【内田雅也の追球】12年前のオリックスとは違う…阪神も村上も「本当の力」で重圧を払った

2023年10月19日 08:00

野球

【内田雅也の追球】12年前のオリックスとは違う…阪神も村上も「本当の力」で重圧を払った
<神・広>6回、秋山を投ゴロに抑えた村上(手前)に拍手する岡田監督(右)(撮影・岸 良祐) Photo By スポニチ
 【セCSファイナルステージ第1戦   阪神4―1広島 ( 2023年10月18日    甲子園 )】 阪神監督・岡田彰布が数日前、大一番での重圧について語ったことがあった。今回のクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージを意識しての話だろう。
 オリックス監督時代のエース・金子千尋についてだった。2011年のレギュラーシーズン最終戦、この日と同じ10月18日のソフトバンク戦(京セラドーム)だった。

 勝てば3位でCS進出決定となる一戦。金子は6回途中4失点降板、敗戦投手となった。試合後は「1年で一番大事な試合に……」と人目もはばからずに泣いた。

 抜群の制球力を誇った金子が5回2/3で6四球を与えていた。岡田は「あの金子が初回、1死走者なしから四球を出すんやで。考えられん」と話した。「つまり、そういうことよ」と重圧と緊張の典型例にあげていた。

 ならば、この夜の阪神先発・村上頌樹も同じ重圧のなかにあったはずである。1試合(9イニング)平均の与四球が当時の金子で2・2個、今季の村上は0・9個と制球面で上回る。その村上が初回、2死無走者から小園海斗に四球を与えたのだ。

 「オレもベンチで金子を思い出していたよ」と試合後、岡田は言った。「試合前“村上は緊張しています”と報告が入っていた。そりゃあ、当然やろう。慎重に慎重に……となるのもわかる」

 大事なCS初戦。実戦から遠ざかって久しい。重圧と緊張で5回まで3四球を与えた。8月11日のヤクルト戦と並ぶ今季最多の与四球だった。

 それでも1失点と踏ん張ったのは立派というほかない。1―1同点の5回裏1死一、三塁で打席が回り、自ら一塁線突破の決勝二塁打を放った。

 すでに87球を投げていたが、岡田は代打を考えなかった。「6回100球とみていた。打撃もいい」と「打て」を出し、決勝打を導き出した。

 岡田は今季を総括して「若手の成長のスピードがすごかった。驚きながら、頼もしくみていた」と話す。開幕当初は先発陣にも入っていなかった村上はそんな成長株の筆頭だろう。四球を出そうが、球数が増えようが、岡田の信頼を得ていた。

 12年前、金子の不調で敗れ、CS進出を逃した際、岡田は「本当の力がなかった」と話した。いまの村上、そして猛虎たちは重圧にも負けない「本当の力」をつけようとしていた。 =敬称略=
(編集委員)

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