【レスリング全日本選手権】現役慶大生・尾崎野乃香がパリ五輪代表に王手「ここがゴールじゃない」

2023年12月24日 22:40

レスリング

【レスリング全日本選手権】現役慶大生・尾崎野乃香がパリ五輪代表に王手「ここがゴールじゃない」
女子68キロ級で優勝し、最優秀選手に贈られる天皇杯を手にする尾崎野乃香 Photo By 共同
 【レスリング全日本選手権最終日 ( 2023年12月24日    東京・国立代々木競技場第二体育館 )】 女子6階級で唯一、来年のパリ五輪代表が決まっていない68キロ級で、今年の世界選手権65キロ級女王の尾崎野乃香(慶大)が決勝で森川美和(ALSOK)を7―0で下して優勝。来年1月27日のプレーオフ(東京・味の素ナショナルトレーニングセンター)進出を決め、初の五輪出場に王手を掛けた。POでは世界選手権5位の石井亜海(育英大)と一騎打ちし、勝者が五輪代表に決まる。
 「今大会はゾーンというか、自分じゃないというくらい、凄く研ぎ澄まされている」。前日は1回戦で石井を撃破するなど、準決勝までの3試合に完勝。今大会の大トリを飾った決勝でも、本来は2階級下の62キロ級とは思えない組み力で相手の攻撃を防ぐと、スピードを生かした攻撃で、1―0で迎えた第1ピリオド残り1分から一挙6ポイント。第2ピリオドは互いにノーポイントで逃げ切り、「ここがゴールじゃない」と引き締まった表情で振り返った。

 主戦場は62キロ級。同級で21年に世界選手権初出場を果たし、銅メダルを獲得。翌22年6月の全日本選抜では、東京五輪金メダルの川井友香子を破って優勝。勢いのままに、同年9月の世界選手権で初優勝を飾り、パリ五輪代表に名乗りを上げた。トップレスラーとしては珍しい現役慶大生。セカンドキャリアに向け、文武両道を体現する尾崎には、大きな注目が集まった。

 だが昨年12月の全日本選手権決勝で元木咲良に敗れると、今年6月の全日本選抜でも準々決勝で敗れ、同級での世界選手権出場への道が断たれた。自身は非五輪階級の65キロ級で出場した今年9月の世界選手権で、元木が銀メダルを獲得し、五輪代表に内定。かつて浜口京子に憧れ、「子供の頃からの夢」という五輪出場の可能性は、風前の灯火となった。

 しかし風は灯火を消すことなく、むしろ尾崎の背中を押した。68キロ級の代表だった石井が5位。この結果、日本は出場権は確保したものの、メダルを逃した石井の代表決定は持ち越しとなった。今大会で石井が優勝すれば代表に決まっていたが、2階級上での五輪挑戦を決めてからわずか3カ月で今大会に臨んだ尾崎が1回戦で撃破。POで再び相まみえることになった。

 巡ってきたチャンスをつかんだ尾崎だが、用意周到に準備してきたからこその勝利でもあった。再起を図った年明けには、現状を打破するために日体大などで活躍し、少年クラブで指導する栗森幸次郎氏に師事。慶大湘南キャンパスからも近い同氏の道場で少年らに混じって練習を行うようになると、夏頃には「攻撃力はあるので、ディフェンスをどう磨くかだった」と模索。強豪の山梨・韮崎工高に週1回、出稽古を行うようになった。多くの指導者に恵まれ、起死回生の優勝。「色んな先生が、自分が生徒じゃないのに真剣に指導してくれた。感謝しかない。次も負けるわけにはいかない」と話すと、自然と涙が頬を伝った。

 決戦は約1カ月後の来年1月27日。「このチャンスを絶対につかみ取るつもりで、1カ月頑張る」と尾崎。絶望の淵からはい上がった慶応ガールは、引き締まった表情で宣言してみせた。

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