【寺尾さらば…担当記者が見た素顔】「稽古が嫌で仕方がない」それでも幕内維持の理由

2023年12月18日 05:30

相撲

【寺尾さらば…担当記者が見た素顔】「稽古が嫌で仕方がない」それでも幕内維持の理由
稽古に励む寺尾 Photo By スポニチ
 若い頃の寺尾は兄の逆鉾と兄弟力士として注目されたが、報道陣にはあまり口を開かなかった。無口な弟に代わって「あいつは今、こうだからね」と広報マンのように話をするのは兄の逆鉾だった。末っ子で母親っ子だった寺尾は“自分は大関、横綱を狙うような力士ではないので”と一歩引くタイプだった。
 器用な力士ではなく、回転の良い突っ張りを武器にした。力士の大型化が進み始めていた時代。110キロ台の体で歴代4位の通算出場回数をマークできたのは、人一倍の稽古量のたまものだろう。ベテランの域に入った頃に「いつも夜になると明日の稽古を休みたいと思っている。稽古が嫌で、嫌で仕方がない」と聞いたことがある。だが朝になると「今日、稽古して明日から休もう」と思い直して稽古場に下りていたという。「そう思うと少し気分が楽になるから」と言っていた。細身の体で幕内の地位を維持するのは本当に大変だったはず。同じ押し相撲で、突貫小僧と呼ばれた富士桜さんは「押し相撲は四つ相撲の3倍稽古しないと15日間戦えない」と言っていたが、寺尾も毎朝、稽古場に来る前のランニングを日課にしていた。

 若い頃の無理がたたったとは思いたくないが、60歳で逝くのは早すぎる。(スポニチOB、東京相撲記者クラブ会友・龍川裕)

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