【内田雅也の追球】那覇で開幕前哨戦の意味 歓声が響く球場で、野球ができる平和をかみしめた

2024年02月24日 08:00

野球

【内田雅也の追球】那覇で開幕前哨戦の意味 歓声が響く球場で、野球ができる平和をかみしめた
奥武山公園内に建つ島田叡氏顕彰碑 Photo By スポニチ
 【オープン戦   阪神4ー9巨人 ( 2024年2月23日    セルラー那覇 )】 朝、早めにホテルを出た。阪神は今春初のオープン戦を奥武山公園の沖縄セルラースタジアム那覇で行う。公園内に建つ「島田叡(あきら)氏顕彰碑」を訪ねた。
 島田は沖縄が激戦地となることが必至だった1945年(昭和20)1月、官選で沖縄県知事となった。「オレは死にとうないから誰か行って死ねとはよう言わん」と決死の覚悟で拝命を受けた。県外への疎開や台湾からの食糧確保に尽力し、多くの県民の命を救った。「島守」と呼ばれる。

 碑の除幕式は2015年、島田が摩文仁で消息を絶った6月25日に行われた。翌16年2月、建設活動の中心だった元沖縄県副知事、嘉数昇明に案内してもらった。以来、8年ぶりの訪問だった。

 沖縄野球の聖地と言えるこの地に建てたのも意味がある。島田は神戸二中(兵庫高)―三高(京大)―帝大(東大)を通じ、野球人だった。三高時代の球友が「劣勢を知りつつも何とかならないかと知恵を絞り、全力を傾ける。叡さんは生涯それを実行した」と回想する文を記している。

 さて、試合の相手は巨人だった。3月29日、開幕戦の相手である。今回のキャンプ序盤、阪神監督・岡田彰布から「別にわざわざ沖縄で巨人とやらんでもええのになあ」と漏らすのを聞いた。開幕前哨戦は手の内を見せたくはないし、何かと気を使うものである。

 ちなみに、沖縄で巨人と対戦するのは2012年2月19日、同じ那覇で行って以来、2リーグ分立後2度目だった。前回は球場の大幅改修後のお披露目の意味があった。

 ただ、試合内容をみれば、そんな心配も無用だった。先発・伊藤将司がまさかの初回7失点と打ち込まれたが、2、3回は3人で締めた。先発メンバーには主力を並べたが、彼らには結果を求めてはいない。一方、相手の巨人は若手主体のメンバーで、前哨戦といった意味合いは消えていた。

 だから岡田も試合後、巨人について「こんなメンバーで知らんやん」と素っ気なかった。

 1万5000人収容のスタンドはほぼ満員の1万4581人が詰めかけた。歓声が響き、球春到来の喜びが満ちていた。

 島田は自身の署名には野球のボールを書き込むほど情熱は相当だった。きょう24日は一昨年、ロシアのウクライナに軍事侵攻した日である。野球ができる平和を思う一戦だったと記憶しておきたい。 =敬称略=
 (編集委員)

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