映画『スリープ』主演チョン・ユミが惹かれた監督の一言「これはホラー映画の皮を被った愛の物語なのです」

2024年07月23日 19:00

 

「夫婦関係が破綻するかも…」という恐怖を描きたかった

――本作はスリラーというジャンルでありながら、これまでに無い展開が魅力的ですね。

ユ・ジェソン監督:僕自身が怖い映画が苦手ということもあるのですが、必要の無い場所で大きな音を出して驚かせる様な演出にはしたくないと考えていました。韓国には、ナ・ホンジン監督の『哭声/コクソン』、チャン・ジェヒョン監督の『パミョ(破墓)』などストーリーが素晴らしいホラー映画がたくさんあります。僕もそんな作品を作りたいと思いました。

――どのようなアイデアから生まれた物語なのでしょうか?

ユ・ジェソン監督:まず、この作品の脚本を作っている時に僕自身が結婚を控えていたことがあり、結婚や夫婦について考える時間が多くありました。そこで本作ではおかしな現象への恐ろしさと共に、「結婚が破綻するかもしれないという恐怖」についても描いています。

僕が結婚についてロマンスを感じていた時期だけに、「この2人(ヒョンスとスジン)の結婚生活が壊れてしまったらどうしようか」と怯え、どうすればこの夫婦関係が強固なものになるのかということを考えていました。映画の中では、2人の愛は明らかにそこに存在しているのですが、外から何らかの影響を受けたことによってその夫婦関係が壊れるかもしれないという状況を描いています。その外部からの恐怖に対して2人がどんな行動を取れば、解決出来るかというところも二次的なテーマでした。

――おっしゃる通り、登場キャラクターはほぼこの2人で、夫婦の絆が試される瞬間もありますよね。また“睡眠時”という無防備なシチュエーションというのも効果的に恐怖を与えてくれていると思います。

ユ・ジェソン監督:睡眠と結婚の本質はとてもよく似ていると思っています。「明日には必ず目が覚めるだろう」と当たり前の様に、無防備に信仰しているような状態です。この映画はそうした“信仰”をひっくり返して、最も信頼できる人のそばで、最も無防備でいる時間を、最も恐ろしい時間に変えています。それと同じ様に、結婚や夫婦というものも「“お互いが相手を誰よりも信頼し、最も無防備な状態から守ってくれる存在」と信じていることになりますよね。「自分が一番信頼している人が、実は一番危険な存在なのかもしれない」という、改めて考えると怖くなってしまう様な事実も描いています。
 

宝くじが当たったかのよう 奇跡的なキャスティングの背景

――チョン・ユミさんと、イ・ソンギュンさんのお芝居も本当に素晴らしかったです。

ユ・ジェソン監督:今回のキャスティングはまさに奇跡的だったと思います。シナリオを完成させた後に、プロダクションカンパニーとの代表と話し合いをしている時に、「実現は無理かもしれないけれど、あなたが思う夢のキャスティングは?」と聞かれました。つまり、その主人公2人を誰にしたいかということなのですが、僕は「チョン・ユミさんと、イ・ソンギュンさんです。もしその2人がこの役を演じてくださるのであれば、もうそれ以上の夢はありません」と答えました。もちろん、とても著名で多忙なお2 人ですし、代表の方も交渉は難しいとは思いながらも「ベテランの俳優さんの場合、新人の監督であってもシナリオが面白ければ可能性はある」と思ったそうです。ダメ元でもオファーしてみる、聞いてみるのは無料ですから(笑)、交渉に入ってくださいました。そうしたら、お2人がシナリオを気に入ってくださって出演しますと応じてくれました。本当に宝くじに当たったかの様な想いでした。

――素晴らしいですね。

ユ・ジェソン監督:チョン・ユミさんは、シナリオは気に入ってくださったのですが、「1つ難点があるとしたらホラーが苦手なので怖いシーンを演じることに不安があります」とおっしゃっていて。そこで私が「実はこれはホラー映画の皮を被った愛の物語なんです」とお伝えしたところ、その説明が印象深かったそうで、(チョン・ユミさんが応えている)他の取材でも「監督のその言葉で出演を決めました」と語ってくださっています。

イ・ソンギョンさんの方も、「この若い夫婦の旦那さんを演じるには自分が年を取り過ぎているのではないか」と心配されていましたが、僕は「イ・ソンギョンさんの様なカメレオン俳優ならば心配はありません。誰よりも素晴らしく演じてくださると思います」とお伝えしました。もちろん僕の言葉だけが大きかったわけではなくて、周りの方の尽力があってからこそですが、お2人が出演してくれたことが本当にありがたかったです。

――監督の熱意や想いがきっと伝わったのでしょうね。

あと、チョン・ユミさんとイ・ソンギョンさんさんは2人である約束をしていたそうなんです。2人はこれまでホン・サンス監督という韓国の名匠の作品に4本ご一緒しているのですが、「ホン・サンス監督の作品はもちろん、別の映画でもご一緒したいですね」と話していたそうです。そして今回この『スリープ』という作品で共演を果たしたわけですが、僕がそんなお2 人の約束を叶える手伝いが出来たのだとしたら、とても嬉しいです。



(取材:中村梢)

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