【豊昇龍・強さの秘密(3)】思いを率直に口に出し、重圧乗り越えた

2023年07月26日 04:31

相撲

【豊昇龍・強さの秘密(3)】思いを率直に口に出し、重圧乗り越えた
松原郷士氏は豊昇龍がトレーニング室に書いた「優勝を。」を指さす Photo By スポニチ
 初優勝と大関昇進をかなえた豊昇龍の成長を間近で支えた一人が、立浪部屋のフィジカルコーチ・松原郷士(さとし)氏だ。場所単位の指導は9年前から始め、昨春以降は部屋へ住み込んで教える。
 昨年の九州場所の苦い経験を今回、糧にした。豊昇龍は11日目で単独トップと、幕内で初めて優勝争いに加わったが、12日目から3連敗。松原氏は「後から知りましたが、緊張して夜も眠れなかったそうです」と回想する。今場所は大関獲りの重圧の中でも、笑顔で「疲れてます」「緊張してます」と自分の気持ちを率直に口に出した。さらにトレーニング室の黒板には「優勝を。」と記した。願いも、抱えた思いも、外に出して乗り越えていった。

 名古屋場所千秋楽の結果は、母国モンゴルの叔父で元横綱・朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏をうれし泣きさせた。松原氏は逆に、元朝青龍に泣かされた豊昇龍を垣間見たことがある。

 「筋肉が硬くなる」という理由で、叔父からは投げ技のパワーの源となる背筋や臀部(でんぶ)しか筋力トレーニングの許可が出なかった。左足首を捻挫し1日休場した初場所、部屋を訪れた元朝青龍へ松原氏があいさつに行くと「筋トレをさせるなと言っただろ」と一喝されたという。豊昇龍はモンゴル語で叱責(しっせき)され涙を流した。

 その後、投げるだけでなく押すための胸、そして下半身も含めた筋トレの必要性を本人が痛感。モンゴルへ約4年半ぶりに帰郷した夏場所後、直談判して了承を得た。「元々やりたかったことだったと思うが、本人の覚悟が強かった」と松原氏。覚悟とはトレーニングのつらさに耐えるためであり、偉大すぎる叔父と向き合うためだった。(特別取材班)=おわり=

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