【内田雅也の追球】けん制練習で表れた1年前との「差」 リズムの合った呼吸に成熟したチームの姿を見た

2024年02月07日 08:00

野球

【内田雅也の追球】けん制練習で表れた1年前との「差」 リズムの合った呼吸に成熟したチームの姿を見た
二塁けん制の練習をする伊藤将(右)ら Photo By スポニチ
 沖縄・宜野座の阪神キャンプは第2クールに入り、初めて二塁けん制練習が行われた。サブグラウンドに投手陣と二遊間の野手が集まり、けん制を繰り返した。
 昼下がり。何となくのどかで、穏やかな光景を眺めながら1年前を思い出していた。

 昨年、同じ二塁けん制練習を初めて行ったのは2月5日、宜野座ドーム内だった。監督・岡田彰布が激怒していた。臨時コーチを務めた赤星憲広(本紙評論家)もその光景を見ていた。

 岡田は「全くダメ」と吐き捨てるように言ったのを思い出す。「まだまだやわ。毎日やらなあかん。呼吸よ。呼吸が合わへん」
 昨年は中野拓夢を二塁にコンバートしていたこともあるだろう。とにかく投げる投手と二塁カバーに入る二塁手・遊撃手のタイミングが合わなかったようだ。

 「息を合わせる」のは難しい。比叡山延暦寺の大阿闍梨(だいあじゃり)、酒井雄哉は地球一周にあたる4万キロを7年かけて歩く千日回峰行を2度満行した。著書『この世に命を授かりもうして』(幻冬舎ルネッサンス)にある。「人と歩くと歩きづらいのは相手に合わせるから。でも何となく合う人もいる。歩くリズムが合う人は呼吸のリズムも近い。『息が合ってる』という。昔の人はわかっていたんだね」

 毎日歩き続ける行者だが「誰にでも通用するコツなんかない」として「とにかく呼吸を合わせることですよ。そうしたら足が自然に前に進みますよ」と話している。やはり「息を合わせる」わけである。

 その点では今年は初日から見事に息が合っていた。臨時コーチ・鳥谷敬もただ見守っているだけだった。何も言うことはなかったのだろう。

 ヘッドコーチ・平田勝男も昨年を思い出していたそうだ。「去年は大変やったなあ。監督が“毎日やらせろ!”と言ってなあ」と苦笑いする。「今年? 呼吸が合ってたやろ。別に何の問題もなかったよ」

 岡田も分かっていたのだろう。けん制練習には見向きもしなかった。放っておいても大丈夫と信じているのだ。1年前とは天と地ほど差がある。

 酒井の言葉を借りれば投手―野手の「呼吸のリズム」が合っていたのだろう。チームとして成熟した姿を見た気がしている。 =敬称略=
 (編集委員)

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