【内田雅也の追球】記憶に残る初の許盗塁 伊藤将の「3球連続でけん制はない」といった傾向が読まれたか

2023年08月28日 08:00

野球

【内田雅也の追球】記憶に残る初の許盗塁 伊藤将の「3球連続でけん制はない」といった傾向が読まれたか
<巨・神>8回、巨人・門脇(左)に二盗を許す(撮影・岸 良祐) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神2―4巨人 ( 2023年8月27日    東京D )】 阪神監督・岡田彰布が新聞に掲載されていたデータを見て「びっくりしたわ」と話していた。前日26日の試合前、25日終了時点の数字である。
 「ホームランよ」と言う。巨人戦、東京ドームに限れば、阪神が本塁打数で上回っていた。阪神11本、巨人10本だった。

 「もう一つは盗塁よ。巨人の方が多いねん」。阪神4個、巨人5個だった。シーズン全体では阪神60個、巨人40個と圧倒している。「そんな走られてたかなあ」と少し考えた。「あの盗塁が痛かったというのはなかったな。だから――」記憶に残っていないのである。

 ならば、この日許した盗塁は頭に残る。2―2同点の8回裏2死一塁、代走の門脇誠に走られた二盗である。この後、四球で一、二塁。岡本和真に三遊間突破の左前決勝打を浴びたのだった。

 門脇が走った坂本勇人の打席を振り返る。符号は●=ボール、F=ファウル、◎=空振り、ケ=けん制球を示す。

 ●ケF●◎ケケ●(二盗)●(四球)

 投手・伊藤将司は計3球のけん制球を放るなど警戒していた。

 そして、左腕・伊藤将は一塁けん制がうまい。ゆったりと右足を上げ、鋭く投げる。打者への投球と見分けづらい。この日も梶谷隆幸、長野久義、坂本、丸佳浩と、つまり一塁走者になった全員が一度は投球なのに帰塁していた。

 昨年から巨人戦は5戦5勝のキラー。しかも盗塁は一度も許していないどころか、企図数も0で走らせてもいない。一昨年は企図3で許盗塁1・阻止2の成績が残る。

 この時も門脇は帰塁こそしなかったが、第2リードの1歩目が緩く、走られる感じはなかった。ただ、坂本を2ストライクと追い込み、ギャンブルで走るのは警戒したい。だから2ボール―2ストライクから続けてけん制を入れたのだろう。

 5球目。門脇は好スタートだった。投球はクイック気味で外角高め直球。捕手が投げやすいコースだったが、送球は間に合わなかった。伊藤将が巨人に許した2年ぶりの盗塁となった。

 推測だが、続けてけん制を放ったことで「3球連続でけん制はない」といった傾向が読まれたのかもしれない。

 「アレ」に向けては痛くもかゆくもないが、好投の伊藤将には悔しい敗戦だ。長期ロード最終戦。夏の旅の思い出、いや記憶に刻まれるシーンとなった。=敬称略=(編集委員)

おすすめテーマ

2023年08月28日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム