尊富士 110年ぶり新入幕V 史上最速10場所目で!三賞も総なめ!青森出身の24歳新星が歴史的偉業
2024年03月25日 05:30
相撲
前日の取組で右足首のじん帯を損傷。車椅子で花道を引き揚げ、救急搬送された。「歩けなくて、ダメだと思った」。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)からは休場を勧められたが「この先終わってもいい。ここで休場したら一生悔いが残る」と出場を志願。「気力だけだった」とテーピングで固めて土俵に上がった。鋭い踏み込みは影を潜めたが、痛みをこらえて左四つから渾身(こんしん)の攻め。自らの手で優勝を勝ち取った。
部屋の横綱・照ノ富士の後押しがあった。腰痛の治療で東京へ帰っていたが、最終盤に再び大阪の宿舎に合流。前日夜、搬送先の病院から戻ると「お前ならできる」と激励された。伊勢ケ浜部屋に入門した理由は、度重なるケガや病気を乗り越えて横綱に上り詰めた照ノ富士の「生き方が心に響いた」から。尊敬してやまない横綱からの言葉が、何よりの力水となった。
アマ時代は鳥取城北高、日大と強豪校で活躍も大学2年時の全国学生選手権団体戦決勝など大事な場面でケガがつきまとった。その影響で個人タイトルが獲れず、前相撲からスタートもストイックな性格と反骨心、伊勢ケ浜部屋の猛稽古で心身を鍛え、番付を駆け上がってきた。優勝目前に訪れた右足の試練も、尊富士だからこそ乗り越えられた。
「この部屋じゃなかったらこれだけ勝てない。生まれ変わってもこの部屋に入る」と言ってはばからない。決して大きな体ではないが、立ち合いのスピードと出足に磨きをかけ、初土俵から所要9場所で最速新入幕。その場所で初日から11連勝を飾り60年初場所の大鵬の記録に並ぶと一気に賜杯を抱いた。
先場所、照ノ富士の優勝パレードで旗手を務め「自分でもいつか最高の景色を見てみたい」と言った。夢にまで見た景色が今、目の前に広がった。「記録よりも記憶に残る力士になりたい」と語る24歳。快挙は110年の時を経て達成された。その生きざまはこれからも人々の記憶に刻まれ続ける。
≪青森から駆けつけた 母・桃子さん感激の涙≫尊富士の母・石岡桃子さん(47)は、会場近くでスマホの画面越しに歓喜の瞬間を見届けた。「足(のケガ)が心配で…顔を見て安心したかった」。女手一つで育てた息子を思い、朝9時の飛行機で急きょ青森から大阪へ駆けつけた。「いつもいいところでケガしてきたので、昨日はそれがよみがえってしまった。初めての日本一がこの形で…震えが止まらなかったです」。チケットが取れず、会場に入れたのは打ち出し後。賜杯を抱く孝行息子と支度部屋で対面を果たし、抱擁を交わすと「ホッとしました」と涙を流した。
【尊富士 弥輝也(たけるふじ・みきや)】本名 石岡弥輝也(いしおか・みきや)
生まれ 1999年(平11)4月9日生まれ、青森県五所川原市出身の24歳。家族は母、兄、弟、妹
サイズ 1メートル84 143キロ
相撲歴 5歳から五所川原金木道場で始め、中泊道場、つがる旭富士ジュニアクラブにも通う。木造中―鳥取城北高―日大
戦績 中3で全国都道府県大会3位。高3で全国高校総体3位。大2で全日本大学選抜金沢大会準優勝
しこ名 日本武尊(やまとたけるのみこと)から。「上に立つ人間になる」決意が込められた
趣味 良いにおいのボディークリームやディフューザー集め
愛車 大阪に来てから40万円の電動自転車を購入
好きな食べ物 馬肉料理
好きな女性のタイプ あざとい人
≪尊富士アラカルト≫新入幕 1914年夏場所の両国以来、110年ぶり。十両、幕内連続も2人目
所要 10場所目は両国の11場所目を抜き史上最速。年6場所以降でも貴花田、朝青龍の24場所目を大きく更新。
平幕 22年九州場所の阿炎以来で37人目。
日大 01年秋場所の琴光喜以来。学生相撲出身では22年春場所の若隆景(東洋大)以来。
青森県 97年九州場所の貴ノ浪以来11人目。初代若乃花(10回)、鏡里、2代目若乃花、隆の里(以上4回)ら県勢として38度目。
伊勢ケ浜部屋 備州山、照国、清国、日馬富士、照ノ富士に次ぐ6人目。部屋としては先場所の照ノ富士に次ぎ2場所連続23度目。
幕尻 貴闘力、徳勝龍、照ノ富士に次いで4人目。
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