【内田雅也の追球】練習のたまもの 熊谷の「やーなれ」の快走生還

2023年02月26日 08:00

野球

【内田雅也の追球】練習のたまもの 熊谷の「やーなれ」の快走生還
<ヤ・神OP>6回、打者・坂本の時、金久保の暴投で二塁走者・熊谷は本塁に滑り込み生還する(撮影・椎名 航) Photo By スポニチ
 【オープン戦   阪神5-2ヤクルト ( 2023年2月25日    沖縄・浦添 )】 今春初のオープン戦で阪神の強みが見えた。奪った得点は5点。もちろん、板山祐太郎の2ランも植田海の2点二塁打も見事だったが、渋く光ったのは2死から奪った6回表の1点である。
 4、5番のOS砲――との言い方があるのかどうか――大山悠輔、佐藤輝明凡退の2死から糸原健斗が右前打で出た。監督・岡田彰布は代走に熊谷敬宥を送った。

 相手のヤクルト右腕、金久保優斗は二盗を警戒し、けん制を繰り返した。クイック投法にも気を配っていた。だからだろうか、打者・高山俊に制球が乱れ、四球で2死一、二塁となった。

 続く打者・坂本誠志郎の2球目、外角低めスライダーがワンバウンドの暴投となり、ボールは一塁ベンチ付近まで転がった。この時、熊谷は横目でボールを追いながら、猛然と走った。三塁を小さく鋭く蹴り、本塁へ滑り込んだ。捕手・古賀優大から本塁カバーの金久保への送球を余裕でかわし、生還したのである。ストップウオッチの計測を忘れていたが、二塁から本塁まで恐らく6秒台序盤の快足だったろう。

 「いい走塁だ」と岡田はたたえた。そして「あれはウチが練習していたプレーよな」と言った。

 今春のキャンプ中、ケースノックやチームプレーの守備練習時、ノッカーの内野守備走塁コーチ・藤本敦士が手でボールを捕手後方に転がしていた。捕手が後逸(暴投、捕逸)した際、素早く処理に走り、本塁カバーの投手に送球する。投手の素早い本塁到達、コリジョン(衝突防止)ルールに沿った立ち位置やタッチも指導していた。かつて木戸克彦がコーチ時代によく行っていた練習を復活させたわけだ。

 防御面を練習していれば、攻撃面にも生きてくる。熊谷は処理やカバーに走る捕手、投手の動きも見ていたのだろう。

 沖縄に古くから伝わる格言、黄金言葉(くがにくとぅば)に「家習る、外習(やーなれーる ふかなれー)」がある。沖縄の友人から聞いた。

 「家庭でのしつけや習慣が外に出たときの鑑(かがみ)になる」といった意味だ。野球で言えば、練習がいいかげんだと試合で失敗する。逆に練習を積んでいれば、試合でも成果が出るわけだ。

 岡田は「足のあるやつはどんどんアピールしてくれたらいい」と話した。「心配していない」と言う守備以上に、走塁の強みも感じていることだろう。 =敬称略=(編集委員)

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