また聞きたい夏の“甲斐弾ばなし”

2023年08月15日 08:00

野球

また聞きたい夏の“甲斐弾ばなし”
7月26日、オリックス戦で本塁打を放つソフトバンク・甲斐 Photo By スポニチ
 お盆前の8月10日、夜。ペイペイドームでのナイター後、少し耳がゾクっとした。楽天の首脳陣数名が、帰宿バスに乗り込む球場内の通路で、何かにおびえつつ回顧していた。
 「なんか変だったよな…、嫌だな…、怖いよな…」

 怪談家でタレント稲川淳二の語り口に似ていた。担当としてソフトバンクの選手を待っていたのだが、よく聞くと決勝弾となった“真夏の甲斐弾(かいだん)”を振り返っていたのだった。

 0―0の3回先頭で楽天の先発・田中将が先制ソロを「9番・捕手」に浴びた。これで鷹打線は勢いづき、田中は5回1/3、2被弾含む7安打5失点で降板した。楽天が勝てば3位ホークスとの差を1・5にまで縮められるカードの最終戦だった。下位打線の被弾からの敗戦は、かなり痛恨だった。

 「つなげる意識を持って、とにかく集中しているだけですよ」。駐車場へと向かうにつれて暗さの増す通路で語り手・甲斐は淡々と話した。ただ甲斐はお盆終盤の14日時点で今季97試合で8本塁打。全143試合に出場した21年のキャリアハイの12本にあと4本と迫る。さらにここまで甲斐がアーチを描けばチームはほぼ負けない。確かに敵は怖いはずだ。

 5号目を放った6月10日の巨人戦で1度負けて、以降3連勝中。内訳はナイターで6本、デーゲームで2本。威力が増すのが“甲斐弾ナイト”だ。昨季まで育成同期でメッツに移籍した千賀の“お化けフォーク”を受け続けてきた男の一発は夜にドロンと出る。

 藤本ホークス1年目の昨季22年は130試合で1本塁打のみだった。稲川淳二と同じ口ヒゲがトレードマークの藤本監督は、期待を込めて甲斐の打撃には、少しいつも辛口で独特のスパイスが入る。

 打撃を説明する際には、公園にある遊具のシーソーに例える。

 「ぎっこん、ばったん、せーへん」と重低音ボイスで語るが、これはスイング時に両肩が動いて球を見る際の視界のズレが少なくなってきたことを意味する。本塁打を放った試合後は「まだ(好調か)分からんけど、振り上げてはない」とも言う。打ち上げるのではなく、球を叩くことで強い打球でスタンドインさせているケースが多くなってきたという。

 ここまで“甲斐弾”の好演は、7本塁打が本拠地ペイペイドームで、1本が敵地。それが7月26日、京セラドームでのオリックスとのナイターでの6号目だ。オリックス戦は、台風一過後のお盆休みラスト16日から同ドームで始まる。怖がりだが、実は海外の心霊ネタ動画を見るのが好き。当然、また夏の“甲斐弾ばなし”を聞きたいとも思っている。(記者コラム・井上 満夫)

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