【内田雅也の追球】「一瞬」のその先へ 迅速と正確の兼ね合い

2024年02月27日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「一瞬」のその先へ 迅速と正確の兼ね合い
併殺プレーのノックを受ける木浪(左)と中野(後方は平田ヘッド)(撮影・椎名 航) Photo By スポニチ
 阪神キャンプ打ち上げ前日、午前最後の練習は「部門別個別練習」だった。外野手はクッション処理などを行い、内野手は併殺練習だった。ヘッドコーチ・平田勝男がストップウオッチでタイムを計りながら行った。
 平田と同様、記者席で手もとのストップウオッチで計った。ノックの打球が放たれた瞬間から二塁経由で一塁手捕球までのタイムである。

 三塁・佐藤輝明―二塁・中野拓夢―一塁・大山悠輔と渡って「4秒01! 惜しいなあ」と平田が声をあげた。4秒切りを目標としているようだ。

 手もとの計測も4秒01でピタリ一致している。次々と計るが、平田の声と手もとの数値は10分の1秒まで同じだった。つまり、正しく選手たちに伝えているわけだ。

 と言うのも、同じ併殺タイム計測を一昨年11月8日、高知・安芸での秋季キャンプでも行っていた。この時、平田は手もとの計測より0・2秒速いタイムを伝えていた。

 「あわてなくても大丈夫。まずは正確にやろうと自信をつけさせたかった」と理由を説明していた。<恩情「0・2秒の意味>と当欄で書いた。

 あれから1年3カ月、平田は「もうオマケする必要はないからね」と話した。昨年は日本一。シーズンで奪った130個は12球団最多だった。

 いわゆる「一瞬」とは0・2秒程度らしい。まばたきは0・1~0・2秒。一目ぼれするのは0・2秒で、松田聖子が歯科医に「ビビビ」と恋に落ちた時間である。阪神内野陣は昨年で「一瞬」を制覇したわけだ。「ウチは捕球―送球が素早い内野手が多くなった」と平田も成長を認める。

 阪神は監督・岡田彰布も平田も「攻める守備」を掲げている。吉田義男の言葉でもある。

 「ただし、“攻める”を誤解している時がある。無理な打球でもイチかバチかで併殺を取りに行ってミスしたり、何でもかんでも前に出たり……。今日もシートノックで乱れていた。正確さをもう一度考えなおす意味でタイムを計ったのよ」

 克服した「一瞬」の、その先を見ている。ランクが上がったのだ。迅速と正確の兼ね合いをはかるのが一流なのだ。

 この日、ツバメが飛来した。ブルペン横に巣作りを始めた。2月の沖縄で見たことはあったが、宜野座では初めて。4羽もやって来た。幸運を呼ぶ鳥らしい。打ち上げを前に、うれしい気持ちで眺めた。 =敬称略=(編集委員)

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