【内田雅也の追球】座右の銘「球道一筋」に岡田監督がこめた意味 「愉しく」王の道を歩む

2024年02月01日 08:00

野球

【内田雅也の追球】座右の銘「球道一筋」に岡田監督がこめた意味 「愉しく」王の道を歩む
新たな座右の銘「球道一筋」を添えた岡田監督のサイン Photo By スポニチ
 東シナ海に燃えるような太陽が沈んでいった。午後、沖縄・恩納村のキャンプ宿舎で旅装を解いた阪神監督・岡田彰布は夕日を眺められただろうか。歓迎式典やミーティングなどが相次ぎ、目を留める余裕がなかったかもしれない。ホテル前の道は「おんなサンセット海道」と呼ばれる。
 道である。道について書きたい。

 岡田は新年を迎え、座右の銘を昨年までの「道一筋」から「球道一筋」に改めた。幼少の頃から過ごした大阪・玉造の実家居間には阪神の先人、村山実の色紙が掲げられ「球道一筋」とあった。2003年オフ、監督に就いた際に受け継ごうとしたのだが「球道は“王の道を求める”と読める」と遠慮した。日本一になったことで堂々と「王の道を求める」気構えができたわけである。

 当面の目標は2リーグ制で球団史上初めての連覇である。ただし、岡田には少しの力みもない。昨年勝ったチームに特別なウイークポイントはない。「個人の底上げ」をテーマとした。

 岡田はむしろ、きょう1日から始まるキャンプを楽しみにしているはずである。いや、もともと岡田には野球を楽しむ姿勢が備わっている。

 「道一筋」について評論家時代の10年前、<道とは野球の道である。一筋に歩み続けたい>と著書『プロ野球構造改革論』(宝島社新書)に記した。そして<目指すべきは面白い野球をすることだ>と書いた。<面白い野球を追い求めることが私の「道一筋」だと思っている>。面白くなければ、野球ではないと考えているわけだ。

 その精神は伝える側も同じだ。きょう1日はスポニチの創刊記念日。1949(昭和24)年創刊で75年を迎える。<こゝに「愉(たの)しい新聞」スポーツニッポンがうぶ声をあげます>と「創刊のことば」にある。

 <明るく愉しい生活の焔(ほのお)はそちこちに燃え上がっています。大空に白線を引く大ホームランを見つめる観衆の瞳にも>。終戦5年目。焦土から立ち上がる人びとの希望になろうとした先人の思いを胸に刻む。

 襟を正したい。野球記者として40年目を迎える。米野球殿堂入りの記者レッド・スミスは「一生、生粋の新聞人でいたい」と永眠する4日前まで書き続けた。<野球をスローで退屈だと思う人、それは退屈な心の持ち主に過ぎない>。名言を心に刻んだ。 =敬称略=
 (編集委員)

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