「公立校の剛腕」幕張総合151キロ右腕・早坂を元審判員記者がジャッジ 驚き成長曲線

2023年10月13日 05:00

野球

「公立校の剛腕」幕張総合151キロ右腕・早坂を元審判員記者がジャッジ 驚き成長曲線
マウンドから力強く投球する幕張総合・早坂響(撮影・木村 揚輔) Photo By スポニチ
 11年から6年間、NPB審判員を務めた柳内遼平記者(33)が、フル装備で選手たちの魅力をジャッジする「突撃!スポニチアンパイア」の第8回。26日のドラフト会議での指名を待つ、幕張総合(千葉)の最速151キロ右腕・早坂響(おと)投手(3年)に突撃した。投手歴はわずか1年。異例の急成長を遂げた「公立校の剛腕」の進化に迫った。
 海浜幕張駅の南口側にはロッテ本拠地のZOZOマリンがある。反対方向の北口側から徒歩で10分ほど。幕張総合へ向かう記者は「ようやく早坂の実力が分かる」と自然に少し速足になっていた。今夏の千葉大会を盛り上げた公立校の剛腕。真の実力を見極めるには、球場の記者室やスタンドは遠すぎた。念願だった。“審判”として一番近くでジャッジできる。

 8度目のこの企画。最高の環境が用意された。ブルペンではなくグラウンドのマウンドを使うことが許され、ネット裏ではマネジャーがスピードガンを計測した。「アピールの場を与えたい」という柳田大輔監督の親心だった。

 「プレー!」の声が初対決のゴング。早坂は「まずはジャブを…」なんて気はなく、いきなりKO狙いのストレートだ。風を切ってミットを鳴らし「148キロ!」と児玉澪音マネジャー(2年)の声が響く。カメラスタッフには内緒にしていた「早坂君、軽く投げていいよ。今の時期はケガしないことが一番」の助言は無視された。「常に全力投球」。投手歴1年でプロ志望届を提出するまでに成長した男の、譲れないポリシーだった。

 やっかいなムービングファストだ。右打者方向にインステップのフォームで投じるため、斜めの角度で本塁へ向かってくる。しかも回転はランダム。ホップする球質もあればシュートすることも。外角に決まった一球はカットボールのように動いて捕手のミットをはじき飛ばした。捕ることすら困難な「魔球」。今後、意図的に操ることができれば唯一無二の強みになる。

 カウント球になるスライダーは一級品。球速は130キロを超え、かつ変化量が多い。この2つの要素を備えるスライダーを持っている高校生は全国でもまれだ。一方、課題は投手経験の浅さから来る制球力。高校野球よりやや狭まるプロのストライクゾーン、打者の「カット能力」も高くなるプロの世界で戦うためには、さらなる成長が必須だ。ただ、そこは「投手1年目」。伸びしろは大いにある。ドラフト指名される価値があると、充実の34球で確信した。

 投手転向1年で最速151キロに到達した成長力は無類だ。中学時代は目立つことのない捕手で「人数が多い野球部で高校野球を満喫しよう」と進学。昨秋、柳田監督の勧めで投手に転向し、進路は大きく変わった。「高校に入る時はプロなんて考えはなかった。人生何があるか分からない」と本人も驚く成長曲線。投手歴1年でプロの扉を開けば、全国の高校球児に勇気を与える存在になる。(柳内 遼平)

 ◇早坂 響(はやさか・おと)2005年(平17)7月26日生まれ、千葉県松戸市出身の18歳。小1から高塚新田ラークスで野球を始める。松戸五中では軟式野球部に所属。幕張総合では1年秋からベンチ入り。50メートル走6秒3。憧れの選手は日本ハム・伊藤。名前は「自分で考えて生きる子に」とAuto(自動の)が由来。1メートル76、68キロ。右投げ右打ち。

 ≪人生変えた柳田監督との出会い≫昨秋、捕手としてのスローイングの良さに注目した柳田監督が、投手転向を勧めた。指揮官が信頼を寄せ、プロ選手やドラフト候補選手を指導するスポーツトレーナー・北川雄介氏の指導を受けると才能が開花。最適なフォーム改善が異例の成長スピードを生み出した。昨冬には両親に「プロを目指す」と宣言。当初は本気だと思われていなかった。だが今夏、幕張総合を初の16強に導くなど猛アピール。11球団の調査書が届きドラフト指名は濃厚。「柳田監督、北川さんがいなかったら150キロは投げられなかった」。人との出会いが人生を変えた。

 【取材後記】早坂のスライダーは真横に滑るように曲がった。だが、それ以上に滑った「事件」が勃発した。当企画は投球終了後に「ストライクポーズ」の2ショットを撮影することがお決まり。「足元から上にカメラを向けたところで“ストライク!”と言ってください」と動画カメラマンが注文。そこで記者は早坂に「ここでボール!って言ったら大爆笑間違いなしだね」とささやいた。早坂もニヤリと笑い「同意」した。

 真剣な表情のカメラマンに向かって2人で「ボール!」と叫んだ。期待した笑い声はなく、カメラマンから冷たい視線を浴び、完全に滑った。26日のドラフト会議。「滑る」ことなく、名前が呼ばれてほしいと心から願う。(アマチュア野球担当・柳内 遼平)

 ◇柳内 遼平(やなぎうち・りょうへい)1990年(平2)9月20日生まれ、福岡県福津市出身の33歳。光陵(福岡)では外野手としてプレー。四国IL審判員を経て11~16年にNPB審判員。2軍戦では毎年100試合以上に出場、1軍初出場は15年9月28日のオリックス―楽天戦(京セラドーム)。16年限りで退職し、公務員を経て20年スポニチ入社。同年途中からアマチュア野球担当。

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