【内田雅也の追球】貧打がもたらす正念場 「型通り」でダメなら、「型破り」でいくか

2024年05月31日 08:00

野球

【内田雅也の追球】貧打がもたらす正念場 「型通り」でダメなら、「型破り」でいくか
4回の攻撃前に円陣を組む阪神ナイン(撮影・大森 寛明) Photo By スポニチ
 【交流戦   阪神0-6日本ハム ( 2024年5月30日    甲子園 )】 阪神打線は相当な重症である。今月21日から10日間の試合ごとの得点を並べてみると、
 2、2、2、0、3、1、2、0

 と8試合で12点。1試合平均1・5点という惨状である。

 問題は長引く貧打が好調だった投手や堅実だった守備にも悪影響を及ぼそうとしていることだ。

 先発の西勇輝は立ち上がり好調に見えた。ところが、ひとたびピンチを迎えると「1点もやれない」重圧からか、力みや焦りが見えた。

 4回表先頭、4番のアリエル・マルティネスに二塁打を浴び、得点圏に走者を背負うと、投球が高く浮いた。松本剛に左前打され無死一、三塁。迎えた打者が投手の山崎福也だった。

 打撃のいい山崎を日本ハム監督・新庄剛志は「6番を打たせる」と予告していた。とっぴと映る用兵に意識過剰にもなろう。2回表には四球を与えていた。この時も外角高め直球を中前打されて先制点を献上した。

 続く無死一、二塁での投前送りバントを三塁へ悪送球し、追加点を与えた。守備には定評ある西勇だが、バウンドが高く、間一髪の送球で焦った。記録は野選と失策。前夜も木浪聖也が野選・悪送球で失点している。

 さらに右前2点打も浴びて計4失点。無念の降板となった。2番手の浜地真澄も失策も絡んで2失点。連夜の大量失点となった。

 打線は相変わらずだ。山崎の軟投に翻弄(ほんろう)された。特に外角へ逃げながら沈むチェンジアップがある右打者は対応が難しかった。3番に抜てきした小野寺暖は3打席連続三振と期待を裏切った。試合前まで山崎は今季、対右打者の被打率が・194、対左打者が・290。左打者の方が好相性だった。

 4回裏攻撃前に円陣を組んでも、大山悠輔がバットを指1本分短く持っても事態は変わらなかった。観衆は今季最多となる4万2614人。猛虎党は5回表から降り出した雨にぬれ、ため息と嘆き声が銀傘に響いた。

 正念場である。正念場はもとは歌舞伎用語で、主人公がその役の性根、役柄を発揮する最も重要な場面をいう。性根や心根が問われている。

 歌舞伎には「型」がある。「型通り」でダメなら「型破り」でいくか。誰もが危機感を持つ時で、なりふり構ってはいられない。 =敬称略=
 (編集委員)

おすすめテーマ

2024年05月31日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム