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【元横綱稀勢の里コラム】大関獲りのカギは序盤にあり 豊昇龍、大栄翔、若元春のトリプル昇進なるか

2023年07月05日 07:00

相撲

【元横綱稀勢の里コラム】大関獲りのカギは序盤にあり 豊昇龍、大栄翔、若元春のトリプル昇進なるか
名古屋場所に備え、陸奥部屋へ出稽古して霧島(右)と三番稽古を行う豊昇龍 Photo By スポニチ
 9日に初日を迎える大相撲名古屋場所は、霧馬山改め霧島の新大関昇進で上位は「1横綱2大関」となりました。加えて3人の関脇に大関獲りがかかるなど見どころ満載です。
 私は2011年の九州場所で10勝を挙げ、大関昇進を決めました。今思うと、その1年前の10年九州場所2日目。白鵬の連勝を「63」で止めた一番が転機になりました。まさに無敵の存在だった横綱に勝利。それまで三役と平幕を行ったり来たり。直前は2場所連続で負け越してしていた男が、あの一番だけで人間が変わった印象です。人間はどこでスイッチが入るか分からないものです。私は「これで自分も大関に上がれるな」という手応えをつかみました。その勢いで次の11年初場所は関脇で2桁勝利。大きな自信を手にし、相撲に対する姿勢がガラリと変わりました。体の鍛練はもちろんのこと、稽古場で腰の構えから見直し、相撲自体もいろいろ考えて取るようになりました。

 三役で確実に成績を残して迎えた1年後の九州場所は、場所1週間前に師匠の鳴戸親方(元横綱・隆の里)が急逝。いろいろバタバタするなかで稽古を十分にできる状況ではありませんでした。それでも相撲に関しては肩の力が抜けてリラックスできたようで、余計なことを考えずに臨めました。秋巡業から、そのまま乗り込む九州場所は調整がやりやすく、もともと成績が良かった。その場所で昇進がかかったのもいい巡り合わせでした。

 大関昇進には直近3場所33勝以上がノルマと言われています。私は32勝で上げてもらいました。新大関の場所で11勝すれば(11年秋場所12勝、同九州場所10勝と合わせて)3場所33勝に到達。誰からも文句を言わせないために絶対11勝以上すると強い気持ちで臨んだことを覚えています。

 豊昇龍、大栄翔、若元春の3人による昇進争い。同時昇進どころか相撲界初のトリプル昇進の期待が膨らみます。やっている方は大変ですが、ポイントは「初日の入り方、序盤5日間をどう乗り切るか」です。緊張感、そして土俵の感覚。慣れるまでに時間がかかります。力士として100場所以上経験している私でも引退するまで苦労しました。初日、2日目とつまずいたら挽回するためには相当な労力を必要とします。逆に4勝1敗とか5連勝できれば、勢いがついて中盤以降がかなり楽に臨めます。周囲の心配や期待の声は想像上に重圧にもなりますが、初日にいかに力を発揮できるかだけを考えるべきです。

 選ばれし者だけが経験できること。心身ともに過酷ではありますが、相撲人生最大の勝負と思って挑んでもらいたい。 (元横綱・稀勢の里)

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