【虎番リポート】物議醸す「あと1球」コール 選手の本音は…一番重かったのは岩崎の言葉

2023年07月15日 07:00

野球

【虎番リポート】物議醸す「あと1球」コール 選手の本音は…一番重かったのは岩崎の言葉
甲子園球場で声援を送るファン Photo By スポニチ
 主に阪神の試合で、SNSを中心に物議を醸す「あと1人」「あと1球」コール。「対戦相手への礼節を欠く」「選手に重圧をかけている」などの指摘がある中、球場内で聞く選手らはどのように捉えているのか。現場の声を聞いた。
 7月5日の広島戦でプロ初完封を達成した大竹は9回2死のマウンド上で「ぼやいていた」という。「“あと1人”と言われると凄く疲れてくるので、“いやいや、ただの一打者”と自分に(言い聞かせた)。これで終わるわけではないという心持ちでいきたかった」。偽らざる本音に重圧を垣間見た。

 大竹の場合は敵地マツダスタジアム。本拠地・甲子園では“後押し”がもっと大きく強い。6月17日ソフトバンク戦では岩崎が「あと1球」から中村晃に逆転打を浴び、今季最長の5連敗が始まった。交流戦後のブレーク期間を挟んだため、同27日の中日戦での勝利まで10日もの時間を要した。SNS上では「“あと1球コール”から苦節755球」との投稿も話題。賛否を呼ぶコールの捉え方は、選手、そして、役割によっても違った。

 昨季両リーグ最多6完投の伊藤将は「めちゃめちゃ耳に入る」と笑いつつ、「応援してくれているということだけ意識して、あんまり聞かないように意識している」と受け止める。同4完投のエース・青柳は「先発で9回まで上がって、あと1人と言ってもらえるのは、うれしい部分は僕はありますね」と好意的。「9回までいったならではの光景。それでファンが楽しければ、いいんじゃないかなと思います」と、完投目前までたどりついたからこその特権とした。

 経験することが多い抑え投手はどうか。湯浅は「個人としては全く気にしていない。完全アウェーだったWBCのメキシコ戦の声援の方が凄かった」と断言。岩崎も「もうちょっとボール球を使いたいなと思う時もあるけど、基本的に(意識は)ない」と影響を否定した。

 興味深かったのは、前回リーグ優勝した05年当時の抑えだった久保田智之投手コーチの言葉だ。「めっちゃ(意識)するよ。昔はあと1球でジェット風船も準備してたから。同点に追いつかれたら(風船が)飛ぶので、そうならないようにせなあかんって思っていた」。JFKの一角として通算47セーブの現役時代の重圧を懐かしんだ上で「一つの応援として、ファンが後押しするという意味で全然いいと思う。ずっと(伝統として)あるので」と支持した。

 甲子園では阪神優勢で9回2死となった段階で場内ビジョンにも「あと1人」と映し出される。06~17年まで阪神に在籍したDeNA・大和は両軍の心情を知る立場。「敵でも味方でも、重圧を感じたことはありません。阪神の応援文化だと思っています」と語るように、いまや名物と言っていい光景だ。

 今回取材を続けた中で一番うなずかされたのは、岩崎がブルペン陣の思いを代弁した「そんなことより、もっとなくすべき特定の球団をやゆするコールがある」という重い言葉だった。(阪井 日向)

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