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ラグビー・リーチ主将が五輪から学ぶもの 団体球技が持つ影響力や今後の課題とは?

2024年07月31日 11:30

五輪

ラグビー・リーチ主将が五輪から学ぶもの 団体球技が持つ影響力や今後の課題とは?
ラグビー日本代表で通算87キャップのリーチ・マイケル Photo By スポニチ
 【レジェンドの視点】今大会の日本は団体球技全7競技で男女いずれかが自力で出場権を獲得した。これは球技が2競技のみだった32年ロサンゼルス以来で、実質的に史上初の快挙だ。ラグビー日本代表でW杯4大会に出場したリーチ・マイケル(35=BL東京)は歴史的3勝を挙げた15年大会、史上初の8強入りした19年大会と中心選手として活躍。団体球技が持つ影響力や今後の課題とは?代表で主将も務めた生粋のリーダーが考察した。 (取材・構成 阿部 令)
 僕は、オリンピックの個人競技からインスピレーション(ひらめき)をもらうことが多いのですが、確かに団体球技の選手が他の団体球技からインスピレーションをもらうことも多いと思います。分かりやすいのは東京五輪で銀メダルを獲得したバスケットボール女子。体は小さくてもスピードや俊敏性を生かし、3点シュートを狙う日本らしい戦い方から、たくさんのインスピレーションをもらいました。

 五輪はたくさんの競技がありますが、団体球技が活躍すると、より盛り上がります。例えば昨年の(野球の)WBC。世界一になるまでの盛り上がり、優勝した時の影響力を強く感じました。僕たちは(W杯最高成績は)まだベスト8。もっと上を目指さなければいけないと感じています。

 15年W杯の前、エディー(ジョーンズ・ヘッドコーチ)と縁があった(09年WBCを率いた)原(辰徳)監督の話を聞く機会がありました。逆に14年のサッカーW杯で期待をされながら、1勝もできずに敗退した理由を、当時の代表監督と会ったエディーに聞いたこともあります。

 同じ団体球技の成功と失敗、特にマインドセットを勉強できたからこそ、W杯で勝つことができました。そして過去1勝だったW杯で優勝候補の南アフリカを倒すなど3勝を挙げた僕たちのストーリーも、さまざまな競技や会社にも影響を与えたと聞きます。ある競技の活躍が他競技にも相乗効果を生み出す。これこそが団体球技が活躍している理由だと思います。

 僕が主将としてチームづくりで心がけていたのは、選手全員が日本を代表する心構えを持つことです。ラグビーの場合は外国人選手もいて、ちょっと複雑。自分がプレーする国を好きになり、文化を愛し、プライドを持てるか。そうなることでプレーが1%でも良くなれば、15人全員分なら大きなプラスになる。そして個人よりもチームのことを優先して行動できる選手を増やせるか。19年W杯では試合に出られない選手がいましたが、彼らが僕たち(主力メンバー)のために行動してくれたからこそ、結果を出せました。体や戦術を鍛えるだけでは、決して勝てません。

 日本は人口が減っていて、高校ラグビーでも各都道府県で行われる花園予選への出場校がどんどん少なくなっています。競技人口が減れば、7人制ラグビーも五輪出場を続けられるか分かりません。問題解決の答えは分かりませんが、一つ言えるのは、グラスルーツ(草の根)を大切にしないといけないということ。僕が生まれたニュージーランドでも、代表は強いけど、グラスルーツにはフォーカスされていない。子供の競技者数も少なくなっています。育成環境を整えることが大切で、僕たちトッププレーヤーがどんどん足を運び、子供たちにインスピレーションを与えることが、一つの解決策になると思います。

 パリ五輪、僕も凄く楽しみにしています。インスピレーションが欲しい。特に35歳オーバーの選手を見て、たくさん刺激をもらいたいと思います。

 ◇リーチ・マイケル 1988年10月7日生まれ、ニュージーランド・クライストチャーチ出身の35歳。15歳で来日し、札幌山の手高―東海大を経て11年から東芝(現BL東京)所属。13年に日本国籍を取得。W杯は11年から4大会連続出場し、代表通算87キャップは歴代2位。23~24年シーズンはBL東京で主将に復帰し、14季ぶりのリーグ制覇に導いた。ポジションは主にFW第3列。1メートル89、113キロ。

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