特別な思いで選抜発表を待っていた仙台一・阿部翔人部長 12年前には選抜史に残る選手宣誓も

2024年02月06日 08:00

野球

特別な思いで選抜発表を待っていた仙台一・阿部翔人部長 12年前には選抜史に残る選手宣誓も
仙台一の阿部翔人部長(撮影・木村 揚輔) Photo By スポニチ
 1月26日に出場校が決定した第96回選抜高校野球大会。21世紀枠での出場を目指した仙台一(宮城)は、惜しくも選出されることはなかった。発表前に何度か取材していただけに記者も少し残念な気持ちになったが、特別な思いで発表を待っていた阿部翔人部長をここで紹介したい。
 94年生まれのいわゆる「大谷世代」でもある阿部部長。記者も同じ年齢で、同じく高校野球に打ち込んでおりその名前はどこか見覚えがあった。昨年12月、初めて仙台一へ取材に行く際に確認すると、12年の選抜に石巻工(宮城)で出場していた。それだけではなく、誰もが心を打たれた選手宣誓もしていた主将だった。記憶が一気によみがえった。

 「日本中に届けます。感動、勇気、そして笑顔を。見せましょう、日本の底力、絆を」

 11年の東日本大震災を経験し「学校も浸水し、練習どころではなかった」と当時のことを語ってくれた阿部部長。学校のグラウンドは1カ月かけて使用できるようになったが、「野球をやっていていいのかと思うこともあった」。だが、「支えてくれる人のため、自分たちのできることをやろうと思えた」と同年秋の宮城県大会で準優勝。震災翌年の選抜に21世紀枠で出場を決めた。

 選抜の選手宣誓は立候補制ではなく、全主将による抽選で決まった。「立候補だと思っていたが、会場で全員が対象だと知った。どちらにしても立候補しようと思っていました」。32分の1の確率を見事につかむと、宣誓文は仲間と一緒に考えたが「どうしても入れたい言葉は自分の中で決まっていました」。こう懐かしそうに振り返った言葉こそ「感動、勇気、そして笑顔を」だった。

 今年の選抜発表前には「震災で被害に遭った星稜と日本航空石川の選手は本当に大変だと思う。選抜に選ばれたら自分たちができる精いっぱいのプレーをしてほしいし、その姿はきっと地元を勇気付ける」と、阿部部長だからこそかけられるエールを送った。「自分にしか伝えられないこともあると思う。そういうことを伝えられる指導者になり、いつかは甲子園に連れて行きたい」と最後に明かした夢。同世代として応援し続けたい。(記者コラム・村井 樹)

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