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【内田雅也の追球】就任会見で藤川監督が語った「人生論」 選手、チーム、ファンを幸せに導く戦いが始まる

2024年10月16日 08:00

野球

【内田雅也の追球】就任会見で藤川監督が語った「人生論」 選手、チーム、ファンを幸せに導く戦いが始まる
就任会見で質問に答える阪神・藤川球児新監督 Photo By スポニチ
 阪神監督就任会見で藤川球児は大いに語った。内容は、多分に自分自身がどう生きるかという人生論に聞こえた。
 と言うのも、これまで節目節目で藤川から聞いてきた話が人生論めいていたからである。

 大リーグ、独立リーグを経て阪神に復帰した2015年11月の会見で「すべて導かれるもの」と話したのを覚えている。

 三原脩の「他動的人生」を思った。著書『風雲の軌跡』にある。人生の岐路で右か左か思いあぐねた末、自身の望む方向と違っても<私には後悔はない>とあった。<ほかから頼まれて飛びこんだ世界だったとしても、そのなかに入れば自分の人生である。力の限り、やる。それしかない>。

 現役引退を発表した2020年11月、手紙を送ると、返事があり「僕なりの最高の生き方」をするとの決意が書かれていた。「頑張っている人、苦しんでいる人、幸せになりたい人。そんな人たちの心に寄り添えるようにをモットーに、思いのまま生きていきます」

 そして、2021年1月には自身のYouTubeチャンネル『藤川球児の真向勝負』で「ぶっちゃけ、監督になりたい?」という質問に「なりたくなくてもなると思います。今そんな気がしてます」と答えている。

 あれから3年。本当に監督となった。だから、この日の会見でも「運命なのかもしれない」と言ったのだ。球団からの就任要請を受諾した理由も「自然」だと言った。これまでの人生を振り返り「自分の下す決断に少しずつ自信が持てるようになって、どんな道を選んでも自分なら正解にできるんじゃないか、というのが自信にもつながっています」と話した。

 これも三原の<後悔はない>と重なる。西鉄(現西武)黄金期を築き、弱小の大洋(現DeNA)を優勝に導いた名将など意識にもないだろう。ただ、人生に野球を重ねる生き方は似ている。

 ならば、監督として今後の人生をどう生きるか。これまでの選手や個人ではなく、監督ならば、選手を、チームを、ファンを幸せに導きたい。

 阪神の監督はつらい。スターだった金本知憲も矢野燿大も、村山実も吉田義男も、監督となれば批判にさらされた。覚悟のうえだろう。吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』には<つらいこと、苦しいことに出会うおかげで、本来人間がどういうものであるかを知る>とあった。 =敬称略=
 (編集委員)

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