藤浪の挑戦、間違ってはいなかった 通訳兼トレーナー鎌田一生氏が明かす奮闘ぶり

2023年12月05日 05:15

野球

藤浪の挑戦、間違ってはいなかった 通訳兼トレーナー鎌田一生氏が明かす奮闘ぶり
藤浪(右)と鎌田トレーナー(鎌田氏提供) Photo By 提供写真
 藤浪晋太郎投手(29=オリオールズからFA)のメジャー1年目に通訳兼パーソナルトレーナーとして同行したのが鎌田一生氏(41)だった。4日、本紙の取材に応じ“チームFUJI”の一員となった経緯や藤浪の異国での奮闘ぶりなどを明かした。 (取材・構成=遠藤 礼)
 1月中旬にオークランドで開かれたアスレチックス入団会見。藤浪が親への感謝などを盛り込み、「富士山さんのようにフジと呼んで」と自己紹介した英語でのロングスピーチは鎌田氏と練って準備した。実は当初はもっと簡素な文面だった。藤浪の代理人と鎌田氏の間で「(藤浪なら)もっとできる」で一致して長くなった。現地でも称賛され、すぐにア軍で同僚となる数選手が藤浪のSNSをフォロー。「ナイス、スピーチ。よろしく」などメッセージが届いた。

 合流後も幼少期に英会話に触れていた藤浪に“英語の壁”はなかったそうだ。「英語力も上がるし、必要な時以外はほったらかしにした。仲間もそういう晋太郎の姿勢を受け入れてくれた」。渡米前に同代理人から「メジャーに行く日本人選手は英語ができないというイメージを変えていこう」とミッションを託された。「スタバで注文できるし、服も1人で買いに行ける。私生活はほとんど困らないレベルになっている」。言語の面でも29歳の“ルーキー”はメキメキと力をつけていった。

 13年から5年間の阪神在籍時にトレーナーとして接した藤浪からメジャー挑戦の意思を聞いたのは昨年10月だった。直後、妻との会話で事態は動き出した。「通訳とかトレーナー連れていかないのかな?」「たぶん連れていくやろうな」。それで終わっていれば、この1年はまた違ったものになっていた。妻の次の一言がすべてを変えた。「聞いてみたら?困ってるかもしれないじゃない」

 当時はオリックスのトレーナーで、夏前には自身のジムも完成していた。仮に渡米となれば家庭にも大きな負担をかけてしまう。そんな懸念に妻は「必要とされるなら行ってあげたら?(家庭のことは)何とかするよ」と首を振った。

 その数日後、電話越しの「いいんですか?お願いします」という藤浪の言葉で通訳兼パーソナルトレーナーという肩書で“チームFUJI”入りが決まった。高校卒業後に米国へ留学。オレゴン州立大の大学院に2年間通った後、インディアンスでトレーナーを務めた経験もある。語学堪能で日米のトレーニング知識も豊富。一人二役は適任と言えた。

 トレーナーとしては来季へ課題を残した。オリオールズでは中継ぎに転向。日々の調整で瞬発系のメニューを増やした一方、連投を考慮して負荷を抑えたことで不調に陥ったシーズン最終盤は筋肉量が落ちていた。「晋太郎の身体では、この負荷では足りてなかったのかな、と」。目の当たりにした「FUJI」のパフォーマンスはやはりメジャー級で、「能力のすべてを出し切ってないのにメジャーのトップクラスのところにいると思う。ポテンシャルを限界まで引き出してあげられるような取り組みをしてあげたい」と来季を見据えた。

 オリオールズが9年ぶりの地区優勝を決めた9月下旬の夜。シャンパンファイト後にチームはバーを貸し切ってパーティーを開いた。他の選手が妻子、ガールフレンドなどを同席させたアットホームな場。救援陣のテーブルで会話を弾ませる藤浪を見つけた。「自分は広報の人たちと飲んでたけど、晋太郎は中継ぎ陣と飲んでいた。一切、通訳もしてない。凄くなじんで。どこのチームに行っても、大丈夫だなと」。藤浪の挑戦が間違っていなかったと思えるシーンだった。

 ▽藤浪のメジャー1年目
 ポスティングシステムを利用して1月14日にアスレチックス移籍が決定。開幕ロースター入りし、4月1日のエンゼルス戦でメジャー初登板初先発して大谷に適時打を浴びるなど2回1/3を8失点で敗戦投手。開幕から4戦4敗で中継ぎに配置転換された。5月12日のレンジャーズ戦で移籍後初勝利。球宴後の7月19日にア・リーグ東地区首位のオリオールズへ交換トレードで移籍した。8月6日のメッツ戦ではメジャー日本投手最速を更新する102.6マイル(約165.1キロ)を記録。オフにFAとなっている。通算成績は64試合で7勝8敗2セーブ、防御率7.18。

おすすめテーマ

2023年12月05日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム