大垣日大・阪口慶三監督に教わった大人の味 名将の甲子園でのひそかな楽しみとは

2023年10月05日 07:30

野球

大垣日大・阪口慶三監督に教わった大人の味 名将の甲子園でのひそかな楽しみとは
勇退会見に臨んだ大垣日大・阪口慶三監督(撮影・河合 洋介) Photo By スポニチ
 2日に勇退会見を行った大垣日大(岐阜)の阪口慶三監督。最後となった今夏の甲子園は、孫・高橋慎捕手(3年)らと出場し春夏通算40勝目を挙げた。初戦の近江(滋賀)戦勝利後のインタビューでは「100歳までやりたいね」と話していたことを鮮明に覚えていたからこそ、突然入ってきた退任の一報に寂しさを覚えた。だがそれ以上に、たくさんの感謝も頭に浮かんだ。
 地方紙に勤めていた記者1年目の17年から、2年連続で夏の甲子園へ出場したのが阪口監督率いる大垣日大。高校野球を担当していた記者は、自然と取材に訪れる機会も多かった。

 他校とは違い、練習場に監督が現れるだけでものすごい緊張感が走り選手一人一人が、「俺を起用してくれ」と言わんばかりの気迫あふれるプレーで練習していた。そんな選手たちに鋭い眼光を光らせながら、練習を見守る姿は今でも忘れられない。

 18年夏、第100回記念大会にも大垣日大は甲子園出場を果たした。甲子園入り後は毎日練習場に通い、練習中に阪口監督が発する言葉を必死でメモした。ある日の練習終わり、歩きながら取材しているとふと阪口監督に尋ねられた。「“くう”は好きか」。頭の中に浮かんだ「くう」はジュースの「Qoo」だった。すぐさま「好きです」と答え、こう付け加えてしまった。「阪口監督は何味が好きですか」。少しの間の後に「この後、ホテルに戻ったら一緒に飲もう」と言われた。すぐに原稿を書き終え、阪口監督の下へ向かうと、出てきたのは日本酒の「空(くう)」だった。「自分はなんという質問をしてしまったのか」。頭の中は恥ずかしさでいっぱいだったが「甲子園に来たら練習後にこれを飲むのがたまらないんだよ」と練習中とは違い、満面の笑みで日本酒を飲む姿に心をつかまれた。

 その後も練習後に何度か一緒に酒を飲んだ。時には相手投手の動画を見ながら「癖はないか」「配球はどうなっている」と、阪口監督自ら自身のノートにメモしながら研究している姿も見せてもらった。

 野球のこととなればどんな時でも一瞬で鋭い眼光を光らせ、子どもたちを勝たせるための最大限の準備をする。監督歴57年のほんの数年だったが、記者にとっては「名将」と呼ばれるゆえんを知ることのできた貴重な時間だった。57年間、本当にお疲れさまでした。(記者コラム・村井 樹)

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