【内田雅也の追球】「アレ」へ辛抱の時 虹のため雨を我慢するように

2023年07月17日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「アレ」へ辛抱の時 虹のため雨を我慢するように
甲子園素盞嗚神社は夏祭り。願い事を書いたカードが風に揺れていた Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神0―3中日 ( 2023年7月16日    甲子園 )】 敗戦後、阪神監督・岡田彰布はゆっくりと歩いた。勝っても負けても歩調は変わらない。インタビュールームから廊下を通り、階段を上り、クラブハウスの連絡橋へ歩む。毎日、この繰り返しだ。
 「辛抱ですね」と問いかけてみた。

 「え?」

 「監督は辛抱するのが仕事かもしれません」

 「けっ」

 笑った。

 「辛抱ですよ」

 「けっ」

 振り向いて笑った。

 わかっている。監督業では、いかに忍耐が必要なのかわかっている。

 また、打てなかった。3安打零敗。好機は3回裏2死二塁、5回裏2死満塁で、ともに森下翔太に回り、ともに平凡な外飛に倒れた。他の回は3人で終えており、全くの完敗だった。

 打線は水物で好不調の波があるものだが「ずーっとやろ」と辛抱の期間が長い。速球に差し込まれる光景ばかり。たとえば佐藤輝明も速球には遅れ、変化球には泳いだ。これも辛抱である。

 虹の日だった。7・16で「なないろ」の語呂合わせらしい。

 英語で「ノー・レイン、ノー・レインボー」ということわざがある。ハワイで育ったタレント・早見優が小さいころ「虹を見たければ、雨を我慢しなくちゃね」とよく言われたそうだ。何年か前、JALの機内番組で聴いた。

 確かに、美しい虹を見るには雨が降らないといけない。物事を成すには辛抱が必要なのだ。

 15、16日と甲子園素盞嗚(すさのお)神社は夏祭りでにぎわっていた。子どもたちが願い事を書いた短冊風カードが風に揺れていた。「家族が幸せになれますように」「戦争がなくなりますように」「ホームランが打てますように」……「タイガースがゆうしょうできますように」もあった。

 甲子園球場も「こどもまつり」だった。スコアボード表記はひらがなだった。試合前は各ポジションに子どもがつき、先発メンバー紹介も子どもが行った。

 「野球場は夢がかなう場所」と言われる。「ただし、問題は何歳まで夢を追えるかだ」というアメリカ映画のセリフがあった。阪神はいま、大の大人が追っている。

 子どもたちもファンも願う「アレ」に向けて、球宴前の踏ん張りどころである。虹のため雨を我慢するように、今は辛抱である。=敬称略=(編集委員)

おすすめテーマ

2023年07月17日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム