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なぜスポーツ選手は試合中にガムを噛むのか?その理由に迫る

2024年03月22日 09:00

なぜスポーツ選手は試合中にガムを噛むのか?その理由に迫る
テレビでスポーツを見ていると、選手たちがベンチや試合中にガムを噛んでいる様子を見かけることがあります。なぜ、スポーツ選手…

テレビでスポーツを見ていると、選手たちがベンチや試合中にガムを噛んでいる様子を見かけることがあります。なぜ、スポーツ選手はガムを噛むのでしょうか。

今回は、ガムの持つ意外な効果や可能性について見ていきましょう。

なぜスポーツ選手は試合時にガムを噛むのか

効果その1 ガムを噛むと脳血流が上昇し、集中力、判断力が向上する

まず、ガムを噛むことにより、脳の働きが活性化され、集中力や判断力が高まる効果が期待できるという研究結果(※1)があります。

これは、ガムを咀嚼することが脳血流量を増加させ、覚醒レベルを上げることによるものです。

効果その2 ガムを噛む時と噛まない時とでは、体感的な「しんどさ」が異なる

また、ガムを噛んだときとそうでないときでは、体感的な疲労度も異なるといいます。

ある実験(※2)で、運動習慣のある男子大学生11名にそれぞれ「ガム咀嚼あり」「ガム咀嚼なし」の条件下で身体を動かしてもらったところ、ガムを噛んで身体を動かした方が「キツさ」を感じにくくなることが分かりました。

効果その3 噛むことによってセロトニンが分泌され、平常心で試合に臨める

さらに、ガムを噛む事でセロトニンが分泌され、平常心で試合に臨みやすくなるという研究結果もあります。

東邦大学名誉教授の有田秀穂氏の研究によると、ガムを20分間しっかり噛み続けることで、脳のセロトニン(幸せホルモン)神経が活性化し、血液中のセロトニン濃度が増加したといいます。

これにより、選手たちが試合で本来の力を発揮しやすくなる効果が期待できます。

ガムを噛むことでスポーツ時によい効果をもたらす

スポーツ選手が試合中にガムを噛んでいる理由には、こうした科学的な理由があったのです。単に美味しいだけじゃないガムの新たな可能性、あなたもスポーツのときに試してみては。

※1
・塩田正俊、他:ガム咀嚼による脳覚醒が運動パフォーマンスに及ぼす影響,体力科学.58(6):852,2009.
・荻原啓文、他:ガム咀嚼は単純反応時間を短縮させるか,運動器理学療法7,群馬パース大学保健科学部理学療法学科
※2
伊藤咲:ガム咀嚼がサッカーをモデルとした高強度間欠的運動中の生理的および主観的指標に及ぼす影響についての検討 東北学院大学人間情報学研究科年誌26号 pp33-37 2021-06-30

次:ガムを噛み続けると、どんなメリットがある?

ガムを噛み続けると、どんなメリットがある?

ロッテは、順天堂大学の小林弘幸教授、医療法人社団順幸会小林メディカルクリニック東京(理事長:小林暁子氏)と共同で、継続的なガム咀嚼に関する研究を実施しました。

自律神経や気分状態の改善、唾液中の免疫成分濃度が増加

研究結果によれば、ガム咀嚼を2週間継続することにより、自律神経や気分状態が改善。さらには、唾液中の免疫グロブリンA(IgA:様々な病原体に対する生体防御機構の最前線として役割を果たす免疫物質)濃度が増加することを確認したといいます。

今回、研究対象となったのは、20~50代の健常な男女50名。1日3回のガム咀嚼を2週間継続し、自律神経・気分状態(POMS II)・唾液中IgA濃度等を測定したそう。

この結果、ガム咀嚼を2週間継続することで、上のグラフの通り、自律神経バランス・気分状態の改善および唾液中のIgA濃度が増加することが確認されました。

研究に携わった小林教授は今回の結果について「よく噛むことは重要で様々な機能があることがわかってきています」とした上で、「咀嚼などのリズム運動は、幸せホルモンともいわれるセロトニン分泌を高めることが報告されています。ガム咀嚼によりセロトニンが分泌され、ストレス軽減や自律神経の改善により、気分状態の改善や免疫物質であるIgAの唾液濃度増加につながった可能性が考えられます」と解説。

「噛むことは手軽にすぐにできることですので、日々の生活に意識して取り入れると良いと思います」としています。

<プロフィール>
小林弘幸(こばやし・ひろゆき)教授 
順天堂大学医学部 総合診療科・病院管理学 教授
自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導に関わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」でもあり、みそをはじめとした腸内環境を整える食材の紹介や、腸内環境を整えるストレッチの考案など、様々な形で健康な心と体の作り方を提案している。著書多数執筆。メディア出演や講演活動も多数。

<研究結果概要>
【掲載紙】薬理と治療(2022年50巻6号、1049-1054)
タイトル:ガム継続摂取による免疫および自律神経、ストレスへの影響 - オープンランダム化並行群間比較試験 -
著者:菅野範、松井美咲、大澤謙二、小林暁子、小林弘幸

<Text:辻村>

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