飛ばないバットでセンバツが変わる!飛距離10メートル減か? 26日出場校発表

2024年01月25日 05:00

野球

飛ばないバットでセンバツが変わる!飛距離10メートル減か? 26日出場校発表
新旧バット比較 Photo By スポニチ
 第96回選抜高校野球大会(3月18日から13日間、甲子園)の出場校を決める選考委員会が26日、行われる。今大会から日本高野連が22年2月に決定した、事故防止を目的に従来より細く、素材が厚い低反発の新基準の金属バットに完全移行。高校野球の大きな転換点になる可能性もある新バットの対策と影響を、出場を当確としているチームに聞いた。(取材・構成=村井 樹)
 従来のバットより約10メートル飛ばなくなるといわれる新基準バット。選抜出場を当確とし、連覇を目指す山梨学院の吉田洸二監督は「単純に接戦が多くなる。ここで一本出ていれば、ここで抜けていればというのが抜けなかったりするのでは。3、4点でも(逆転は)難しくなる」との思いを強めている。

 昨秋は接戦を勝ち抜き、関東大会で準優勝。徹底的に相手を分析して導き出した守備シフトが、勝負どころで当たり勝利をつかんできた。「関東で勝った要因は守備位置のデータ。しかし、このバットでのデータが今はない。どのぐらい(打球が)飛ぶのか。守備位置も分からない」と頭を抱える。

 試合での対応が求められる一方で「レギュラー選びも変わってくるのでは」と、チーム編成の変化という新たな見方も示した。長打が減ることが予測され「足の速い子を使ってみようとか。低反発のバットで(外野の頭を越える)二塁打を打つのは難しいが、四球を選べて盗塁できれば二塁打と同じになる」とした。長打力がなくても、選球眼に優れた俊足選手の起用が多くなる可能性があり「指導者の考え方や教え方でも差が出てくると思う」と話した。

 「投手有利」の視点を強調したのは、昨秋の関東大会で4強入りした常総学院(茨城)の島田直也監督。横浜(現DeNA)などで活躍した元プロ投手らしく「思いきって内角を使える投手が増えるのでは」と分析。メンタル的にも投手有利の流れになっていくと予測し「今までは内から少し甘く入ったら一発の怖さがあったが、このバットはそこまでない。そういう点からも投手が思いきって投げられるようになるので、投手力が高いチームが勝っていくのでは」との見通しを示した。

 重大事故防止の観点から取り入れられる新基準バット。ただ、特に公立校にとっては厳しい現実もある。バットの価格は従来のバットより1万円以上も高い約4万円。予算が限られる学校にとっては、まとめての購入は大きな負担になる。21世紀枠候補の9校に選出された仙台一(宮城)の千葉厚監督は「厳しいですよね。なので練習では新バットをあまり使わず、木で打たせるようにしている」と明かした。

 一方で、公立校と私立校の差が出にくくなるという考えもある。県立の清峰(長崎)時代にも選抜優勝の経験がある山梨学院・吉田監督は「(予算的には)つらいと思うが、僕が公立の監督だったら間違いなく大歓迎する」と言った。「接戦が増えるということは番狂わせが増える。強豪私立に勝つチャンスは間違いなく多くなる」。完全移行する今大会で「飛ばないバット」が何をもたらすか。高校野球の新時代の幕開けとなる可能性を秘めている。

 ≪より木製に近く…花巻東・佐々木麟太郎の高校通算140発は更新不可能?≫新金属バットは最大直径がこれまでの67ミリ未満から64ミリ未満と3ミリ細く、打球部の素材がこれまでの3ミリから4ミリ以上と厚くなる。日本高野連の実験数値では平均打球速度が6・3キロ低下するとされ、飛距離では10メートルほど減るとの見解がある。

 最大目的は主に投手の事故防止。19年夏の甲子園で、打球が岡山学芸館の投手の顔面に直撃して頬骨を骨折するなど、近年の打撃技術の向上とともに守備側のケガへの懸念は増していた。73年に登場し甲子園大会では74年から使用が認められた金属バット。01年に重さ900グラム以上、最大径67ミリ未満の基準が設定されたが、今回の低反発化は導入以降最大の変革となる。

 昨年、花巻東(岩手)の佐々木麟太郎(3年)がつくった、歴代最多とされる高校通算140本塁打の更新は極めて困難に。一方で新基準で木製バットにより近くなり、打者の技術向上につながるとし「野球界全体としては良かったのでは」とする指導者は多い。

 ≪強打が武器の作新学院「これからは守り中心」≫昨秋の関東大会決勝で、大会記録となる28安打をマークして優勝したのが作新学院(栃木)。強打を武器に明治神宮大会でも準優勝したが、小針崇宏監督は「これからは守り中心で、少ないチャンスを拾うことができるチームが勝っていくのでは」と今後を見通した。打撃は芯で捉える練習を重ねることが重要とし「今まで慣れてきた金属バットとは違い、しっかり芯で捉える訓練をしないと」とテーマを掲げた。

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