【小海途良幹 語る】「y」に込めた意味 羽生結弦さんと自身の変化 そして、今後の美しい妄想

2023年11月08日 11:00

フィギュアスケート

【小海途良幹 語る】「y」に込めた意味 羽生結弦さんと自身の変化 そして、今後の美しい妄想
「y 羽生結弦写真集」の書影 Photo By スポニチ
 フィギュアスケート男子で14年ソチ、18年平昌と五輪連覇を達成し、現在はプロとして活動する羽生結弦さんの写真集「y 羽生結弦写真集」が、12月7日に発売される。発売まで1カ月を切る中、撮影した小海途良幹がインタビューに応じ、タイトルに込められた意味や今後、撮ってみたい写真などについて語った。
(取材・構成 杉本 亮輔)

 ――ご無沙汰しています。「notte stellata」のリハーサル以来になりますか。元気にしていましたか。
 「元気にしていましたよ!ここ数か月は写真集制作で忙しくしています」

 ――今年も出ますね!どんな気持ちを込めて作りましたか
 「プロ転向してからの羽生選手は、ますます進化をしていますよね。そんな彼にふさわしい写真集にしたいなと思って作っています。また『阿修羅ちゃん』、『あの夏へ』の写真はあまり世に出ていないので、あの素晴らしい作品を形に残しておかなければという使命感を持って制作にあたっています。

 ――これまでタイトルは「YUZU’LL BE BACK」でした。今回「y」とした理由は。小文字にも何か意味がありますか
 「まず、プロ転向を機にタイトルを変えようという話になりました。その中で長久保さんと僕でたくさんの候補を挙げ、時間をかけて検討した結果『y』でいこうとなりました。言うまでもなく『yuzuru』から『y』を取ったのですが、美のアイコンである羽生選手を表現するにふさわしい、シンボリックなタイトルにしました。小文字にした理由は、テキストにしたときの形の良さですね。大文字の『Y』より、小文字の方が繊細さを表現できると思ったからです」

 ――今作は少し価格が上がっています。物価上昇の影響があるのでしょうか。
 「紙代、印刷代の高騰が1つ目の理由です。もう1つの理由は本の仕様を変えたことです。進化を続ける羽生選手にふさわしく、写真集も進化をしなければならないと考えました。ハードカバーを採用し高級感を出しました。それによって本が開きやすくなり、見開きで掲載されている写真が見やすくなっています。また、紙もこれまでと比べ、より上質な紙に変更しました。値段が上がってしまったことは心苦しいのですが、値段に見合ったクオリティーになったと思っています」

 ――羽生さんのプロ転向後を追った「y」。撮っていて羽生さんの変化、小海途さんの変化はありますか。
 「アマチュアという枠が取り払われたことによって、羽生選手の表現の幅が大きく広がっていますよね。またご自身で振り付けされることも増え、今までにない動きや表情が見られるようになりました。僕の変化は、アイスショーを通して、より近くで羽生選手の様子を見る機会ができたことで、彼やショーへの感情移入が強まったと感じています。ショーの一員としての責任感も含め、それが写真にも反映されているな、と」

 ――羽生さんを撮る時に限らず、日頃から写真を撮るにあたって心がけていることやモットーはありますか
 「人と同じ写真は『負け』と思って、唯一無二の写真が撮れるように、もがいています。人と価値観が似ないように、現場では孤立するように努めていますし、常に定型を疑うように心がけています」

 ――そもそもですよ、小海途さんはなぜカメラマンを志したのですか
 「大学生の時に、あるカメラマンと出会ったのがきっかけです。その方が出世払いでいいから、とカメラを一式渡してくれました。その出会いがなければ、カメラマンになることはなかったと思います。ちなみにその方は、いまだにお金を受け取ってくれません(笑い)。また、そのカメラマンの紹介で作家の椎名誠さんたちと旅に出るようになりました。椎名さんは写真家の顔も持ちますので、その姿にも憧れを抱きました」

 ――これは今でも忘れられない、という失敗談はありますか
 「特に1つ挙げることはできないのですが、新人の頃、まだ基本も何もできていない状態で、一発を狙いにいっては失敗する毎日でした。何度言われてもやり方を曲げないので、上司、先輩から見捨てられていましたね」

 ――その失敗を今にどう生かしていますか
 「失敗続きの日々は、悔しかったです。ただ、基礎が出来上がってくると、狙いを持って撮影する姿勢が次第に短所から長所となっていきました。失敗によって角を丸くするのではなく、失敗で角をさらに鋭くしたのが今に生きていると思います」

 ――今はいろんな人が手軽に写真や動画を撮れる時代です。写真、動画どちらもそれぞれの良さはあるでしょう。小海途さんが考える写真ならではの良さとは
 「映像と比べ、写真は情報を少なくしていけるところが良さだと思います。メッセージを伝えやすい表現方法かなと思っています」

 ――これからも羽生さんを追いかけていくのだと思いますが、「こういう写真も撮ってみたい!」というイメージみたいなものはありますか
 「凍り付いた湖の上で自然を背景に滑る羽生選手を撮ってみたいなと思っています。自然光の下でも美しいでしょうし、月明かりの下でもいいですね。また、氷が張られたオペラ座の舞台で、クラシックなプログラムを滑る羽生選手も撮ってみたいですね。どれも勝手な妄想ですが」

 ――最後になりますが、写真集「y」を楽しみにしてくださっている方へメッセージを
 「『y』は1枚の持つ力が強い写真が集まっています。美術館やギャラリーを歩いている気持ちで1つ1つ、じっくり見て頂ければ幸いです。どこかで感想が聞ければ、うれしいですね」

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