【スポニチ潜入 大阪発(3)】市和歌山・小園 最大の武器は制球力 心技体を兼ね備えた152キロ右腕
2021年03月16日 08:00
野球
2年秋の時点で最速152キロをたたき出した本格派右腕。その秋の公式戦は11試合に登板して7勝0敗(5完投2完封)、防御率0・79、68回1/3で80奪三振と圧倒的な内容で近畿大会4強入りの原動力となった。巨人スカウト部の水野雄仁参与が「ストレートと同じ振りで内側にも外側にも曲げられる。非常に楽しみな投手。トップクラス」と評価するように、すでに地元・阪神を始め、NPB全12球団がドラフト1位候補にリストアップする今秋の目玉候補だ。
「152キロ」に目が奪われがちだが、特筆すべきは制球力の高さだ。公式戦11試合、計68回1/3を投げて与四死球13、与四死球率1・71。本人も「どんな球種でもストライクが取れるところが持ち味」と自覚する。特に自信を持つ球種はカットボール。「右の外、左の内に使えますし、どの打者が来ても投げられる球種と思うので、自分の中で頼りにしているというか、自信のある球種です」。制球力の高さこそが、小園の土台と言える。
身体能力も高い。握力は右55キロ、左60キロ、デッドリフトは150キロ。そのパワーを生かし、バットを持ってもチームメートでドラフト候補の強打者・松川虎生に遜色ない飛距離を誇る。
実戦形式練習では、自校グラウンドのバックスクリーンを軽々と越える推定飛距離140メートルの特大弾を放ち、周囲の度肝を抜いたことがある。「当たれば松川級ですよ。当たらないですけど」とは岩本部長。投手の投球動作と打者の打撃動作には共通点があると言われる。理にかなった体の使い方ができる選手は速い球を投げることができ、なおかつ遠くに打球を飛ばすこともできる。その代表選手が大谷翔平(エンゼルス)だろう。「152キロ」と「140メートル」はバランスよく体を扱えていることの証明だ。
「野球の怖さ」も肝に銘じている。初めて甲子園で観戦した高校野球の試合は14年夏の甲子園大会1回戦、市和歌山―鹿屋中央戦。1―1の延長12回1死一、三塁のサヨナラ機で鹿屋中央9番打者の打球は二塁手の前へ。中間守備隊形だった市和歌山の選択肢は本塁への送球か4―6―3の併殺だったが、あせった二塁手は一塁へ送球。三塁走者の生還を許し、サヨナラ負け――。あの一戦だった。
「あの試合を見て、甲子園というのは夢もあると思いますけど、一つのミスが命取りだなと思いました」
好きなプロ野球選手はソフトバンク・和田毅。「ストレートの切れがすごくいい投手と思うので。そういうところが好きです」。世代もタイプも違うが、理由を聞くと納得できる。「ソフトバンクのファンで、小さい頃ファンクラブにも入っていて。けっこう和田投手の試合とか見に行っていました」。そして座右の銘は「エースたるもの」だ。「(試合中に)調子が悪くて弱音を吐いたことがあったんですが、試合後に監督さんから“エースたるもの、弱みを見せるな”と言っていただいて。それを肝に銘じています」と表情を引き締める。
「新チームが始まってから日本一を目指してやってきました」。目指すは高校日本一。その先に最高峰の舞台を見据える。(文=惟任 貴信、動画撮影=平嶋 理子)
◆小園 健太(こぞの・けんた)2003年(平15)4月9日、大阪府貝塚市出身。中央小1年から「R.I.C.A」で野球を始め、貝塚一中では「貝塚ヤング」に所属して3年夏の全国選手権制覇。市和歌山では1年春からベンチ入り。50メートル走6秒7、遠投120メートル。1メートル84、90キロ。右投げ右打ち。
※市和歌山・小園投手の動画は「スポニチチャンネル」において配信中です。
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