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「ランチ後の歯磨き」が持つ“意外なメリット”とは

2024年06月18日 09:00

「ランチ後の歯磨き」が持つ“意外なメリット”とは
午前中にイヤなことがあった人は「昼食後に歯磨き」がオススメかもしれません。 ライオン株式会社は、歯みがき行動が、むし歯を…

午前中にイヤなことがあった人は「昼食後に歯磨き」がオススメかもしれません。

ライオン株式会社は、歯みがき行動が、むし歯を予防するだけではなく、自律神経に影響し、気持ちのリフレッシュに繋がるという研究結果を得ました。

解説は、杏林大学名誉教授の古賀良彦先生です。

「歯磨き」は自律神経に影響し、心身を整える?

大脳皮質の中で感覚をつかさどる領域の約30%が、口腔の感覚に関わっているとも言われており(※1)(※2)、近年では、食物を噛むことや歯茎への触覚刺激が、自律神経に影響することが示唆されています(※3)(※4)。

図1 仮説の概略図(ブラッシングによる触覚刺激が自律神経および心理状態に与える影響) 

これを受け、ライオン株式会社は「歯みがき(ブラッシング)行動」も、自律神経に影響を与え、心身を調節する可能性があるのではないかと考えました。

そこで同社は、ブラッシングによる触覚刺激が、自律神経活動および心理状態にどんな影響を与えるのか検証しました。

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成人20名に5分間ブラッシングしてもらった

研究方法

20~40歳代の成人20名(男性9名、女性11名)を粉した際の自律神経と心理状態(気分)に与える影響を、ブラッシング前後で比較しました。

自律神経活動の指標として、ウェアラブル心拍センサーを用いて、交感神経活動の指標であるLF/HF値を測定しました。

心理状態の指標として、TDMS-ST(二次元気分尺度:8項目の質問に回答し、安定度・活性度・快適度・覚醒度の4種類の心理状態を計測)を用いました。

結果は「歯みがきは自律神経を整え、前向きな心理状態へと変化させた」

研究結果から、歯みがき(ブラッシング)行動は自律神経活動を整え、前向きな心理状態へと変化させることから、心身をリフレッシュする効果があることが考えられました。

くわしくは以下の通りです。

<自律神経活動>
心拍測定の結果、ブラッシング前と比較して、ブラッシング後では、LF/HF値が有意に減少し(p<0.05)(図2)、交感神経活動が低減したことがわかりました。

図2 自律神経活動の測定結果

<心理状態>
TDMS-ST法による評価の結果、ブラッシング前と比較して、後では活性度、快適度、覚醒度が有意に増加しました(p<0.05)(図3)。ブラッシングによって、活気があり、快適な心理状態へと変化したことが示されました。

 図3 心理状態(TDMS-ST)の評価結果

自分でできる自律神経チェック!専門家監修

昼食後にもブラッシングを行えば、午前中のストレスが緩和する可能性

研究結果について、古賀先生は以下のようにコメントしています。

この研究は歯みがき(ブラッシング)行動のリフレッシュ効果を心理検査、自律神経活動測定により検討したものです。その結果、ブラッシングによって交感神経活動が低減することと関連して、活性度や快適度、覚醒度が上昇するという結果が得られました。

これまでブラッシングによって心地よさがもたらされることは経験的には知られていました。しかし、今回のようにストレス対処としての有用性を、生理心理学的側面から多次元的に明らかにした研究は他に例がありません。

従来、ブラッシングは口腔衛生目的で朝と晩に行うことが習慣とされることが多かったと思います。今回の結果は、例えば、昼食後にもブラッシングを行えば、自律神経のバランスが整って、午前中の生活によって生じたストレスが緩和され、仕事のパフォーマンス(生産性)が向上する可能性があることを示唆するものです。

このように、歯みがき行動は、既存の口腔ケア目的に留まらない、心身を整える新たな習慣として、ウェルビーイング(well-being)の実現に貢献できると考えられます。

本研究結果については、下記の通り発表されています。

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プロフィール

杏林大学名誉教授・医学博士・精神科医 古賀良彦先生

東京都出身、慶應義塾大学医学部卒業。杏林大学名誉教授・医学博士・精神科医。うつ病や認知症をはじめとする精神疾患や睡眠障害の治療・臨床研究に長年にわたり従事。また、脳波や脳機能画像を用い、香りや食品が脳機能に与える効果についての研究も推進している。日本臨床神経生理学会名誉会員、日本催眠学会名誉理事長。著書は『睡眠と脳の科学』(祥伝社)『ねこの間違いさがし』(文響社)など多数

(※1)Penfield W., Boldrey E.  Somatic motor and sensory representation in the cerebral cortex of man as studied by electrical stimulation. Brain 60, 389-443 (1937).

(※2)Y. Tamura et al., Oral structure representation in human somatosensory cortex. NeuroImage 43, 128-135 (2008).

(※3)Y. Hasegawa et al., Circulatory response and autonomic nervous activity during gum chewing. Eur J Oral Sci. 117, 470-473 (2009).

(※4)K. Ichinose et al., Decreased Frequency of Mental Workload-Induced Subjective Hot Flashes Through Gum Massage: An Open-Label,Self-Controlled Crossover Trial. Women’s Health Reports 3, 1, 335-343 (2022). 

<Edit:編集部>

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