日本代表 過去一番きついタックル練習&展開の「予測」で大幅進化 8日W杯イヤー初戦

2023年07月04日 05:30

ラグビー

日本代表 過去一番きついタックル練習&展開の「予測」で大幅進化 8日W杯イヤー初戦
8日の今季初実戦でタックル練習の成果を魅せられるか(左は下川、右はリーチ) Photo By スポニチ
 【More W杯】ラグビー日本代表は、いよいよ8日にW杯イヤー初戦となるオールブラックス・フィフティーン戦(秩父宮)を迎える。スポニチではW杯本番を含む期間限定で、リーグワン静岡ヘッドコーチの堀川隆延氏(49)が解説者を務める。8日の“デビュー戦”を前に、6月の千葉・浦安合宿で第2クールまでスポットコーチを務めた同氏が、話題となったタックルセッションの中身や、選手、スタッフ陣の進化をリポートする。
 多くの選手が「過去一番きつい」と声をそろえた仮設テント内でのタックルセッション。1試合の中で3~4%と言われるドミネートタックル(相手を仰向けに倒すタックル)の割合を上げる取り組みで、コリジョン(衝突)とその後のバトルを徹底的に叩き込もうとするジェイミー(ジョセフ・ヘッドコーチ)の意図を感じた。

 スポットコーチを務めた柔術家のジョン・ドネヒュー氏は、リーグラグビー(13人制)のタックル指導者。13人制は1試合平均で50~60回、最高70回タックルするのに対し、15人制は多くても15~20回程度。数えたところ、選手は1時間のセッションで100%のコリジョンを50~60回行っており、単純計算で3試合分にあたる。数字だけ見ても、非常にタフなセッションであることが一目瞭然だ。

 では具体的にどんな中身だったか。組み合った状態から始める「相撲」は、相手のジャージーをつかめず、力だけでサバ折りして倒しきり、グラウンドファイトまで行う。同氏が21日に相撲見学をした後は、張り手もOKのルールに。選手が顔に傷を負ったのはそのためだ。また「シャーク・ベイト(サメの餌)」と呼ばれる練習は、1人のタックラーが次々と向かってくるボール保持者にタックルを繰り返す。まさにサメが餌を次々と食べるさまだ。

 最後に行う「コマンド」は、3人1組で寝て起きてを繰り返す反復運動。腹ばいになった1人を跳び越えたところで自分が腹ばいになり、逆方向からもう1人に跳び越えられたら起き上がる…を8分間休みなく繰り返す。これらを1時間、水も飲めずにぶっ続けで行う。少しでも力を抜いたり、弱いポーズを取ったりすると、全員で補強トレーニング。メンタルも鍛えられる理由がそこにはある。

 技術面では、正対から同じ肩と足でヒットするなどの基本に加え、ドネヒュー氏はコリジョン後に腰を相手に寄せるということを口酸っぱく言っていた。そうすることで、自分の力を100%相手に伝え、ドミネートが可能となる。そのために、足の運びや位置なども重要で、指導も丁寧だった。2週間のセッションを完走した選手は、今後の実戦で必ず成果を出すはずで、注目してほしい。

 戦術面では世界一のスピードとスキルでスペースを攻略するという、ジェイミーとブラウニー(トニー・ブラウン・コーチ)のラグビー哲学に大きな変化はない。だが一つ上のレベルに行くために、合宿中は「予測」という言葉を何度も耳にした。次にどこにスペースが生まれるのか。経験値のある選手が増え、それが可能になった。スペース攻略のための新しい試みは、オールブラックスXV戦で見られるはずだ。

 2季目を終えたリーグワンは外国人選手の出場枠が増えたことで、フィジカルレベルが間違いなく上がった。どのチームもフィジカル強化に時間を割いており、その中でもまれてきた若手のレベルも上がっている。非常にのみ込みも早く、成長意欲が強い選手ばかり。選手層でも主力と控えの選手の差は、19年よりも詰まっている。

 チームの進化の証明は実戦を待つとして、合宿で見て取れたのはコーチングレベルの向上だ。ミーティングから練習のプロセスが完全にひも付いており、一切の無駄がない。プレビュー、練習、レビュー、アジャスト、共有のスピード感が上がり、1日で全てが完結するから、次の日には新しい取り組みができる。ある日、ブラウニーが「今日の俺のレビューは最高だ」と自画自賛していたが、本当に完璧。だから19年より合宿の期間が短くても、心配はいらない。

 19年大会は明確なターゲットを示さなかったジェイミーも、今回はW杯をエベレストに例えている。4年前は1次リーグ突破が最初のゴールで、選手もジェイミーも準々決勝前に力尽きていたが、今回は違う。エベレストを制覇するためのストーリーをしっかり描き、準備を重ねている。選手に対する一番大切なメッセージだろう。

 ◇堀川 隆延(ほりかわ・たかのぶ)1973年(昭48)7月22日生まれ、宮崎県延岡市出身の49歳。延岡東高からラグビーを始め、早大を経て97年4月にヤマハ発動機入り。現役時代は主にSOでプレーした。05年に引退し、06年に監督就任(1期目)。09年に退任し、10年の復帰(2期目)を経て、19年に三たび監督に就任(3期目、現在の呼称はヘッドコーチ)。17年から日本代表でスポットコーチなどを兼任。愛称はホリさん。

 《堀川氏、17年から断続的に指導》堀川氏は16年に長谷川慎スクラムコーチに入閣を打診するため静岡を訪れたジョセフHCと知己を得て、17年春に代表育成機関であるナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)で初めてコーチに就任。翌18年春にはNDSヘッドコーチを務めた。19年は2~5月に日本代表でコーチ、22年春はNDSでヘッドコーチを務めるなど、断続的に代表強化に関わってきた。17、18年のNDSでは当時ノンキャップだったSH流や斎藤、代表定着前のフッカー坂手やSO松田を指導。「気づいたら(17年に23歳だった)坂手が30歳ですから」と感慨深げだ。

 《宮崎合宿スタート》先月末に千葉・浦安合宿を打ち上げていた日本代表は3日、2次合宿を宮崎市でスタートさせた。代表36人に加え、代表候補からともにフランカーの下川甲嗣(東京SG)とベン・ガンター(埼玉)、WTBレメキ・ロマノラヴァ(東葛)を含めた計39人が参加。W杯代表33人を懸けた争いも最終フェーズに突入する。今後は宮崎を拠点としながら8日から国内で始まる強化試合やテストマッチ計5試合に臨む。W杯ではベースキャンプ地のトゥールーズから1次リーグを行う各地へ移動するため、大会本番を想定した“W杯仕様”で過ごしていく。

この記事のフォト

おすすめテーマ

2023年07月04日のニュース

特集

スポーツのランキング

【楽天】オススメアイテム