高名な野球記者が「美しくない」と批判するジャイアンツの野球、果たして大谷に合うのか!?

2023年09月22日 12:42

野球

高名な野球記者が「美しくない」と批判するジャイアンツの野球、果たして大谷に合うのか!?
ベテランのローガン・ウェブ(AP) Photo By AP
 スポーツイラストレイテッド誌の高名な野球記者トム・ベデューチがサンフランシスコ・ジャイアンツの野球について「美しくなく、これが未来の野球の姿なら私は関わりたくない」と批判している。
 チームを率いるのはマネーボールのアスレチックス出身で、ドジャースのGMとして成功し、18年オフにジ軍の野球運営部門のトップに就いたファーハン・ザイディ編成本部長だ。聡明な人物として知られ、アナリティック(データ分析)で野球をさらに進化させていくと期待されていた。しかしながら21年に107勝55敗の好成績を残したものの、それ以外に勝ち越しシーズンはない。今季もここまで76勝76敗だ。

 ベデューチ記者が嫌うのは、マッチアップを重視し、徹底した分業制を採っていること。猫の目打線で、同じ打順を4度以上使っていない。3番打者に起用された選手は13人もいる。一番成績の良い打者はラモント・ウエード一塁手でOPS(出塁率+長打率)・801だが,スタメンは110試合(チームの試合数は152試合)だけ。それに続くタイロ・エストラダ二塁手も109試合である。

 投手陣もベテランのローガン・ウェブが207回、アレックス・カッブが151・1回を投げているが、他の投手は短いイニング、少ない球数で交代させられる。先発投手の1試合当たりの球数は平均72球でメジャーで一番少ない。先発投手が3回終了までに交代することも珍しくない。おかげで先発投手に勝ち星が付かない。ジ軍の141年の長い歴史の中で先発投手の勝ち星がわずかに27勝というのはワースト記録。これまでの最低は1984年の36勝だった。投手の勝ち星は、近年、投手の能力を評価するのに必ずしも合理的な指標ではないと言われている。しかしながら依然多くの野球ファンがシーズン20勝、通算200勝という言葉に魅かれ、そんな投手なら見てみたいと思う。そして先発投手が8、9回まで投げる試合はドラマチックでもある。そういった野球ならではの美しい付加価値を軽視している。

 もちろんそれはメジャー全体のトレンドでもあり、レイズは今季、先発投手に100球以上投げさせたのは7度だけだし、ドジャースも13度だ。規定投球回数に達する先発投手は11年には93人にいたが、今季は46人に過ぎない。だがそんな中でもジ軍はザイディ編成本部長の考えで、その方針を徹底している。ロールプレーヤーばかりでスターがいない。そしてコーチは16人もいる。今季からMLBは新ルールが採用され、多くのチームが積極的に盗塁を試みるようになった。ただマネーボールの世界では盗塁の価値は軽視されてきた。それもあってかジ軍のチーム盗塁数は53個で30球団中最少。トップのレッズの175個と大差だ。ちなみにジ軍は野手の平均のスプリントスピードも遅く、30球団で下から数えて3番目である。

 ベデューチ記者はこれでは娯楽性に欠けチケットは売れないと嘆く。今季メジャー全体で観客動員数が増えたが、ジ軍は減った5球団のうちの一つだ。もっともベデューチ記者が批判していても、肯定的な見方をすることもできる。マッチアップを重視するのは賢明な戦術だし、26人で戦う野球を徹底している。どこよりも代打を起用し、延長戦では11勝3敗だ。スターがいないのは確かだが、昨オフはアーロン・ジャッジ、カルロス・コレアを獲得しようとした。彼らが入団していれば、スターとして毎日試合に出しているだろう。

私たちが気になるのは、では大谷翔平の有力な移籍先のひとつと噂されるジ軍が果たして大谷の野球にフィットするのかどうかだ。ザイディ編成本部長は2年連続、ドラフトで二刀流選手を一巡指名にしていて、大谷という特別な才能のみならず、二刀流を生かしての戦い方にも強い関心を示している。果たして大谷とジ軍のカップリングの相性はどうなのか。10年から14年に3度世界一になったジ軍だが、以後は一度もプレーオフシリーズに勝っていない。

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