移転へのカウントダウン始まるも“レッツゴー・オークランド!”地元A’sファンの思い

2023年11月29日 08:00

野球

移転へのカウントダウン始まるも“レッツゴー・オークランド!”地元A’sファンの思い
オークランド・コロシアムの全景 Photo By スポニチ
 テキサス州アーリントンで16日(日本時間17日)まで開催された大リーグのオーナー会議では、オークランドに本拠地を置くアスレチックスのネバダ州ラスベガスへの移転問題が最大の焦点だった。世界一9度という名門球団ながら、近年は人気低迷、資金難で苦戦。オーナー間の投票の結果、移転が満場一致で決まった。
 今季の総観客動員数は約83万人で、全30チーム中ワースト(1位はドジャースの約383万人)。チーム総年俸もわずか約5100万ドル(約75億円)であり、魅力のないチームであることはアウェーの平均観客動員でも同ワースト3位に入っていることで証明されている。

 「私も幼少期はファンだったけど、プロアスリートとしてプレーするのに適切な環境がある。オークランド・コロシアムはそういう場所ではない」

 カリフォルニア出身の元大リーガー、CC・サバシア氏がそう述べる通り、本拠地の老朽化も激しい。オークランドに新球場建設の話も結局は進まなかった。近年はメジャースポーツの誘致に積極的なラスベガスに移った方が、よりフレッシュなチームになることは容易に想像できる。

 ただ、それらの背景は理解しても、通称「A’s」がオークランドを去ると聞き、特に40代のベースボールファンには寂しさを感じる者も少なくないのではないか。

 1980年代後半、トニー・ラルーサ監督に率いられ、ホセ・カンセコ、マーク・マグワイアの「バッシュ・ブラザーズ」が軸になったアスレチックスはたまらなく魅力的だった。他にもリッキー・ヘンダーソン、デーブ・スチュワート、デニス・エカーズリーといった役者を擁したチームは、88~90年に3年連続ワールドシリーズに進出。この時代のアスレチックスは松井秀喜氏の憧れのチームだったという話もある。

 筆者もまたオークランド・コロシアムで躍動する豪快なスター軍団に魅了された1人である。まだ衛星放送がなく、大リーグの試合をテレビ視聴するのも難しかった時代。「バッシュブラザーズ」の記事を読み漁り、数少ない映像を繰り返し見て、開放的なオークランドのフィールドに想いを馳せた記憶が残っている。

 そんな熱い想いをシェアするファンはまだ存在する。オーナー会議の舞台となったホテルには、アスレチックスをオークランドに残したいと希望するファンが抗議活動に訪れていた。ガブリエル・カレンさん(42)、ジャレッド・イシャムさん(41)、ジョージ・レオンさん(38)の3人。「STAY」と記された緑色のシャツをまとい、チラシを関係者に配る3人の願いは切実だった。

 「私たちもあなたと同じく80年代からアスレチックスを応援してきたファンです。地元で育った人間にとって、アスレチックスは単なるベースボールチームではありません。スタジアムは家族が集まる場。みんな“レッツゴーA’s!”ではなく“レッツゴー・オークランド!”とチャントします。これほど地域と結びついているチームはアスレチックス以外になかなかないでしょうね。移転が可決しても、実際にチームが移るまでにはまだまだ壁があります。来季も戦いを継続するつもりですよ」

 ラスベガスには2028年に新球場がオープンする予定とのことで、オークランドのファンの現実は厳しいのだろう。大リーグは冷酷なビジネスの舞台でもある。

 それでも、球団身売り話の中で、選手たちが奮起した映画「メジャーリーグ」のインディアンス(現・ガーディアンズ)のような奇跡を微かに期待せずにはいられない。移転へのカウントダウンが始まる中、緑色のユニホームがもう一度だけでも躍動する姿が見たいと願っているのは筆者だけではないのだろう。(記者コラム・杉浦 大介通信員)

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