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【元横綱・稀勢の里コラム】大の里はさらなる飛躍へ“究極の自分の形”追求を

2024年06月05日 07:00

相撲

【元横綱・稀勢の里コラム】大の里はさらなる飛躍へ“究極の自分の形”追求を
夏場所で初優勝した大の里(左)と二所ノ関親方 Photo By スポニチ
 夏場所は弟子の大の里が12勝3敗で優勝しました。独立して部屋を構えて3年。師匠としても新たな一歩を踏み出すことができました。これを機に、私だけでなく、他の力士、スタッフらが大きく成長していければと思っています。
 春場所の尊富士に次いで大銀杏(おおいちょう)を結っていない力士が優勝。これまでも「番付の崩壊」とか「新旧交代」とか言われてきましたが、「自分の形」を持っていない大関陣の不振が影響していることは否定できません。

 これまで場所中の解説コラムなどで何度も指摘していますが、最近は「自分の形」を持った力士が少なくなりました。名横綱、名大関と言われた人は「これだ」という形がありました。対人競技である以上、100回やったら100回相手の出方は違ってくる。絶対的な「勝利の方程式」を持っていないと、どうしていいのかと戸惑い、混乱するリスクが生じます。

 自分の形は、言い換えれば自身の「よりどころ」だと思っています。見失っても戻れる場所があれば、それを信じて戦うことができる。相手も研究し対策を練ってきますが、その上をいくための対策は立てやすいはずです。霧島や豊昇龍の相撲を見ると、相手にノビノビ取らせていることが多く散見されます。相手は怖さもないので全力で立ち合いからぶつかってくる。重要な立ち合いで6割方負けているのではないでしょうか。琴桜も自分の形があれば1、2番は加算できたはずです。相手に合わせて取るスタイルには限界があります。

 自分も若い頃は何も考えず「とりあえず左はずで走って、その流れで」みたいな行き当たりばったりの相撲ばかりでした。だから勝因を問われても、勢いで上回ったとか相手が調子悪かったといった振り返りしかできなかった。大関になってからですからね。左差し、右上手という形を確立してからは成績面でもメンタル面でも安定し、ここさえ修正すれば自分に戻れる発想が自信へとつながりました。

 大の里はまだデビューして1年。優勝の要因は、まわしにこだわらず体圧をかけ続けることができた出足の速さです。現状はそれが自分の形でありますが、相手も一層研究し、今後はマークも厳しくなります。稽古や本場所で体験し学んだことを生かし、究極の形を体にしみ込ませていければと期待しています。 (元横綱・稀勢の里)

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