【中日1位金丸・特別連載】「甲子園は無理や」無名の高校時代、突如の覚醒導く「合宿とコロナ」

2024年10月27日 08:00

野球

【中日1位金丸・特別連載】「甲子園は無理や」無名の高校時代、突如の覚醒導く「合宿とコロナ」
高校時代は小柄で無名と言える投手だった神港橘時代の金丸 Photo By 提供写真
 ドラフト1位で中日が交渉権を獲得した関大・金丸夢斗投手(4年)の足跡を振り返る特別連載。第2回は、地元の公立校・神港橘(兵庫)で過ごした高校3年間に迫る。
  ◇  ◇  ◇

 神港橘に進学した当時の夢斗は、最速120キロ程度の小柄な左腕だった。その眠ったままの才能に、いち早く気が付いたのが神港橘の安田涼監督(当時)である。中学3年の夢斗が同校の部活動体験に訪れたときのこと。ブルペン投球を見ると、直球のスピン量に驚かされた。「どういう感覚で投げているの?」。そう尋ねると「球をひっかくようにして投げています」と答えた。「この感覚を持っているのか…。身体さえできれば凄い投手になれる」。そう確信して入学を熱望していた左腕は、私立校からの勧誘を受けることもなく同校にやって来た。

 高校時代の夢斗は、同僚と比べても身長が頭一つ小さかった。食事量を増やすことが苦手で身体の線も細かった。初めて背番号1を与えられた2年秋の兵庫大会は地区予選で敗退。殻を破れないまま最終学年を迎えようとする夢斗を、安田監督は厳しく突き放した。

 「いま見えているような道を進んでいっても(明石商の)中森や来田には一生追いつかれへんで。想像を超える成長を目指さないと甲子園も無理やろな」

 この秋の敗戦後に転機が続いた。冬場、スポーツ栄養指導を行う企業が主催する「食トレ投手合宿」に参加するも、提供された食事量に全くついていけなかった。栄養士が「こんなに食べられない子もいないよ…」と頭を抱えるほどだったと言う。合宿内では、ある指導者から伝えられた。「投げる球は一級品。ちゃんと食事を取ってトレーニングをすれば、いつかプロを目指せる投手になれるよ」。食事の重要性と自らの潜在能力に気付き、本格的に土台強化に着手するようになった。

 体つきが変わり始めた矢先、新型コロナウイルスの感染拡大で部活動が停止に追い込まれた。夢斗は、その休校期間に生まれた時間を利用し、一日4時間以上のトレーニングに励んだ。「僕が変わったのはコロナ期間です。身体を大きくしようと取り組み、球が変わりました」。そして6月に部活動が再開されると、チームに衝撃が走った。自己最速が135キロから142キロまで上昇していたのだ。

 安田監督は、同校OBで関大のアドバイザリースタッフを務める山口高志氏に連絡を入れた。「いい投手がいるのですが、見に来ていただけませんか?」。その速球は山口氏をうならせ、無名左腕が名門である関大の推薦枠を勝ち取ることになった。7月の独自大会では1試合17奪三振を奪うなど8強進出。あっという間に秘めていた力が解き放たれた。

 現在の自己最速は154キロ。150キロを超えたとき、夢斗は安田監督に伝えた。「150キロを超えると、ひっかく感覚では球が抜けてしまいます。指先まで手の平だと思って投げるようになりました」。到底理解の追いつかない超一線級の感覚。気が付けば、想像を超える成長を遂げていた。(河合 洋介)

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