【元横綱稀勢の里コラム】勉強になった阪神・岡田監督の選手の力を引き上げるリーダーシップ

2023年11月08日 07:00

相撲

【元横綱稀勢の里コラム】勉強になった阪神・岡田監督の選手の力を引き上げるリーダーシップ
38年ぶり日本一を達成して胴上げされる阪神・岡田監督(撮影・島崎忠彦) Photo By スポニチ
 阪神ファンの皆さま、日本一おめでとうございます。日本シリーズ第7戦は終盤からテレビ観戦しましたが、今年のプロ野球を締めくくるにふさわしい好ゲームでした。スアレスが抜けた後の阪神は、守護神として岩崎が定着したことが大きかった。前回の日本一は1985年、私はまだ生まれていません。長い間待ち続けた虎党の思いも格別ではないでしょうか。
 今、個人的に注目している球団は広島カープです。トレードで大型補強できるわけではなく、生え抜きをじっくり育ててチームを強化。私の好みです。今年の阪神も生え抜きの選手を多く起用して常勝軍団になりました。大山選手はドラフト1位指名された時のファンからのブーイングがあったので、今の姿には思わず感情移入しちゃいます。

 チームを率いた岡田監督、実に面白いですね。発言も含め引き込まれるようなキャラで、決して流ちょうでないけど、一言一言に重みと面白さがありますね。私なりに勝敗を分けたポイントを挙げるなら、それは「適材適所」です。阪神はすべての打順が機能しました。近本が引っ張って、ノイジーが打って、木浪も予想外の活躍。新人の森下もよく頑張りました。加えて岡田監督の右腕、平田ヘッドコーチの存在も忘れてはいけません。

 私も指導者なので、監督目線で観戦することが多くなりました。最近感じるのは、選手寄りの監督が増えましたね。岡田監督、オリックスの中嶋監督しかり、ロッテの吉井監督、広島の新井さんも。以前は厳しさを前面に押し出すイメージが強かった監督像も、今では選手との距離はぐっと近くなった印象です。今のご時世、そういった指揮官の方が選手もノビノビとプレーできるのでしょうか。選手の立場に立って考え、采配を振る。選手の力を引き上げるという今季の岡田監督の「リーダーシップ」は勉強になりました。

 指揮官と選手の距離感。これを相撲の世界にも当てはめてみます。相撲の世界は厳しくないと強くならない一面があります。しかし、新弟子の数は史上最低人数まで落ち込み、厳しいだけでは相撲部屋の門を叩く少年は増えないのかもしれません。甘やかすとか優しくということでなく、厳しさを残しながらも弟子がノビノビと相撲に打ち込め、持てる力をすべて発揮できる環境ができないものか。時代の変化とともに試行錯誤も続きます。 (元横綱・稀勢の里)

おすすめテーマ

2023年11月08日のニュース

特集

スポーツのランキング

【楽天】オススメアイテム