【甲子園】関東第一初V王手 飛田が起こした甲子園の奇跡 攻める守備生んだ「伝説のバックホーム」

2024年08月22日 05:00

野球

【甲子園】関東第一初V王手 飛田が起こした甲子園の奇跡 攻める守備生んだ「伝説のバックホーム」
<関東第一・神村学園>9回、神村学園・岩下(左)が生還を狙うもアウトとなり試合終了(撮影・大城 有生希) Photo By スポニチ
 【第106回全国高校野球選手権大会第13日・準決勝   関東第一2―1神村学園 ( 2024年8月21日    甲子園 )】 準決勝2試合が行われ、関東第一(東東京)が2―1で神村学園(鹿児島)に逆転勝ちし、初の決勝進出を果たした。2―1の9回2死一、二塁から、中堅・飛田優悟外野手(3年)のバックホームで試合終了。夏の聖地での好プレーを紹介する「光る君の光(こう)プレー」として、奇跡を生んだ背景に迫った。京都国際は今春選抜1回戦で敗れた青森山田に雪辱。両校ともに初優勝を懸けて、決勝は23日に行われる。
 奇跡のバックホームが鮮やかな軌道で伸びていく。銀傘に交錯する悲鳴と大歓声。一瞬の間を置いて、乗金悟球審の「アウト!」のコールが響いた。中堅から飛田が右手を突き上げ、歓喜の笑顔で駆けてくる。ホームベースでは二塁走者・岩下吏玖(3年)が地面に突っ伏して動けない。勝者と敗者の無情のコントラストだった。

 2―1で迎えた9回2死一、二塁。代打・玉城功大(3年)の執念の一打が中前で弾んだ。前進守備の飛田は猛然とチャージをかけると、本塁へダイレクト返球。普段はワンバウンドで返球するところだが「相手投手がいい。追いつかれたら苦しくなる。1点を絶対防ごうと。しっかりチャージできて、その勢いでノーバウンドで投げた」。ヒーローは噴き出る汗を拭った。

 関東第一の高い守備力を象徴する1点を防ぐ「攻める守備」。そこには奇跡を生むだけの要素があった。

 (1)予測 一塁に勝ち越しの走者がいて長打も警戒する場面だが、打者の玉城は代打。データを踏まえ「オーバー(する打球)はない」と前進守備を敷いた。さらに神村学園の積極的な走塁から「前の打球は(三塁を)必ず回ってくる」と読み切った。

 (2)準備 「甲子園は芝も奇麗でイレギュラーはない」。それでもスパイクで掘られた部分は試合中に「埋めるようにした」。長打はないから前進し、イレギュラーしないから猛チャージし、必ず三塁を回ってくるからダイレクト返球した。

 伏線もある。4回2死二塁から、中前打で先制された。送球動作に入りづらい右翼寄りの打球にチャージが少し甘くなり、クーリングタイム後、米沢貴光監督から「怖がらず前に詰めていいぞ」と言われた。「9回はほぼ正面。思い切ってチャージした」。公式戦で本塁返球で刺したのは初めてで「甲子園ってそういうところなのかな」と笑った。

 そう、8月21日は奇跡が起きる日。96年夏の決勝の「奇跡のバックホーム」も8・21だった。そして同じ中堅手で憧れの大先輩・オコエ(巨人)を擁した15年の4強を超え同校初の決勝進出。甲子園100周年に、歴史をよみがえらせ、新たな歴史をつくる飛田のバックホームだった。(秋村 誠人)

 ▼神村学園・小田大介監督(9回の本塁憤死について)0・1秒でも速くスタートを切って、70センチでも速くホームへ還れるように、いろいろ積み重ねていきたい。

 ▼矢野勝嗣氏(松山商OB、現愛媛朝日テレビ) 映像を拝見しましたが、僕とは全然違う強肩で素晴らしいバックホームでした。忘れもしない8月21日にどこか運命的なものを感じます。仕事で今年の甲子園大会の開会式に訪れた際、当時のプレーがスコアボードに映し出されました。自分でありながら、自分でないような気持ちになりました。本来ならアウトになる距離ではなかったですから。私の人生の土台は高校野球。あのバックホームがあったから、こういう仕事に携われていますし、試合が決まるプレーを見ると、そのたびに初心に返れます。

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