【スポニチスカウト部(27)】関東第一・坂井遼投手 甲子園で人生激変 スカウト評価急上昇の魅力は

2024年09月03日 06:00

野球

【スポニチスカウト部(27)】関東第一・坂井遼投手 甲子園で人生激変 スカウト評価急上昇の魅力は
今夏の甲子園で関東第一を初の準優勝に導く活躍を見せたエースの坂井
 今秋のドラフト候補となる選手にスポットを当てる「スポニチスカウト部」。アマチュア担当記者の独自目線による能力分析とともに、選手の素顔を紹介する。第27回は関東第一(東京)のエース・坂井遼(はる)投手(3年)。今夏の甲子園大会で準優勝に導くなど、スカウトの評価を急上昇させた最速151キロ右腕の魅力とは。
 その名を全国にとどろかせた夏だった。今夏の甲子園では自己最速を2キロ更新する151キロを計測するなど、登板するたびに成長を示してチームを初の準優勝に導いた坂井。全5試合に救援登板して計18回2/3を防御率0・00と圧巻の成績を残し、U18日本代表にも選出された右腕は「甲子園は人生を変えてくれて、本当に楽しい場所でした」と駆け抜けた夏を振り返った。

 自身も驚くほどの成長曲線を描いた。今春の選抜では開幕戦で八戸学院光星(青森)に延長11回タイブレークの末に敗退。坂井も2番手として登板したが、9回に1点のリードを守れなかった。だが、この敗戦から「ストレートが速いだけでは全国では通用しない」と感じ、直球頼みだった投球スタイルを見つめ直した結果が夏の好投につながった。

 選抜以降はスライダーやカーブ、チェンジアップといった変化球の精度アップに取り組んだ。また、同じ直球でも「球速差をつけることで、ここぞで速く感じさせることができれば」と130キロ台、さらには120キロ台で投げる練習を繰り返した。甲子園でも遅い直球でカウントを稼ぐ場面が多く見られ「春以降に取り組んできた投球スタイルが形になってきた」と手応えをつかんでいた。

 京都国際との決勝では、初の延長タイブレークにまでもつれた10回無死満塁から、押し出し四球を出したところで無念の降板。外角低めに外れた147キロ直球が最後の一球となり、「全力で投げたので悔いはありませんが、あの場面で投げきれる投手になりたい」と次のステージでの雪辱を誓った。熱い夏の戦いの後は日の丸を背負った戦いも待っている。「全力で楽しんで投げる姿を見せたい」。プロへの扉も開くため、まだまだ腕を振り続ける。 (村井 樹)

【担当記者フリートーク】 初優勝こそ逃したが、決勝戦後の坂井は晴れやかな表情で語り出した。「甲子園の土は凄く持ち帰りました。後輩たちのためではありませんよ」。囲んでいた記者からも笑いが起きたが、思い出のためではなく、理由もはっきりあった。

 「少年野球の子とかにあげようかなと。本当だったら自分で行って取ってほしいんですけど、高校野球は楽しいので、それを今のうちから伝えたいなと思って」。年々減少する野球人口を危惧しての発言だった。

 坂井の願いを受け取った野球少年がまた、甲子園を目指して白球を追い続ける。100年続く甲子園が、どの時代でも高校球児の憧れである理由を感じることができた瞬間だった。 (アマチュア野球担当・村井 樹)

《母の支えに感謝》 小3から2人で暮らす母・一恵さん(43)にとっても特別な夏となった。毎試合、アルプス席最前列から声援を送り、決勝戦後は「立派になってくれた」と涙ながらに語っていた。中学時代は一緒にキャッチボールをするなど、常に味方でいてくれた母。坂井も大好きだからこそ「母のおかげでここまで成長できた」と感謝を伝えた。息子がU18日本代表に選出されたことを知ると「パスポートを取らないといけないですね」と喜んだ一恵さん。特別な夏はまだまだ続きそうだ。

 ☆球歴 小5から富里リトルスターズで野球を始め、富里中時代は江戸川南ボーイズに所属した。関東第一では1年秋からベンチ入りし、甲子園には2度出場。憧れの選手はドジャース・山本。

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