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ホーキンソン 米国生まれ“侍センター” イチロー氏に導かれたバスケ日本代表への道

2023年07月05日 04:45

バスケット

ホーキンソン 米国生まれ“侍センター” イチロー氏に導かれたバスケ日本代表への道
W杯へ向け意気込むホーキンソン(撮影・小海途 良幹) Photo By スポニチ
 バスケットボール男子W杯(8月25日開幕、日本、フィリピン、インドネシアの3カ国共催)に向けて合宿中の日本代表は8、9日に浜松市内で台湾と国際強化試合を行う。1枠の国籍変更選手枠で本大会メンバー入りが確実な米国出身のホーキンソン・ジョシュ(28=SR渋谷)は16歳までは野球との二刀流で、最速150キロの本格派右腕だった。イチロー氏(49=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)に憧れる身長2メートル8のセンターがバスケで日の丸を背負うに至った道のりを振り返る。
 米ワシントン州にある野球の強豪ショアウッド高で投手を務めた16歳のシーズン最初の練習試合。先発したホーキンソンは0―0で迎えた最終7回2死まで無安打投球を続けていた。右肘に違和感を覚えたが、ノーヒットノーランまであと1人。カウント3―2から直球を投じた瞬間、激痛が走った。捕手まで届かず、四球を出して降板。2番手投手が直後に適時二塁打を浴びて、試合に敗れた。

 シアトルで生まれ、4歳から野球とバスケを始めて、この日まで二刀流。右肘じん帯を損傷し、野球を続けるにはバスケの1シーズンを棒に振って手術する必要があった。当時のチームメートには18年サイ・ヤング賞のスネル(パドレス)ら大リーガーになった選手が複数おり、ホーキンソンも将来を嘱望されていたが、バスケに絞るなら保存療法が可能。野球を諦める決断を下した。「野球の最後の試合が無安打投球で負け投手。クレージーだよね」と振り返る。

 両親ともに元プロバスケ選手。父はノルウェー、母はデンマークのクラブに所属した。ホーキンソンは親譲りのバスケセンスで、ワシントン州立大で活躍。大学卒業時はNBA下部Gリーグや欧州の複数クラブからオファーが届く中、ロサンゼルスで開催されたBリーグのワークアウトに参加。当時B2のFE名古屋からオファーを受け、入団を決めた。

 幼少時代からのヒーローはイチロー氏。マリナーズの本拠に応援に来る日本人ファンにも好印象を抱いており「イチローさんのおかげで日本にいいイメージを持っていた。直接的な理由ではないが、それも日本に来る後押しになった」と明かす。

 来日7年目を迎えた今年2月に日本国籍を取得。計画が動き始めたのは19年3月21日、東京ドームで開催されたイチロー氏の引退試合だった。ホーキンソンは憧れの存在の現役最後の雄姿を焼き付けようと、父と生観戦。偶然、隣の席に日本協会の東野智弥技術委員長が座った。東野氏は米国でバスケ関連のビジネスを手がけるホーキンソンの父と面識があり、国籍を取得して日本代表を目指す選択肢があることを伝えた。ホーキンソンは「自分はそこで国籍変更の話があったことは知らなかった。でもイチローさんの引退試合がスタートというのは運命を感じます」と実感を込める。

 身長2メートル8。インサイドでの強さはもちろん、外からのシュート、パスセンス、走力も備える。日本代表のホーバス監督からは「判断がよくて何でもできる」と高評価され、今季NBAファイナルでMVPに輝いたヨキッチ(ナゲッツ)に「似ている」とまで言われている。日本はインサイドに選手を配置しない5アウトを採用。ホーキンソンは代表デビューとなった2月のイラン戦で17得点11リバウンド、続くバーレーン戦で22得点10リバウンドと活躍し「トムさん(ホーバス監督)のバスケはインサイドもアウトサイドもできる自分の長所を生かせる」と強調した。

 公式ではないが、自ら考えた日本名は「鷹大(たかひろ)」。米国時代の愛称「ビッグホーク(大きな鷹)」を引き継ぎ、昨季まで所属した信州や日本代表では既に「たかちゃん」と呼ばれている。日本食も好きでお気に入りは、まぜそば。野沢菜やイナゴも食す。歌が得意で、人懐っこい性格。SNS上ではWBCで活躍したヌートバー(カージナルス)に似ているとの声も上がっており「自分は日本の血は継いでいないが、日本のために全力を尽くしたい」と誓う。

 6月に米国に一時帰国した際には、代理人を通してイチロー氏との対面が実現。マリナーズとオリックスのユニホーム、イチロー氏の書籍にサインをもらい「W杯頑張って」との言葉も掛けられた。「憧れのヒーローに会えて本当にうれしかった。夢がかなった」。イチロー氏抜きには語れない、バスケ人生。最高のモチベーションとなるヒーローからのエールを胸に、自国開催の世界舞台に立つ。

 ◇ホーキンソン・ジョシュ 1995年6月23日生まれ、米ワシントン州シアトル出身の28歳。ショアウッド高―ワシントン州立大。17年に当時B2のFE名古屋でプロのキャリアをスタート。20年に信州に移籍し、新シーズンからはSR渋谷でプレーする。今年2月に日本国籍を取得し、同23日のイラン戦で日本代表デビュー。ノルウェーからシアトルに移住した父方の祖父を尊敬する。趣味はゴルフでベストスコアは80。2メートル8、106キロ。

 ▽国籍変更選手枠 国際バスケットボール連盟は満16歳以降に国籍を変えた選手の登録を代表12人中1人まで認めている。19年のW杯はファジーカス・ニック(川崎)、21年の東京五輪はエドワーズ・ギャビン(当時千葉)の米国出身選手が代表入り。今回のW杯予選ではファジーカス、エバンス・ルーク(FE名古屋)もプレーしたが、若くて内外角をこなせるホーキンソンのメンバー入りが最有力視されている。

 ≪今月下旬以降 渡辺合流≫日本代表はW杯本番までに9試合の強化試合を予定しており、8、9日の台湾戦でスタートする。NBA組は八村塁(レーカーズ)のW杯欠場が決まり、サンズと契約合意と報道されている渡辺雄太は7月下旬以降の合流予定。当面は渡辺抜きでチーム強化を進める。

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