悪いヤツが1人も出てこない心洗われる1本! 黒木華主演「アイミタガイ」

2024年10月29日 16:00

芸能

悪いヤツが1人も出てこない心洗われる1本! 黒木華主演「アイミタガイ」
主人公の梓を演じた黒木華(C)2024「アイミタガイ」製作委員会 Photo By 提供写真
 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】「今どき珍しい映画」と、試写会で話題を呼んでいたのが黒木華(34)主演の「アイミタガイ」(監督草野翔吾)だ。何が珍しいって、悪人が1人も出てこない。すぐに暴力に訴える人間もいなければ、腹に一物ある怪しげなヤツも出てこない。それが逆に新鮮で、かくいう筆者も気持ち良く試写室を後にした。
 原作は2013年に幻冬舎の自費出版ブランドから刊行された中條ていさんの連作短編小説。宇田川寧プロデューサーが映画化に向けて動き出し、「台風家族」(2019年)などで知られる市井昌秀監督(48)に脚本の骨組み作りを依頼。それを読んで手を挙げたのが「半落ち」「ツレがうつになりまして。」など数多くの話題作を世に送ってきた佐々部清監督だったが、そんな佐々部監督が20年に心疾患のため62歳の若さで急逝。関係者によれば、コロナ禍も拍車をかけて製作が停滞する時期もあったが、草野監督が遺志を受け継いで完成にこぎつけた。作品が世に出るまでにはそんなドラマがあった。

 ウエディングプランナーとして働く梓(黒木)と事故で亡くなってしまった親友との関係を軸に、一期一会の連鎖が一つの輪に紡がれていく感動作。黒木はじめ、親友のカメラマン叶海を演じた藤間爽子(30)、中学生時代の梓と叶海に扮した近藤華(17)と白鳥玉季(14)、梓の恋人を演じた中村蒼(33)、さらに安藤玉恵(48)、西田尚美(54)、田口トモロヲ(66)、升毅(68)ら脇を固める俳優陣も素晴らしい。草笛光子(91)、風吹ジュン(72)の助演も作品に厚みを与えている。

 9月30日に東京・内幸町のイイノホールで行われた完成披露試写会には黒木はじめ、中村、藤間、伊藤、白鳥が駆けつけて舞台あいさつを行った。

 21年に三代目藤間紫を襲名し、舞踊の世界でも第一線で活躍する藤間は、カメラマン役を演じるに当たり「正義感が強い女性です。“写ルンです”を買って撮ってみました。ふだん気に留めなかったものや思いやる気持ちに気付けたりしました」と“発見”があったことを明かした。

 草野監督は「黒木さんと祖母役の風吹さんは、カメラが回っていないところでも楽しそうで、それが映像に残っています」とアピール。続けて草笛との仕事に「僕みたいな者にも敬意を払って接してくれました。身の引き締まる思いでした」と神妙に語った。

 黒木は主題歌「夜明けのマイウェイ」も歌っている。1979年10月13日から80年3月29日まで日本テレビ系で放送された連続ドラマ「ちょっとマイウェイ」の主題歌で、荒木一郎さんが作詞・作曲。これをカバーしたもので、耳に心地良く響いてくる。黒木は「“歌います”と言った記憶はありません。プロデューサーに外堀を埋められていった感じです。いろんな機械に頼りました」と笑わせながら、「曲自体難しかったですが、梓の気持ちとリンクしている感じでした」と歌った感想を述べた。

 原作者の中條さんも姿を見せ、「映画化が決まり、主演が黒木華さんと聞いて感動しました。(原作にはない)中学時代の梓と叶海にも出会えて幸せでした」と映画化を喜んだ。ちなみに中條さんの新作「太陽の小箱」も10月10日に幻冬舎から出版され、評判を呼んでいる。

 タイトルの「アイミタガイ(相身互い)」は、誰かを想ってしたことは、巡り巡って見知らぬ誰かをも救い、やがて自分のもとに返ってくる」という意味。黒木は「凄く良い言葉だと思う。知らないところで人はつながっている。皆さんに寄り添うような映画になっています」と静かにアピールした。11月1日公開。

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