今、何秒!?勝手にピッチクロック スポニチ記者が7・12巨人VS広島全投手の全投球間隔ガチ計測

2023年07月15日 05:29

野球

今、何秒!?勝手にピッチクロック スポニチ記者が7・12巨人VS広島全投手の全投球間隔ガチ計測
試合中の実際の計測 Photo By スポニチ
 勝手にやってみました!今年からメジャーで導入され、日本でも10日のオーナー会議で本格的に検討していくことが確認された「ピッチクロック」。投球間に時間制限を設けて試合時間短縮に成功している新ルールが、プロ野球をどう変えるのか。プロ野球キャップの神田佑記者(40)が12日の巨人―広島戦(東京ドーム)で全投手の全投球間隔をタイマーで計測し、課題などを検証した。
 ≪検証(1)全体編 全270球中“オーバー”68球≫投手が捕手の球を受けてから投球動作に入るまでに、走者なしで15秒以上、ありで20秒以上かかったのは何球か?タイマーで全投球計測した。

 同戦で登板した6投手の球数は計270球で、そのうち時間をオーバーしたのは68球。68球中、7割近い46球が走者がいた場面だった。この日、選手はもちろん「時間制限」を意識しておらず、あくまでこちらの勝手な計測。特に得点圏に走者が進むと投球間隔が長くなる傾向があった。

 今季初完封した広島・森下の109球はテンポが抜群に良かったが、28球が時間を超えた。28球の内訳は「走者ありで20球」と71%だ。翌日、本人に聞くと「ランナーがいる時が一番、何を投げるかを考える。“間”も対戦していく中で大事なので」と語っていた。

 もしピッチクロックが導入された場合、走者がいない場面よりも、走者がいる場面での試合展開が今より顕著にスピードが上がるだろう。森下は「テンポが同じになってしまう可能性もある。そこが一番難しいところ」とも感じていた。

 ≪検証(2)投手編 最長は巨人・高梨の「39秒」≫巨人・高梨の「39秒」が最も長かった。0―2の8回にピンチの場面でマウンドに上がり、1死二塁で迎えた秋山との対戦だった。3球目と4球目を投げるまでに39秒かけた。

 間と駆け引きで勝負する変則左腕だ。投球後に前方に跳ね、マウンドを飛び降りる。捕手の返球を受け、ゆっくりとプレートまで戻る。走者に視線も送り、投球までのタイミングは1球ごとに変える。だがこれは、走者がいる時の駆け引きだ。翌日は10回先頭から登板。走者なしの場面で3者凡退に抑えた18球は平均13秒だった。

 ピッチクロックが導入されたらピンチで登板する中継ぎ専門職は大変だろう。制限時間内でほぼ同一テンポの投球が強いられる。

 また、投手の鍵となるのが「サイン交換」だ。捕手に首を振れば制限時間を消費。二塁に走者がいる場合は読み取られないようにサインが複雑化することもある。メジャーではサイン交換用電子機器「ピッチコム」が22年から導入されている。

 ちなみにこの試合で、メジャーでボークに該当する1打席中3度のけん制はなかった。

 ≪検証(3)打者編 打者に負担?ルーティン省略≫投球間隔が長くなる一因に、打者が構えるまでに時間がかかることも挙げられる。打者は残り時間が8秒になるまでに打つ準備を整えなければ1ストライクが宣告される。これはかなりせわしない。

 4回無死一塁の森下VS中田翔で最後の3球は「26秒、28秒、32秒」。中田翔は構えるまでの時間を「18秒、22秒、22秒」と長くかけ、森下は相手の体勢が整うまで待っていた。打席を外してブロックサインを確認し、バットを構えるまでに足で土を払い、バットの軌道を確かめ、両肩を大きく上下させる。その前の3回にはブリンソンがバットを地面に誤って落とし時間を食う場面もあった。またファウルの後に打者は体勢を整えるために時間を多く使う。チームとしてはブロックサインの簡略化も必要になるだろう。

 エンゼルス・大谷は今季から打席内で右足のかかとで左足の爪先を触れる動きを省いている。配球を読む時間は減り、ルーティンの省略も必要…。今回、勝手に検証してみて、改めて「投手有利のルールか?」と感じた。

 ≪巨人・高梨は「時間を使って回復したい」≫左の変則左腕でピンチで登板することが多い巨人・高梨にとって“時間”は生命線。「リリーフの投手は長い人が多い」と語る。駆け引きやサイン交換だけでなく「僕はすぐに疲れるので時間を使って回復する」と説明。集中力を高めてエネルギーを一気に放出し、次の1球までの時間で回復も図っているのだ。新ルール導入については賛成でも反対でもないが「オーバーする人は多いのでは」と予想。「最初はストレスになると思うけど、そういうリズムになれば気にならないと思う」と前向きに語った。

 ≪MLBでは26分短縮≫大リーグ機構のロブ・マンフレッド・コミッショナーは11日にピッチクロック導入で1試合の平均時間が昨年から26分も短くなったと明かした。延長戦を含まない昨季の平均試合時間は3時間4分で今季は2時間38分。「喜ばしく受け止めている」としポストシーズン(PS)でも継続する意向を示した。一方で同日付のUSAトゥデー紙(電子版)はPSでの制限緩和を求める声が選手会に届いていると報道。選手会のクラーク専務理事によると15秒以内での投球が定められている走者がいない場面で時間延長を求める声が寄せられているという。

 ≪槙原寛己氏は導入大賛成「慣れておくのはプラス」≫私自身の投手目線からだけでなく、ピッチクロックはぜひ導入すべき。マストだと思う。WBCなど国際大会でも今後取り入れていく流れがあり、これに対応する必要がある。何より、NPBから将来大リーグ移籍を希望している選手にとっても、ピッチクロックに慣れておくのはプラスでしかない。

 大リーグでは投手、野手とも早い段階で適応し、大きな混乱はない。日本の選手も適応能力は非常に高いので慣れるのも早いだろう。ただ、日本ではサイン伝達機器「ピッチコム」の導入論議に至っていない。ピッチコムがなければバッテリー間で手によるサインの交換が必要になる。投手が1度首を振っただけで時間がかかり、ピッチクロック違反になる可能性もある。私も現役時代、捕手に加えて自分でもサインを出していたので、もしピッチクロックがあったら大変だったと思う。

 ピッチコムの機器は1つ数十万円と高価。今後、こちらも導入するかの議論にも注目したい。仮に来季からピッチクロックをスタートさせるにしても、最初は大リーグの規定より2~3秒長くしてもいいかもしれない。(スポニチ本紙評論家)

 ▽ピッチクロックの主なルール

(1)投手は捕手から球を受けてから、走者なしで15秒、ありでは20秒以内に投球動作に入らないと1ボールが宣告される。

(2)打者は残り時間が8秒になるまでに打つ準備を整えなければ1ストライクが宣告される。 

(3)1打席につき、けん制球は2度まで。3度目のけん制で走者をアウトにできない場合、ボークが宣告される。

(4)投手は打者と次の打者の間は30秒以内に投球しなければならない。

(5)打者は打席ごとに1度しかタイムアウトを要求できない。

おすすめテーマ

2023年07月15日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム