お酒を飲むと筋トレ効果は落ちるのか。アルコールが筋肉に及ぼす悪影響とは

2023年06月15日 12:00

お酒を飲むと筋トレ効果は落ちるのか。アルコールが筋肉に及ぼす悪影響とは
「筋トレを行っている人はお酒も強そう……」なんていうイメージをお持ちの方、多いのではないでしょうか。実際にカラダの大きなスポーツ選手には、お酒が強いという豪快なエピソードや噂をよく聞きます。しかしスポーツ選手にとって、飲 […]

「筋トレを行っている人はお酒も強そう……」なんていうイメージをお持ちの方、多いのではないでしょうか。実際にカラダの大きなスポーツ選手には、お酒が強いという豪快なエピソードや噂をよく聞きます。しかしスポーツ選手にとって、飲酒はパフォーマンスに影響はないのでしょうか。

今回はスポーツの中から筋トレにターゲットを絞り、筋トレとアルコールの関係を見ていきましょう。これから筋トレでカラダ作りをしようとしている人はもちろん、「筋トレも飲酒も両方大切だ!」という人も必見です。

アルコールによって起こる筋トレへの悪影響

まずは、アルコールがカラダづくりに影響する要因を確認してみましょう。

テストステロンの分泌量が減少するおそれ

アルコールによる筋トレへの弊害として挙げられるのが、ホルモンの一つ「テストステロン」分泌への影響。このテストステロンは、摂取したたんぱく質を合成させ筋肉を作るという働きを持っています。

筋トレの刺激によって分泌されるのですが、アルコール摂取によりこのテストステロンの分泌量が減少するとされているのです。

筋肉の合成を促すシグナル伝達経路の活動が低下するおそれ

また、筋トレやたんぱく質の摂取により、筋肉の合成を促す「mTOR(たんぱく質キナーゼ)」と呼ばれるシグナル伝達経路が活発になることが分かっています。

しかしアルコールを摂取することで、mTORの活動が低下するという結果を発表している研究もあります。

コルチゾールの働きで筋肉の分解を促進されるおそれ

その他にも、アルコール摂取によって分泌される「コルチゾール」というホルモンには、血糖値をコントロールする働きがあります。

コルチゾールには、エネルギー源である糖を生み出すために、筋肉の分解を促進させてしまう作用も。筋肉の分解は筋肉量の低下に繋がり、カラダづくりにとって悪影響を及ぼすのです。

このように、多くの研究でアルコールが筋トレの筋合成効果を阻害するという結果が出ています。

「お酒はエンプティカロリーだから太らない」はホント?

たしかにお酒のカロリーはすぐにエネルギーとして消費されるが……

「お酒はエンプティカロリー。飲んでもすぐにエネルギーになるから太らない」という話を聞いた人もいるかもしれません。

確かにアルコールは、摂取後すぐエネルギーとして使われるために分解されます。しかし、アルコールのエネルギーを消費している時は、食事から摂取したエネルギーは消費されていません。

その結果、エネルギー過多となってしまい、余った分のエネルギーが体脂肪として蓄積されてしまうのです。

ビールに含まれる“糖質”がポイント

ビールの主原料は大麦の麦芽。それに含まれるでんぷん質をビール酵母が分解してアルコールに変化させること(発酵)でビールが誕生します。つまり、本来のビールには原料となる糖質が必ず必要なのであり、ビールならではの旨味のもとにもなっています。

糖質は“カラダのエンジン”のようなもの。カラダを動かすためのエネルギーとなるのですが、エンジンとして使われずに余った分は中性脂肪として体内に蓄積されるため、肥満や病気になりやすくなってしまいます。

つまり、糖質の摂り過ぎはNGなのです。

アルコールによる食欲増進に注意

しかも、アルコールを摂取している時は食欲も高まるもの。アルコールだけをとっていればそれほど心配はないかもしれませんが、お酒に合う料理の多くは糖質や脂質が多く、また塩分なども多く含まれているものがほとんどです。

料理を一切食べずに飲み続けるという人は良いかもしれませんが、そうではない人は体脂肪が蓄積されてしまいます。

どうしてもお酒の席を回避できないときの対策術

アルコールによる弊害を理解したうえでも、「どうしてもお酒はやめられない」という人はいるでしょう。友人や仕事などの付き合いで、飲みたくなくても飲まなければいけない場面があるのもわかります。

そんな時には、次のようにアルコールの選び方や摂取タイミングを覚えておきましょう。そうすれば、影響を最小限に抑えることができます。

糖質が少ないアルコールを選ぶ

まずはアルコールの種類。ビールやワイン、日本酒、カクテル、サワーなどは、糖質が多く含まれているためオススメできません。

糖質が少ない焼酎やウイスキー・ハイボールなどの蒸留酒を選ぶようにすることで、体脂肪の蓄積を防ぐことができます。

摂取量は少なめに

もちろん、摂取量にも気をつけましょう。中には、少量であれば筋合成の影響を受けないとされる研究もあります。

アルコール分解能力には個人差があるため一概には言えませんが、大体500ml(ロング缶1本)程度と考えておきましょう。

量が少なくてもアルコール度数が高いものは悪影響をもたらすので、注意が必要です。

トレーニング直後は避ける

筋トレや運動直後は、渇いた喉を潤すようにアルコールを摂取したくなります。しかし、残念ながらそれは避けましょう。なぜならトレーニング直後は、筋肉の合成が高まる重要な時間帯だからです。

そのタイミングではアルコール摂取は避け、プロテインなどたんぱく質をしっかり摂取するようにしてください。

アルコールは「チートデイ」に飲む

ダイエットのために筋トレや食事制限をしていると、心身ともに疲れてしまいます。そのため、途中で挫折してしまうことは少なくありません。

その場合、週1日だけアルコールを摂取していい日を作りましょう。このようなご褒美日を「チートデイ」といいます。

カラダ作りを進めていくと、ダイエットの影響からどうしても代謝が低下してしまいます。これは、摂取カロリーを制限することによって、その摂取カロリーでカラダを維持しようという働きが働くからです。

週1回だけアルコールを楽しむことでカロリーを多く摂取することにつながり、それが刺激となり停滞を防ぐことができます。

ただしその楽しみを得るためには、そのほかの6日はしっかり筋トレや食事コントロールをする必要があります。

チートデイの設定方法

初心者であれば、1週間のうち1日が頻度の目安です。あらかじめ、何曜日にするか決めておくのがおすすめ。その他の6日は、しっかりと食事内容と食べる量をコントロールします。

チートデイを気分で決めてしまうと、「思った以上にチートデイが多くなってしまった」「毎日がチートデイ」ということになりかねません。それでは痩せるはずもなく、逆に太るだけです。

食べる量が多くなりやすい飲み会やイベント日などをチートデイにするなど、計画的なスケジュールを立てることが成功のポイントのひとつです。

慣れてきたら実施日の間隔を広げていきましょう。週1回から2週間に1回、3週間に1回など。停滞が気になったタイミングで設定すると、代謝を落とさずにダイエットを進めることができます。

[著者プロフィール]
和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。​医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。運営協力メディア「#トレラブ(https://tr-lv.com/)」などで多くの執筆・監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信している。日本トレーニング指導者協会 JATI-ATI
公式HP公式Facebook

<Text:和田拓巳>

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