【世界水泳】荒田恭兵 高さ27メートルから歴史的ダイブ「今でも怖い。生きてることを実感する」

2023年07月25日 16:26

水泳

【世界水泳】荒田恭兵 高さ27メートルから歴史的ダイブ「今でも怖い。生きてることを実感する」
<世界水泳  ハイダイビング>ペイペイドームを背に演技をする荒田(撮影・平嶋 理子) Photo By スポニチ
 【水泳世界選手権第12日 ( 2023年7月25日    福岡 )】 ハイダイビング男子が行われ、日本人として初めてこの種目に出場した荒田恭兵(27)は2本目を終えて102・00点の22位だった。27日に3、4本目を行い、合計点で順位が決まる。
 23人中12番目に登場。はるか下にいる観客からの声援にお辞儀で応え「今まで感じたことのない声援が勇気になった」と演技に臨んだ。1本目は入水が乱れて33・60点に低迷。2本目の9人を終えた時点で激しい雷雨に見舞われ、約45分中断したが、集中力を切らさなかった。再開後の5416B(後ろ踏切前宙返り3回半回転捻り)は入水をまとめ、68・40点をマーク。「今までの中で一番の完成度だった」と会心のダイブだった。

 7階建てのビルに相当する高さ27メートルの台からのダイブ。体に回転やひねりを加えた技の美しさを競う。入水の衝撃は「交通事故」と例えられるほど大きく、手からではなく足から水に入る。水深6メートルのプールにはダイバー4人が待ち構え、選手の入水と同時に潜って異変がないかを確認。選手は演技後に「OK」などのサインを出してケガがなかったことを示す必要がある。

 ハワイの王たちが戦士たちに勇気を示すため、自ら崖に飛び込んだのが起源とされる。非五輪種目だが、世界選手権では13年バルセロナ大会から実施され、今大会が6大会目。5月のW杯で24位以内に入れば出場権を獲得できたが、荒田は28位に終わった。夢への挑戦を断たれたかに見えたが、自国開催が追い風となり、世界水連から推薦枠を得て代表権を獲得。“水の怪物”と称されたマイケル・フェルプスさん(米国)も観戦する前で、日本のパイオニアとして歴史的なダイブを演じた。

 小学4年で飛び込みを始め、日体大4年時の17年に日本選手権のシンクロ高飛び込みで優勝。五輪を目指す選択肢もあったが「誰もやったことがない道を行きたい」と、動画を見て興味を持っていたハイダイビングに転向した。体への負担は大きく練習では1日3本飛ぶのが限界。入水角度がずれて気を失ったこともある。踏切から入水までは約3秒。下降速度は時速約90キロに達し「今でもめちゃくちゃ怖い。その恐怖を乗り越えて成功した瞬間は生きてることを実感する」と競技の魅力を語った。

 十分な高さと水深が必要な練習場所は限られ“ホーム崖”は福井県の東尋坊。自殺願望者が訪れる場所として知られるが、高さは15~20メートルほどで本番と比べると10メートル近く低い。趣味は崖探し。「練習環境の発掘は課題」とグーグルマップで飛べそうな場所を探し、実際に訪れて水深などをチェックする。「出場するチャンスをいただいたからにはハイダイビングを皆さんに知ってもらうのが使命だと思っている」。自称「クレイジー」なハイダイバーは競技の発展を願って残り2本に挑む。

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