【内田雅也の追球】「大一番」を望む勝負師

2024年02月06日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「大一番」を望む勝負師
阪神・岡田監督 Photo By スポニチ
 阪神監督・岡田彰布はキャンプ練習休日の5日、ゴルフを楽しんだ。
 もともと好きなゴルフだが、一昨年秋に監督に就任してからは行く回数がぐんと減った。「去年何回行ったやろ……。えーっと……」と数えてみると10回だった。「それもコンペばかり。プライベートでは行ってない。評論家のころは何十回と行ってたけどなあ」

 評論家時代はゴルフにパチンコ、競馬……と勝負事に時間を費やした。カラオケでも点数を競った。名人戦など、プロ棋士のタイトル戦は中継に見入った

 ところが、監督に復帰すると「パチンコもゴルフも全く興味がなくなった」と話していた。

 それはそうだろう。何と比べても最大最強の勝負事、プロ野球のペナントレースを戦う指揮官なのだ。遊びの勝負事では得られぬ興奮、緊張、達成感があるわけだ。

 そして昨年、見事リーグ優勝、日本シリーズ制覇を成し遂げた。最高の興奮や感激を味わったわけだが、岡田は「なんか知らん間に首位を走り、勝ってしまったなあ」と話していた。オールスター以降は独走だった。

 「シーズンの間には何回か、ここが天王山、今日が大一番といった試合があるやろう。そんな試合あったか?いくつか大事な試合はあったけど、この一番という試合はなかったやろ」

 どこか物足りないように話していたのを覚えている。ぜいたくな悩みだが、勝負事を好む勝負師としては「天王山」や「大一番」がなかったのが不満だったのだ。

 では、今年はどうだろう。「目標は連覇。その一点」と公言して臨むシーズンである。キャンプイン前の全体ミーティングでは選手たちに「普通にやれば勝てる」とも語っている。独走を描いているのだろうか。

 前夜、この天王山や大一番について尋ねると、「今年はあるやろうな」とぽつりと言った。震えるような勝負を望んでいるとみてとった。

 その相手は巨人か。本紙新春対談で赤星憲広(本紙評論家)に「不気味なのは巨人やろうな」と漏らしていた。

 セ・リーグ他5球団の戦力を眺めながら「普通にやれば勝てる」と自信を示す一方、震えるような大一番も望んでいる。

 昨年よりも劇的な展開のペナントレースを戦ったうえで、最後は勝ちきる。そんな構図を思い描けるのは本物の勝負師である。 =敬称略= (編集委員)

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