<Edit:編集部>

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